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第八章

突発的な危機はあっけなく終息し、ギルドで数日働いたころ──

この異世界に来てから 初めての“まとまった報酬” を受け取る日が来た。

王都から届いた「正体不明の合成獣討伐」と「洪水被害の鎮静化」に対する褒賞。

それをギルド長のおじさんと教会の神父さんが保証人となり、仕事中の俺へと手渡してくれたのだ。

……とはいえ、

あの合成獣を倒したのはベルナと妹のアトゥムスであり、

災害を鎮めたのも完全に二人のおかげ。

だから俺は、以前ベルナが吹っ飛ばした城門の修繕費だけを抜き取り、ギルド長に渡し、

残りは丸ごと保管してベルナの仕事が終わったら全部渡そうと決めていた。

この日はちょうど、国境のこの町にいる冒険者たちの姿も久しぶりに見かけた。

数日前まで、町の冒険者も兵士もほとんどが前線に緊急招集されていたらしい。

だから俺が最初に来たとき、夜の街なのにまるでゴーストタウンのようだったわけだ。

そして城門を守っていた兵士があまりにガラが悪かった理由も、ギルド長から聞いて納得した。

──あれは王都から他都市へ「臨時派遣」された傭兵だ、と。

「この金、本来ならあいつら頑固者に請求したかったんだがなぁ。悪いな小僧。いや──娘婿!」

ギルド長は俺が強引に修繕費を押しつけると、

すぐに冒険者と兵士の一部を連れて城門の修復作業に向かっていった。

……俺のせいで城門がいまだに無いのは、ほんと申し訳ない。

そのときだ。

ギルド長と仲が良さそうな中年冒険者が、にやにやしながら肩を組んできた。

「娘婿? 聞き違いじゃねぇよな?

俺らが前線に行ってるたった数日の間に、うちの可愛いヒラリィちゃんを嫁がせたって?

しかも相手は……どう見ても三十超えのオッサンじゃねぇか?」

……三十歳ニートで悪かったな。

老け顔で悪かったな。死ぬほど悪かったな。

「ウィリアムおじさんでも旦那さまの悪口は許さないよ。今後ぜったい受付してあげないんだから!」

ヒラリィが俺の腕に抱きつきながら割って入る。

「ヒラリィを嫁に出すのは確かに急だったがな。この小僧の人柄に問題はない。

俺が保証する。なんたって、今回の危機を収めた張本人だ」

いつも強面のギルド長が、珍しく笑ってみせた。

……威圧感はアメリカFBIそのものなんだが。

「ハドソン、まさかとは思うが……この小僧が合成獣を倒し、洪水と暴風雨まで止めたって?

聞き間違いじゃねぇのか? 合成獣はともかく、天候を変えるなんて神様でもなきゃ……」

男が俺に向き直り、真剣な顔で問いかけてくる。

「あんた、神の使いか?」

……もし“俺が倒したのか”と聞かれたら即答で否定する。

あれはベルナとアトゥムスの功績だ。

だが「神の使いか」と聞かれると──

俺はどう答えればいいのか分からなかった。

俺のスキルは創世神から授かったもの。

ヒラリィを嫁にすることになったのも、このスキルが原因。

ベルナも本物の女神。

でも彼女たちは“秘密にしろ”と言っていた。

そんな俺の戸惑いを解くように、隣のヒラリィが前に出た。

「旦那さまのスキルは、創世神さまが授けてくれたものです。

それに、私たちは秋の女神アトゥムスさまにもお会いしています」

彼女が振り向いて笑う。

俺は静かに頷いた。

……さすがヒラリィ。

余計なことは言わず、必要なことだけ正確に伝えてくれる。

俺は守りに入り過ぎていたのかもしれない。

時には、遠回しな理由よりも“真実だけをそのまま伝える”方が、

よほど誠実で伝わる──そんな当たり前のことを忘れていた。

夫婦になるとは、すなわち“責任を選ぶ”ことだ。

親は子を大人まで見守るが、

子が未来を共に歩むのは、選び抜いた伴侶だ。

親は“天から与えられた家族”。

伴侶は“自分が選ぶ家族”。

その差は大きい。

ヒラリィが俺の手をきゅっと握り返し、微笑んだだけで、

そのすべてが胸の奥へ静かに流れ込んでくる。

そんなときだ。

「……まぁ、ハドソンがそこまで言うならよ。

俺はてっきり、あんたが“娘バカ”だから、ヒラリィちゃんを嫁にやる相手なんざ生きたまま噛み砕くと思ってたぜ」

(……最初は本当にそのつもりだったらしい)

そして、その瞬間。

ギルドの扉が勢いよく開いた。

「てめぇ!! どんな手使ってヒラリィさんを誑し込んだんだよ!!」

金髪の少年冒険者が涙目で俺の胸ぐらを掴んだ。

「俺は小さいころからずっとヒラリィが好きだった!!

彼女と結婚するために冒険者になったんだ!!」

……ここまで真っ直ぐに言われると、さすがに胸が痛い。

だがヒラリィはすぐに少年の手を払い、俺の前に立った。

「誤解しないで。私はあなたをお兄ちゃんとしか思ったことはないよ。

渡辺直人さまが──私が選んだ旦那さま」

そう言って、俺に向けて微笑む。

少年はその場で固まり、俺とヒラリィを数度見比べた後、

そのまま泣き叫びながらギルドを飛び出していった。

周囲の冒険者たちは冷ややかな目で俺を見る。

……まぁ、気持ちは分かる。

突然現れたよく分からん男がギルド長の娘を奪い、

しかも“神の使い”疑惑まであるとか、信じろという方が無理だ。

「解散解散! ヒラリィを嫁にやるってのは、俺が認めたことだ!

誰が何を言おうと関係ねぇ!」

ギルド長が怒鳴ると、ようやく冒険者たちは散っていった。

ヒラリィがそっと俺の手を握り、

つま先立ちで俺の頬に軽くキスをしてくる。

「私は、いつでも旦那さまの味方だからね」

その声は幼いのに、

そこに宿る想いは誰よりも強くて、真っ直ぐだった。

……ただし、周囲の冒険者たちから向けられる妬みと殺気は、

確実に先ほどより十倍くらい増えていた。

その後、俺もヒラリィやギルド長のように、

冒険者たちの依頼受付や報告処理を手伝うようになった。

──が。

見た目がひ弱な三十路手前ニートの俺に、

そして“ヒラリィと結婚した男”という噂まで広まったせいで、

冒険者たちの反応はまあ、散々だった。

俺が窓口に座ると、ほとんどの冒険者は露骨に眉をひそめ、

中には俺を見た瞬間だけ鬼のような形相を浮かべ、

ヒラリィが出てくると満面の笑みになる奴までいる始末。

この“能面のような態度切り替え”の差は、正直けっこう刺さる。

……まぁ、仕方ない。

最初から壁を作られたら、そこに会話なんて生まれようもない。

ただ、その空気は意外にも長く続かなかった。

最初に俺の窓口へ来てくれたのは──

ついさっきギルドを泣きながら飛び出していった、ヒラリィの幼馴染だった。

見た目は十七、十八歳くらい。

俺より十歳以上若い子供みたいな年齢差だし、

俺が怒る資格なんてそもそも無い。

むしろ、こうして自分から来てくれたことが嬉しかった。

だから俺は、

ヒラリィから教わったとおりにギルドの書類一式を手際よく取り出し、

依頼書と証明書を照らし合わせ、内容を一つずつ確認、

最後に報酬額を計算して金貨を渡す。

見た目からは想像もつかないが、

この金髪少年はかなりの実力派らしい。

狼複数討伐、虎の討伐、そして国境支援任務の戦闘報酬。

わずか一週間で──金貨7枚と銀貨9枚。

もしこの調子で月を過ごせば、

月収30枚の金貨。

つまり、

ヒラリィの父であるギルド長に俺が支払った城門の修繕費──

あれを一ヶ月で稼げてしまう額だ。

……そう考えると、ベルナの“高位司祭の月給20枚”すら霞む。

さらに、物価を思い出してみる。

宿屋一泊7カッパー。

二人分の食事2カッパー。

30金貨=3000カッパーなら、

3000食分。

東京で外食一回1000円以上。

つまり、

この少年の月収=日本の月収300万円クラス。

年収なら4000万円級。

上位1%どころか、日本人の99%を置き去りにするレベル。

……恐ろしい才能だ。

俺が整理した紙と報酬を渡すと、

少年は急に気まずそうな顔で俯いた。

「……さっきは、あなたの胸ぐらを掴んで……本当にすみませんでした」

深々と頭を下げる。

「這邊才該我道歉……」

俺も自然と頭が下がった。

日本人的な礼儀が身に染みついているせいだろうか。

歳の差がこれだけある上、

実力も圧倒的に彼が上。

俺は恥ずかしくすらなってくる。

そこへ、少年はさらに深く腰を折った。

「あなたが……神使様だと伺って。

この町を救ってくださり……ありがとうございます!」

「いやいやいや違う違う!!」

俺は全力で手を振る。

「今回の天災を止めたのはアトゥムス女神様だよ。

ベルナが教会で連絡して、妹のアトゥムスが来てくれただけで……

俺は本当に、何もしていないんだ」

今回の功績は全部ベルナとアトゥムスのもの。

俺はただそこに居ただけ。

そう言いながら、ふと受付台の下に置いてある“金貨袋”へ視線を移した。

王都からの褒賞。

すでに修繕費の23枚は取り出してギルド長へ渡したけれど……

袋はほぼ重さが変わっていない。

金貨は十円玉より少し小さいくらいのサイズなのに、

重さは桁違い。

この袋には──おそらく五十枚以上入っている。

……いや、下手したら“家が一軒買えるレベル”だ。

だからこそ、俺は一度も数えていないし、数える気もない。

これは全部ベルナへ返すもの。

俺の金じゃない。

袋に添えられた羊皮紙には、内容が全部記されているけど──

それを見るのも、

彼女に渡してからでいい。

俺がそんなことを考えていたときだった。

ふと、自分の頬に触れながら──

脳裏にあの“小悪魔みたいな秋の女神”、アトゥムスの姿がよぎった。

突然目の前に現れ、

突然距離を詰めてきて、

突然とんでもなく密着してきて──

……いや、あれは反則だろ。

もうすぐ三十歳になる童貞ニートの俺が、

あんなことされたら顔が真っ赤になるのは当たり前だ。

むしろ気絶しなかっただけ褒めてほしい。

特に、あの……

目に焼き付いたミルク色の胸元とか、

頬に残っている気がする柔らかい感触とか……

思い出しただけで、胸を押さえてしまった。

(だめだ、破壊力が強すぎる……)

女神様なのに、いや女神様だからこそ、余計に危険だ。

そのときだった。

右腕に、ふわりと柔らかい感触。

「……ヒラリィ?」

どうやら仕事がひと段落したらしく、

ヒラリィが俺の腕にぴったりとくっついてきていた。

その姿を見た金髪の少年──

ついさっき泣きながら飛び出していった幼馴染が、

またもや苦笑いを浮かべている。

……ごめんヒラリィ。

本当はさっき、アトゥムスのことを考えちゃって……

俺にはもうヒラリィという最高の嫁がいるって分かってるのに。

ヒラリィの方を見ると、

彼女はいつもの──天真爛漫で優しくて可愛い笑顔を浮かべていた。

……ほんと、どこをとっても可愛い子だと思う。

すると、またしても向かい側から嗚咽が聞こえる。

(……ごめん、本当にごめん……)

無自覚に少年のメンタルへクリティカルヒットを与えたらしい。

でも彼は彼で、人生勝ち組だ。

十代にして年収四千万クラスの金貨を稼ぐスーパーエリート。

俺が羨む方だ。

狼や虎を一人で倒せるなんて、日本では絶対不可能だ。

熊に出会った瞬間、俺なんてベアスプレーが無ければ終了だ。

そんな俺の心を読んだのか、ヒラリィが囁く。

「うちのパパ、昔は一日で何頭も虎や狼を倒してたんだって」

「い、いちにち……?」

まさかのパパ=FBI顔のギルド長。

道理で初対面から威圧感が桁違いだったわけだ。

それにしても──

この世界、虎と狼の数が多すぎやしないか?

「この町はね、もともと“狼の巣”って呼ばれてたの。

パパたちが協力して最初に開拓した場所なんだよ」

狼の巣……

まさかのウルフェンシュタイン案件。

そりゃギルド長からBJブラスコヴィッチの匂いがしたわけだ。

改めて思った。

この世界、人間の戦闘力の規格が違う。

俺なんて一発殴られたら、それだけで天国直行だ。

(……本当に殴られなくてよかった……)

と、そんな恐怖に震えていると──

向かいの金髪少年の沈んだ顔が目に入った。

「自信持てよ。君は十分すごい。

きっと将来、君を好きになる良い子が現れるよ」

俺は受付越しに少年の肩を軽く叩く。

ヒラリィも隣でコクコク頷いていた。

その励ましに、少年はようやく少しだけ顔つきを戻した。

……本当にすごい世界だと思う。

この世界の人間、どう見ても地球より顔面偏差値が高い。

中世レベルの文明なのに、化粧すらしていないのに、

誰も彼もアイドル級。

そのなかにあって、ベルナ、ヒラリィ、アトゥムス──

この三人は俺が生きてきて見た中で別格の美しさだ。

日本のイラスト技術は世界トップクラスだとはいえ、

彼女たちの美しさは“現実に存在する写真レベル”で描いても追いつかない。

金髪少年はそんな俺たちの会話に首を傾げていた。

「……何か勘違いしてない?」

「え?いや……単独で狼の群れや虎を倒すなんて、十分すごいと思って」

これはお世辞じゃない。

事実として強い。

少年は少し気恥ずかしそうに告げた。

「それは……ヒラリィと幼馴染だから。

ハドソンおじさんに、数年みっちり戦い方を叩き込んでもらったんだ」

なるほど。

やっぱりギルド長だったか。

ヒラリィが誇らしげに語っていた“パパの武勇伝”と一致する。

「だから、あなたも冒険者になりたいなら──

お義父さんに修行してもらえばいいよ」

(いや、それで解決する問題じゃないと思う……)

俺は鑑定で見た自己ステータスを思い出す。

戦闘能力?

どれも最低値。

筋力?

子供より弱いと散々言われた。

どう考えても才能がない。

なのにヒラリィは、俺の手をぎゅっと握って言う。

「大丈夫。あなたはきっと強くなる。

パパより強くなると、私は信じてるよ」

その言葉は、俺の胸にまっすぐ届いた。

そうだ。

何事もやってみなければ成功しない。

さっき大きな決意をしたばかりなのに、

挑戦もせずに諦めるなんて、情けない。

俺は強く頷いた。

この世界のほとんどのことは──

まず“やってみよう”と思うことから始まる。

ライト兄弟が空を飛んだのも、

飛行機がなかった時代に「空を飛びたい」と願ったからだ。

なら、俺が「戦えるようになりたい」と思うことも、

「冒険者として彼女たちを守りたい」と思うことも、

きっと同じはずだ。

この中世のような世界で何も学ばず、

何も鍛えずに生きていくなんて……

最初から守る資格すらない。

ベルナもヒラリィも強い。

俺の助けなんて必要ないかもしれない。

──でも、それを理由に何もしないのは違う。

そう心の中で決意したちょうどそのときだった。

ギルドの扉が、ゆっくりと開いた。

中に入ってきたのは──

主教の正装に身を包んだベルナ。

修道服をもとに仕立てられた聖職者の衣装。

その白に近い淡金の髪。

裸足なのはいつもどおりだが、長めのスカートが足元までふわりと隠している。

そして何より──

彼女の美しさは、主教の冠が加わっただけで“神話”のような荘厳さを帯びていた。

ああ、そうだ。

ベルナはもともと女神なんだ。

俺と同じ人間じゃない。

雲の上の存在だ。

俺なんてただのニートで、社会に弾かれた落ちこぼれ。

“鶴と蛙”という比喩どころか、

最初から比べることすら間違っている。

こんな俺が……

どうして女神を求めていいと思える?

どうして横に並んで歩けると思った?

「その通りだな」

その瞬間、さっきの金髪少年の声が横から飛んできた。

彼もまた、入り口に立つベルナを見つめている。

「今まで見た女の子で一番綺麗……え、主教様?

もしかして……聖女殿下が誕生したのか?

まるで夢の中の女神じゃないか……!」

うっとりと呟く少年。

たしかに、

ベルナは天上の光のように美しく──

そして、まっすぐこちらへ歩いてくる。

「……俺に向かって歩いてる……? 夢か?」

彼は興奮で震えていた。

俺も息を呑む。

ベルナは、さっきまでの俺の思考をすべて感じ取ったかのように、

ひどく優しい笑顔を浮かべている。

(……読まれてるな。完全に。)

ナポレオンはこう言った。

“将軍を目指さない兵士は良い兵士ではない。”

なら──

“女神のような妻を望まない男は、男じゃない。”

でも現実には、自分の身の丈というものがある。

分をわきまえる必要もある。

俺は働いて早々に仕事を失い、

親の年金で食いつないだニート。

日本でも軽蔑されるような存在だ。

そんな俺が……

どうして女神に釣り合う?

そのとき、俺の手を強く握る者がいた。

「……直人くん」

隣を見ると、ヒラリィが必死に俺の手を握りしめていた。

そしてそのさらに向こう。

ベルナが金髪少年の横を静かに通り過ぎ、

まっすぐ俺の前へ。

そして──俺の左手を、そっと掴んだ。


「釣り合っていないのは……私たちのほうだよ。」

ベルナはそう言い、

胸元へと俺の手を導いた。

心臓の鼓動が、手のひら越しに伝わってくる。

「あなたは世界で一番優しくて、

誰よりも人を救える──

そういう力を持っている人。

希望を運ぶ人。

どんな世界でも、必ず良い方向へ変えてしまう人。」

そう言って微笑む彼女の瞳は、涙で潤んでいた。

そして──

ベルナはそっとつま先を伸ばし、

俺へと顔を寄せ──

唇を重ねた。

俺とベルナの、初めてのキス。

「な、な、な……っ!?!?!?」

「うわあああああああああ!!!」

横から少年の絶叫が響いた。

……そしてそのまま泣き叫びながら、ギルドを再び飛び出していった。

今日は本当につらい日だろう。合掌。

さらにギルド内の7〜8人が、

固まったまま石像のようにこちらを見ていた。

ハドソンとウィリアムも例外ではない。

「おいおい……お前の娘婿、本当に“神使”じゃねぇか……

主教さままで落としてるとは思わなかったぜ……」

「…………はぁ。(青筋)」

ハドソンのこめかみに浮かぶ血管が輝く。

……こわい。


キスのあと、

ベルナとヒラリィはそれぞれ俺の左右に寄り添い、

両腕を優しく包み込んでくれた。

「だからね、直人くん──

どんなことがあっても、

私たちはずっとあなたの味方だよ。

支えるし、守るし、そばにいるから。

もう傷つくようなこと、考えないで?」

ベルナは少し頬を赤らめながら続けた。

「べ、別に……あなたが恋しくて、急いで仕事を終わらせて来たわけじゃないからね!

それに……服だって……き、着替えるの忘れただけなんだから……!」

横でヒラリィが

「ふふっ、ベルナお姉ちゃん可愛い〜」

と声をあげて笑う。

三人が手を取り合った瞬間──

左手にはベルナの温もり、

右手にはヒラリィの温もり、

そして二人の心の温かさが、

胸の奥まで優しく染み込んでいった。

ああ──俺は、一人じゃないんだ。

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