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第十章

人工水路の運河と、町と町を結ぶ水路の建設は、思っていた以上に驚くほど順調に進んだ。

この世界の土地は想像以上に肥沃で、地形そのものがすでに「完成された構造」を持っている。護岸に使う石材も近くの山から割れた石をそのまま運べばよく、水路を掘る場所も、もともと農家が灌漑用に掘りかけていた跡が多かった。さらに、以前の洪水や豪雨で地形が削られ、水路の“雛形”が自然に出来上がっているところも多かった。

そして何より不可思議だったのは──

ここが国境沿いの辺境都市であるにもかかわらず、街の地下には最初から大規模な排水空間が用意されていたことだ。まるで街の建設当初からこの設計を見越していたかのように、雨水を貯めるだけで外部の河川へ繋げていない空白の空間が残されていた。

そこへ、俺が東京で見た地下河川の構造を少し参考に手を加えた結果──

数ヶ月という短期間で、当初想像していた水路システムが完璧な形で完成してしまった。

しかも、ハドソンさんの人脈のおかげで、冒険者、公会の面々、町の住人、近隣の駐屯部隊、そして周辺の農家の人々まで、自発的に手伝いに来てくれた。

俺が準備していた資金すら 象徴的な謝礼として少し使っただけ で済んでしまった。

そして、計画が完成した当日の朝。

多くの人たちが「試運転だ」と言って上流の森から木材を運び、舟を作り、実際に水路を通して町へと運び込んだ。

その木材の一部を使い──

街の公園の近くにあった、街の創建期に使われて以来ずっと放置されていた建物 が大規模に修繕され、さらに残った石材で壁を補強し、木材で床と屋根が張り替えられた。

二階建て、各階約100平方メートル。

そんな立派な家が、一瞬で蘇り──

「これは、あなたへの贈り物です」

と、街の人々が俺に差し出したのだ。

あまりにも順調すぎて、正直どう反応していいのかわからなかった。

だが、ベルナとヒラリィちゃんのふくらんだお腹を見て──

俺はもう、遠慮する理由を持てなかった。

最初は「この金額では到底足りない」と思っていた。

だが現実には 三分の一すら使わずに家まで手に入った。

更にこの一連の出来事で俺の名は冒険者公会にまで知れ渡り──

かつては微妙に敵視してきたヒラリィちゃんの幼馴染ですら「兄貴すげえ……!」と素直に感嘆していた。

……少なくとも、日本でニートをしていた頃よりは遥かにマシだ。

この国では、俺が動けば数ヶ月で結果が出る。

人を助けられ、町が良くなり、友誼が生まれる。

未来が見える。

それは、企業・財閥・官僚が全てを握り、若者の未来が最初から潰されていた日本では決して得られなかった感覚だ。

その日の仕事を終え、三人で新しい家へ戻った。

家の中には木材の香りがまだ残っている。

俺は町の人たちがくれた生活用品──石鹸、鏡、タオル、雑貨──を抱え、

ヒラリィちゃんは自分の荷物を持ち、

ベルナは買ってきた食材を手に台所へ向かった。

家具は最低限で、ベッドや大きな浴槽は街の職人たちの手作り。

さらにテーブルの上の花瓶と花は、以前ベルナと一緒に教会で勉強を教えたあの子どもたちが作ってくれたものだ。

粘土を捏ねて焼き上げた花瓶、皿、カップ、油灯の台……その全てに温かさが宿っている。

ベルナが料理をしている間、ヒラリィちゃんは布団を敷き、

テーブルには手作りのクロスとランチョンマットを並べ、

家の中は一気に「生活の匂い」で満たされた。

ベルナの料理は、刻んだ野菜にチーズを散らし、

鍋にはきのこ・牛乳・肉・香草・じゃがいもをじっくり煮込んだスープ。

さらに円形パンを切り、

焼いたソーセージと肉を木皿に盛り──

どこかヨーロッパ風で、食欲をそそる香りが広がった。

三人で食卓を囲み、笑い合いながら食事を終え、

片付けを済ませ、

新しく繋げた水路から汲んだ水を温めて湯を張った。

異世界に来て数ヶ月──

実は、俺が“風呂らしい風呂”に入るのは初めてだ。

旅館ではいつもベルナと洗面桶で体を拭くだけだったから、

正直、日本人としてはずっと限界だった。

だから二人を待つ余裕なんてなかった。

俺は真っ先に体を洗い、巨大な木製の丸い湯船へどぼんと沈んだ。

そこへ──

湯浴みを終え、タオルを巻いただけの二人が姿を見せた。

ベルナは自然体で、

ヒラリィちゃんは赤くなってベルナの背中に隠れ、

その青みがかった水色のウサ耳が前に向けてしゅんと垂れている。

教会で儀式を終えたあの日から、

ヒラリィちゃんはもうウサ耳を隠さない。

髪と同じ色のその耳は、俺が一番好きな場所だ。

彼女も言っていた──

「ウサ耳を触っていいのは、親か伴侶だけなんだよ」と。

俺はつい嬉しくなった。

「二人とも……一緒に入るのか?」

二人は俺に向かって微笑んだが、

ヒラリィちゃんだけは異様に恥ずかしがっていた。

……そうだ。

今日は“ヒラリィちゃんと本格的に同居を始める日”だった。

ベルナは当然のようにタオルを外し、

裸身を月光のようにあらわにした。

妊娠したお腹は神々しいほど美しく、

その丸みは七〜八ヶ月ほどだろうか。

灯りの近くで見ると余計に神聖で──

俺は思わず赤面し、鼻血が出そうになった。

ベルナの頬も赤かった。

夫婦になっても、まだ“新婚のような照れ”があるのだろう。

続いて、ヒラリィちゃんもタオルを落とし──

俺の目の前に初めてその全身を見せてくれた。

彼女のお腹も五〜六ヶ月ほどだろうか。

へそは少し出ていて、胸は小柄な体に似合わず形が良く、

丸みよりは涙型に近い。

彼女は顔を覆い、勢いよく湯船へ飛び込んだ。

落ちそうになっていたので、俺は慌てて腰を支えた。

その拍子に彼女のお腹に触れてしまい──

さらに真っ赤になった。

普通恥ずかしいと顔より先に体を隠すと思うのだが……

この子はいつも顔だけ真っ先に隠す。

それがもう、彼女らしい。

その時、ベルナが悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「今日からは──私、助手が増えたからね?」

金色の眉が弧を描き、

口元にはいたずらっぽい笑み。

女神なのに、こんな表情をするんだ……と、俺は驚いた。

ヒラリィちゃんは黙ったまま、

指の隙間からこちらを覗き──

何かを決めたように、俺の手をそっと掴み──

自分の一番恥ずかしい場所へ導いた。

──ぼたっ。

限界を超えた刺激に、

俺の鼻血が湯船へ落ちた。

今日は久しぶりの休みだ。

異世界に来てから数ヶ月、慌ただしい日々を送ってきた俺は、今こうしてベッドに寝転がり、人生の幸福を噛みしめていた。

異世界に来ても毎朝早く目を覚ます習慣は相変わらずだが──

俺は結局「三十歳魔法使い」になる前に、二十九の節目で童貞を卒業し、しかも二人の妻を娶り、近いうちに父親にもなる。

そして今、俺の左右で裸で眠っているのは……

そう、俺の妻たち──ベルナとヒラリィだ。

昨日の俺は少し羽目を外しすぎた。

妊娠中の二人に対して「優しくしよう」と思っていたはずなのに、力加減を間違えてしまい、二人を疲れさせてしまった。

思い返すだけでよだれが出そうになる。

もし目の前に鏡があったら、絶対に今の俺はいやらしい笑みを浮かべているに違いない。

何せ俺はもう立派な“おっさん”で、美少女二人を孕ませた“おっさん”なのだから。

二人が熟睡している隙に、俺はそっと手を伸ばし、

昨晩何度も触った場所へ、名残惜しむように指先を滑らせながら、ゆっくりと上体を起こした。

──ここで一杯のコーヒーがあったら最高だろうな。

そう思った瞬間だった。

ベッドの前に、湯気の立つカップを手にしたアトゥムスが現れた。

「……あっ」

間抜けな声が出たのは確実に俺だ。

慌てて布団を引き寄せ、上半身を隠す。

俺は結婚しているとはいえ、他人──ましてや女神に裸を見られるなんて死んでも嫌だ。

ていうか、なんでアトゥムスがここに!?

この家は昨夜引っ越してきたばかりだぞ!?

女神とはいえ、プライバシーという概念は存在しないのか!?

なぜ堂々と他人の寝室に侵入してくるんだこの神様は!?

隣でベルナも目を覚ました。

彼女はアトゥムスなど最初から存在しないかのように無視して、

大きく膨らんだお腹を支えながらゆっくりと起き上がり、

裸のままベッドを降り、ベッド脇の服を手に取って普通に着替え始めた。

「急ぎで伝えたいことがあるんでしょう?」

ベルナが静かに言う。「食堂で話しましょう」

そう言って、俺の現在の状況を一番理解していない(むしろ一番理解してほしい)アトゥムスを手を引いて連れ出していく。

二人が部屋を出てドアを閉じた瞬間、俺は長く息を吐いた。

……なんだよ、もう……心臓に悪すぎる……

横を見ると、ヒラリィちゃんが明らかに“寝たふり”をしていた。

顔もウサ耳も真っ赤だ。

俺はそっと彼女の額にキスをし、服を取って渡し、二人で慌てて着替えて部屋を出た。

***

食堂に入ると、アトゥムスは無言で椅子に座っていた。

隣のベルナは俺に「困ったわね」と言いたげな表情を向けてくる。

なんだ? 本当に何が起きてるんだ?

俺とヒラリィが席につくと、アトゥムスはさっきのコーヒーを俺の前へ押し出した。

だが、今の俺にコーヒーを味わう余裕はない。

彼女はまっすぐ俺を見つめた。

その瞳には──助けを求める色、悲しみ、そして罪悪感が混じっているように見えた。

なぜだ?

女神がこんな顔をする理由が、俺には想像できなかった。

だが、彼女の顔を改めて見た瞬間──

“どこかで会ったことがあるような気がする”

そんな微かな記憶が胸をよぎった。

そしてアトゥムスは静かに口を開いた。

「……合成獣を作り出し、この国へ侵攻し、天候や洪水までも操作していたのは──この世界で最も強大な国家、ジオン皇国です。

彼らはすでに第二次侵攻を開始しています。そして……神族に干渉できる力も持っている。

だから……私はもう、手を出せません」

言葉が途切れ途切れで、女神とは思えぬほど弱々しい。

「彼らは、さらに強力な怪物と大軍を送り込みました。

そして……本来なら別の世界へ転生するはずだった勇者まで操っています。

ごめんなさい……本来、神は人間の争いに関わってはいけないのに。

ごめんなさい……お姉様……あなたが離れてから任された役目を、私は守れなかった……」

声が震えている。泣きそうになっている。

俺はただ黙って聞き、震える手でコーヒーを一口飲んだ。

……うまい。甘くなくて、少しクリームの香りがある。

だが、その瞬間ベルナに冷たい視線で睨まれた。

すぐに、彼女はアトゥムスへ向き直り、優しい表情に戻る。

「勇者……?」

ベルナが問う。

アトゥムスは小さくうなずく。

「ええ……お姉様が転生を担当していた、高橋玲奈さんです」

──ああ。

思い出した。

転生の間で最後に見たあの少女だ。名家の制服を着ていて、身体が淡い紫色の光をまとっていた。

「あの紫の光……」

ベルナが俺の思考を読み取って呟く。

「転生で発する光の色は変わりません。高潔な魂は必ず黄金に輝きます。

紫であるということは──干渉され、逆転させられた……

……ごめんなさい。私の不注意です」

ベルナは肩を落とす。

俺は彼女の手を取った。

ベルナは微笑み返すが……アトゥムスはその様子を見て、さらに沈んだ顔をした。

……いやそんなことより──

侵攻!?

攻められているのは、この町なのか!?

俺は反射的に立ち上がった。

急いでハドソン大叔に知らせなければ──!

アトゥムスも立ち上がるが、その動きは不自然だった。

左右の肩の高さが明らかに違う。

「アトゥムス……肩、どうしたの?」

ベルナが心配そうに問う。

アトゥムスは隠すのをやめ、肩を見せた。

そこには──

紫色の、不吉な光を放つ傷。

まるでウイルスが肌を侵食しているように、白い肌に広がっていた。

「勇者が……剣に操られていて、そのまま斬られました」

「その剣には……神を殺す力があります」

……神を殺す?

ベルナでも城門を粉々にできる。

弱体化しても、巨大な合成獣を拳一つで吹き飛ばせる。

足元が汚れないほどの神性を纏っている。

そのベルナよりはるかに強い完全体のアトゥムスが傷を負った?

──つまり。

あの“勇者”は、

この町の冒険者や兵士が束になっても敵わない。

逃げるか、降伏するか。

選択肢はそれしかない──

「敵軍は、あとどのくらいで来ます?」

俺は必死に尋ねた。

「人間と合成獣で編成された軍勢です。勇者は強いですが、将軍の命令で大部隊と行動しています。

……一週間ほどで、この町に到達するでしょう」

一週間──短すぎる。

「勇者は、剣を手放せば正気に戻ります。

問題は……新型の合成獣。

ジオン皇国が人間を改造して生み出した怪物たち……苦しみ抜いた子供たちの身体です。

私には……彼らの痛みが聞こえる……」

アトゥムスは泣き崩れた。

ベルナは立ち上がり、アトゥムスの肩を抱き寄せた。

「……神が世界に干渉することは許されない。

苦しむ子を助けたいのに、手を出せない──

その気持ち、母になる私はよく分かるわ。……よく頑張ったわね、ムス」

アトゥムスはベルナの腹にそっと額を押し当てた。

「……お姉様……赤ちゃん……動いています……」

これは、俺がこの異世界に来てからというもの、間違いなく一番慌ただしい週末だった。

ハドソンのおじさんに「この街が自恩皇国の軍隊に侵攻される可能性がある」という情報を伝えた直後から、街中の兵士と冒険者の招集が始まり、同時に近隣の村々にも急ぎ荷物をまとめて街へ避難するよう通達を出した。


正直に言って、この規模の小さな辺境都市が、世界最強国家の侵攻を正面から受け止めるのは、どう考えても無謀だ。

そんな中、俺は運河の上流に広がる森林地帯の奥に、大きな沼地が存在していることを思い出した。そこには可燃性の高い沼気が溜まっている場所があり、防衛戦においては非常に有効な資源になる。


そこで俺は、つい最近開通したばかりの運河を利用し、兵士たちにその物資を街まで運搬させるよう指示を出した。

同時に、街の職人たちと協力して簡易的な投石機や大型弩弓の製作にも取り掛かる。

これらは勇者を止めることはできないが、合成獣や人間の兵士に対しては十分な抑止力になる。


そんな中、アトゥムスは一つの大きな決断を下した。

ベルナはすでに出産間近であり、「彼女と、そして俺の子どもを守る」という名目であれば、神族の規律を直接侵さずに守城に介入できる——そう判断したのだ。


彼女が運河の上流に立ち、軽く手を振った瞬間、水流は一気に何倍にも膨れ上がった。

激流となった水は河道を洗い、完成したばかりだった街前方の堀を、さらに倍以上の幅へと拡張していく。

その後も彼女は次々と木材を河道に流し込み、街へと送り届けていった。


本来なら三日から五日はかかるはずだった資材輸送が、わずか半日で完了した。

そのおかげで街の住民全員が、城壁の補強や防衛用機械の製作に集中できるようになった。


俺も職人たちに、現代で得た構造知識の一部を説明し、弩砲や投石機の安定性と耐久性を大きく向上させた。

数多くの防衛兵器がほぼ配置完了となり、試射によって射程を計算していたその時——


遠方から、一人の伝令官が遅れて街へ到着した。

彼は本来、この街の住民を防備の整った大都市へ退避させるために派遣されたらしい。


だが、短期間で強化された城壁と、並ぶ数々の防衛兵器、そして広く掘られた堀を目にした瞬間、彼は言葉を失った。


「数か月前に来た時は、ほとんど防御らしい防御もなかった街が……

 まるで城塞じゃないか。

 この防衛力、国内の多くの都市より上だぞ……」


その伝令官は、以前に一度会ったことのある人物だった。

この国の王子の近衛兵で、俺の資金をハドソンのおじさん経由で受け取ってくれた人物でもある。


だが、今回の光景は彼の理解を完全に超えていた。

アトゥムスは兵士や冒険者の前で、隠すことなく神の力を行使していたからだ。


彼女が砕石を結び、城壁を補強する姿を見た瞬間、伝令官は驚愕のあまり、その場に跪いた。


ベルナは死者を司る神であり、多くの者がその姿を直接見ることはない。

だがアトゥムスは違う。

彼女は時折この世界に姿を現し、各地の教会には神像が建てられ、この国の婚姻の多くも彼女の名のもとに結ばれている。


だからこそ、誰もが彼女を“本物の女神”だと理解した。


その女神が自ら街を守っている——

その事実によって、街の人々は完全に俺を「神の使い」として認識するようになった。


正直、俺自身でさえ「この街なら世界最強国家の侵攻も防げるかもしれない」と錯覚しそうになった。

だが、その直後に思い出したのは、アトゥムスの肩に残る、紫色に侵食された傷跡だった。


あの不吉な光を放つ力は、神を殺し得る力。

つまり、敵は神すら超える存在を手にしている。


過去の洪水や暴風雨——

あれらもすべて自恩皇国の仕業だ。

想像もつかない手段を、彼らはいくつも持っている。


中世的な防衛手段だけで、本当に持ちこたえられるのか?

仮に相手が現代兵器で武装した人間の軍隊だったとしても、この街の全戦力で防ぎ切れるとは言い切れない。


だからこそ俺は、「最悪の場合、必ず全員が逃げ切れる計画」を同時に用意する必要があった。


幸い、川の上流は自国領内だ。

敵は逆流して侵攻してくる必要がある。

だが、撤退する際にはこちらも同じ条件を背負う。


アトゥムスは「神力で流れを変えることはできる」と言ったが、それでも保険は必要だった。

そこで、陸路での撤退計画も急遽用意し、山道には仕掛けを施した。


全軍撤退時、山頂に残った冒険者が地滑りを起こし、追撃路を封鎖する。

危険な役目だが、ハドソンのおじさんと、その友人ウィリアム、そしてヒラリィの幼馴染である金髪の少年が名乗り出てくれた。


すべてが、文字通り一分一秒を争う準備の連続だった。


そして——

城壁の見張り塔から、ついに敵軍の姿が確認できる距離まで迫った、その瞬間。


ベルナの破水が始まった。


俺は、彼女のそばにいることができなかった。

街の医師とヒラリィだけが彼女に付き添い、俺は急いで鎧を身にまとい、城壁へと立った。


かつてはニートだった俺も、今は妻と子のために戦わなければならない。

たとえ、この世界の子どもより弱い力しか持っていなくても。


隣に立つアトゥムス。

その存在が、なぜか以前にも会ったことがあるような、妙な既視感を伴って俺の胸に残っていた。

次の章は第1巻のクライマックスから始まり、更新は新年以降まで延期される可能性があります。

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