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第9話 「交流」~空に残る線の向こうに~

描いた線が、また誰かの心を動かすと信じて。


「眼鏡」で見えないものを捉え、

「ペン」で見たい未来を描いていく。

打ち切り、謹慎、揺れる仲間たち。

それでも——線を描く理由は、まだここにある。


『描線眼鏡』シリーズ本編第2部始動

 前作同様に水・日曜の午後9時半に投稿の予定です。

 研修所に戻ったその夜、誰もが泥のように眠った。


 無言のまま、倒れ込むように布団へ潜り込む。夢の中ですら、まだペンを握り締めている感覚が残っていた。


 翌朝、山麓の湖の畔の空気は冷たく、しかしどこか柔らかかった。


 予告された6対6の総合演習が、何時行われるかは未だ判然としない。協会アプリからは各自のトレーニングメニューが通知され、まずは訓練に勤しまなければならないらしい。


 演習区画の外、舗装された坂道で、アツは重たいタイヤを引いていた。呼吸を整えるたびに肺が焼け、喉の奥で風が金属のような味を残す。


「……これが“現場”かよ……」


 呟きは白い息となって散った。

 坂の上では、ランとマナセが交互にダッシュを繰り返している。

 遠くでケンがカメラを構えながら、「もっと腰を落としてー!」と半ば冗談めかして叫ぶ。


 訓練は過酷だが、どこか不思議な“日常感”があった。



午後。

 研修所内のブリーフィングルームには、前日の戦闘データが映し出されていた。

 各戦の映像ログをもとに、キズナが簡易ブリーフィングを行う。


「まず、アツとサチハ。初戦で負けたけど、“距離を読む感覚”は悪くなかった。

 サチハ、見えてないことを気にする必要はないわ。感じ取れてた。線は、見えるだけがすべてじゃない」


「……ありがとう、キズナさん」


 サチハは俯いたまま、小さく笑った。

 その笑顔にはまだ不安が残っていたが、それ以上に“届いた”実感が宿っていた。


「マナセとランは、ほぼ理想的だったね。信頼の線って、ああいうことだと思う」


「えへへ、まぁ……感覚で描いただけだけど」


「感覚こそが、描く力よ」


 サキの淡い言葉に、マナセが少し照れ笑いを浮かべた。


 ケンが端末を操作して、画面に再生データを映す。


 映像には、アツとサチハが交錯する瞬間、マナセとランの軌道、そしてキズナとサキがアンナとぶつかった最後の衝突が順に流れる。


「……やっぱ、サイファー側は完成されてるな」


 ケンがぼそりと呟くと、ランが頷いた。


「うん。あのチーム、“作り物”みたいだった。整いすぎてて、怖いくらい」


「でも、それでも勝てるようになりたいね」

 

 マナセが真剣な目で言う。


 対戦の余韻は、傷のように静かに心の底へ沈みながら、次なる戦いの胎動と共鳴し始めていた。



 夜。一通りのメニューを終えて、自由時間も生まれた。


 アンナチームも研修所内で合宿中なはずだが、旧女子寮側に居るのだろうか?導線も違い、全く顔を合わせる事も無かった。


 演習を通して見ると彼女達は全員若い女性の様だ。協会内オーディションで、同期・同調性を高める為、年齢の近い女性で構成されると聞いてはいたが、彼女らの一矢乱れぬフォーメーションを見るとさもありなんと思えた。


 キズナ達は、新連載の作業にかかろうとしたが、既に制作していた下絵データは、タブレット内でまるごと凍結されていた。協会アプリの干渉で、何一つ開けない。ファイルに触れようとするだけで警告音声が流れる。


 警報や“魔”の予測で頼りにしていた協会アプリにこんな裏の顔があったとは……まるで、「お前たちの戦いなど無意味だ」と告げられているようだ。


 目を伏せたくなるような現実だった。

 キズナは拳を握った。

 それでも——諦めなかった。


「アナログで、描こう」


 彼女の声に、皆が頷いた。


 幸いにも、フクハラが残したキャリーケースに手書きプロットが見つかった。その“あらすじ”を囲み、チームは鉛筆を取り、紙の上に線を引いた。


 それは、魔を斬る線とは違う。

 だが確かに、世界を描き直すための線だった。



 協会の監視の目もアナログ作業までは行き渡らないらしい。忌まわしい警告音声にも、もう悩まされる事無く作業が進む。


 ケンがどこか懐かしげにぼやいた。


「昔はさ、みんなこれで印刷所に直納とかしてたんだぜ~」


 ふと、フクハラのバッグの奥を漁ると、年代物のガラケーが見つかった。新品同様だった。


 通話を試みたが、ノイズが走るばかり。音声パケットは干渉されている。だが、なぜかSMSの送信ボタンだけは、青く点灯していた。


「届くわけねーけど……ま、いいか」


 気まぐれに打ち込んだ短文メッセージを、ケンは空に放つように送信した。



 翌日も過酷なトレーニングと、夜にはアナログでの制作活動。


 仮に原稿が完成しても、いったいこの状況でどうやって入稿すれば良いのか?


 答えは出なかったが、今はとにかく原稿を完成させようと、皆が疲れた身体にムチ打って制作を進めた。


 夜も更けたころ、皆のスマホに協会アプリから一斉通知が来た。

 

 遂に模擬戦の通達が表示されたのだ。


《明日9/20 09:00 本演習・模擬戦開始》


 6対6。現実さながらの仮想市街戦。

 凍りついた空気の中で、誰もが息を呑んだ。



 9月20日、東富士演習場・市街地訓練区画。


 冷たい霧が市街地を模して作られた建物群に落ち、そこに更に仮想都市としての輪郭が投影され、朝の光に浮かび上がる。


 眼鏡のHMD越しに、“敵の位置”、“地形の弱点”、“仲間の生体情報”が刻一刻と投げられていく。精度は高いが、情報の洪水は戦闘の妨げにもなる。


 キズナ・マナセ・ラン・サキ・サチハ・アツ。6名編成のチームに、上迫ケンは情報支援として加わる。対するアンナチームは、戦闘班6名に加えて支援分析班4名という厚い布陣だった。


「ドローン展開、北東ビル群から旋回中。——うわ、干渉強いな。アンナチーム、帯域使いすぎだろ」


 ケンがデリカの後部でモニターに目を走らせる。映像をHMDに転送し、仲間たちへ視界を共有する。


「栗原さんのチームはワタシ達よりも情報量が多い。でも何処かで、情報量を処理しきれない瞬間があるはず」


 キズナが冷静に答えた。


 彼女の眼鏡に映るのは、全メンバーの行動線。これまでの訓練データを元にした連携補正値が、赤と青の線で構築されていた。


「サチハ、初動は支援回り。集中度が落ちたら無理せず退いて」


「は、はいっ!」


 開始の合図と同時に、マナセが斧を担いで前方ビル群へ突進。


 物陰から出てきたリンの発砲を、サキの妨害射撃がギリギリで逸らす。


「ラン、右上、6階窓!」


「——捉えた」


 風を読んで放たれた矢が唸りを上げて、窓に潜んでいたユアの肩に命中。HPゲージが赤に変わる。


「よっしゃ、初撃抜いたぞ!」


 アツが声を上げたその瞬間、背後から回り込んできたナナの一撃がアツのHMD視界を強制終了へ追い込む。戦術情報がブラックアウトした。


「こっちは2名確認。撤退ルートBへ回して!」


 サキがすかさず迂回指示を出す。ビル裏の通路でマナセが敵の注意を引きつけている間に、キズナが裏手から突進。


 斬撃の一閃がジュンの防壁をかすめ、わずかにラインが崩れる。


「今、いけるっ……!」


 HMDの中央に、アンナの行動予測ラインが緑で表示される。


 だが——次の瞬間、補助AIが赤く警告を発する。


《戦況変化検出:エナによる通信干渉/ノアの予測支援により敵連携強化》


 画面のラインが、みるみるうちに“読まれていく”。


 さっきまでの優勢は幻だったのか。敵の網が狭まり、次々と味方が“沈んで”いく。


「ケン、敵の南西の動きは?」


「カナが防壁張ってユアとリンを再配置してる! 射線、潰されるぞ!」


「……ここまで見通されてるのか……」


 キズナが歯噛みした。


 サチハの集中度が限界を迎え、意識情報がHMDからフェードアウトしていく。マナセも3度目の接近戦でようやく一撃を入れたものの、その直後にレイの支援射撃に倒れた。


 最後に残ったのは、キズナとラン。


 廃工場に潜んでいたランが、渾身の一撃を放つ。

 ——ヒット。


 アンナ本人のHPが、一瞬だけ大きく削られる。


 だが即座に回復補正が入り、次の瞬間には彼女が放った線によって、キズナの視界も断たれる。


 HMDの表示が「FRIENDLY:ALL UNIT OUT」に切り替わる。


 終了。


 模擬戦はアンナチームの勝利で幕を下ろした。

 しかし、それは完全な敗北ではなかった。


「やっぱり、通じる場面はあった」


 ランが呟く。キズナは頷きながら、ログを開く。ユアへの初撃、ジュンの動揺、アンナへの一矢。


 それらは小さな“戦果”だったが、無視できるものではなかった。だが、もっと、もっとやれるはずだ。



 9月21日、今日も東富士演習場だが、片隅の市街地訓練区画では無く、広大なフィールドが舞台だ。


 見渡す限りの荒野。低木と土砂の丘が広がり、遠くでは総合火力演習や戦車演習で使われる巨大なコンクリート壁が陽光を跳ね返していた。


 霧は晴れ、代わりに熱気が立ち込めていた。

 通信ノイズ混じりの声がHMD越しに届く。


 その言葉を聞きながら、キズナは静かに呼吸を整えた。今日は地形、距離、風向き——全てが未知数だ。


 合図と同時に、両軍が動いた。


 マナセの斧が地を打ち鳴らし、ランの弓が空を裂く。サキの狙撃線が走るが、遠距離用の線はすぐにノイズに変わった。


 対魔戦闘理論で知られている通り——距離が開くほど“想像力”は拡散し、干渉力は低下する。


 銃弾も、矢も、描線も、遠くへ飛べば飛ぶほど、現実との乖離が生じてしまうのだ。


「……やっぱり、減衰してる。線が届かない!」


 サチハの声が震えた。HMDの視界では、射撃エネルギーのゲージがどんどん落ちていく。


 ランが舌打ちして、矢を引き戻した。


「これじゃ、威嚇にもならないね。距離を詰めるしか——」


 そう言い終えるより早く、丘の向こうから白い光が走った。


 アンナの線だ。


 まるで現実を切り取るかのような一閃が地表をえぐり、砂煙と共に仮想空間の地形を再定義する。


 その軌跡をHMDが即座に解析し、「危険度:SR」「レンジ:480±30m」と表示した。


「全員、散開! 一度隠れろ!」


 キズナの指示に合わせて、メンバーは丘の陰へ飛び込む。


 しかし、アンナチームの連携は崩れない。ナナの指揮のもと、ジュンの細筆型ショットが牽制を張り、カナの鉄筆が接近ルートを潰していく。まるで視覚化された戦略そのもの。Spectraによる補助計算が彼女達の“線”を強化していた。


 それでも——今回は違った。


 アツが、そしてマナセが、決して下がらなかった。

 マナセは爆発のような叫びと共に斧を振るい、ジュンの遮蔽壁を粉砕。

 その破片の隙間を、アツの放った“虚線”が通過する。

 赤いスパーク。アンナチーム側のHPが初めて大きく削られた。


「よっしゃ……っ!」


 ケンの歓声がHMDを通して響く。

 キズナは息を吸い、冷静に次の手を取った。


 ——だが、その直後、彼女の線が突然ノイズに変わった。

 距離が、広すぎる。


「キズナさん、線が散ってる!」


 アンナが正面に現れる。思いの外近い。キズナの線に干渉しながら瞬時に距離を詰めたのだろう、アンナの手甲型ペンは近接戦で威力を発揮する。


 武器を持ち換えねばならないが、ストック武器でアンナに対抗出来るとはとても……


 意を決して彼女は息を止め、指先でペンを握り直す。


 HMDの視界に、九州で見た村田アケミの姿が一瞬よぎった。

 炎のような線。あのとき、即興で“想像”を形にすることを教えてくれた女戦士の笑み。


「村田先生……今、借ります」


 戦場で線を書き換えるのは時間的にも精神負担でも大きなロスだ、failが出たら目も当てられない。


 だが、キズナが瞬時に画面の中に描きだした白い線は 、ただペンの軌跡ではなく、意志そのものが空間に刻んだ“描線”として、現実の法則を一瞬だけ無視するような、光の刀身を彼女の手の中に残した。


 その刹那、二人の線が交差した。


 眩い光が一帯を覆い、HMDが白く飽和する。


 次の瞬間、アンナの武器が空中で崩れ落ち、演算処理が止まった。


《敵隊長:機能停止》


 無線に、ケンの息を呑む音が混じる。

 勝負は、決した。

 風が吹き抜ける。

 アンナは崩れた仮想壁に背を預け、静かに笑った。


「飛び込む瞬間まで、遠距離武器だったのに……その線の強さはストックでは描けない。あなた……理想を描くのが得意なのね。でも、現実も描けるみたい」


「現実の線こそ、描かないと意味がないから」


 HMDに「模擬戦終了」の表示が浮かぶ。

 チームの歓声が一斉に響く中、キズナはペンを握り締めたまま、空を仰いだ。


 空には、うっすらと残る白い“描線”——まるで、誰かが空そのものに線を引いたようだった。



 9月22日。

 本栖研修所の朝は、いつになく静かだった。


 演習続きの数日間で張りつめていた空気が、湖面のように緩やかに解けていく。久々の休息日——それでも誰も完全には休めず、どこかぎこちない笑いが交わされた。


 サチハは廊下の自販機前で、偶然上谷カノンと再会した。


「……久しぶり」


「ほんと、まさかここで会うとは思わなかった」


 二人は高校・専門学校以来の友人。仮想戦場では敵味方に分かれていたが、素顔で向き合えば、昔の空気がすぐに戻った。


「魔、見えなくてもいいじゃん。線を引けるなら、それで十分」


 カノンの言葉に、サチハは小さく笑った。

 眼鏡を通さずに見える“優しさ”が、確かにここにあった。



 一方その頃、ケンは研修所の裏手で古い携帯をいじっていた。


「3Gでも、電波一本くらい……お、圏内出た!」

 冗談半分で送った「届いてるか?」のSMS。


 その瞬間、管理ログに“未確認通信信号”が浮かび上がる。

 サキがそれを覗き込み、目を見開いた。


「これ、協会フィルタをすり抜けてる……!」


 偶然が偶然を呼び、入稿ラインへの“穴”が見つかる。


 二人の間に、無言の共犯めいた空気が流れた。

 サキは眼鏡を外し、囁く。


「フクハラさん、まだ見てるのかもね」


「だったら、次は俺たちの番だな」



 夕方、研修所の食堂。


 保存食ばかりだった数日間の後に、ようやく温かい料理が並んだ。地元の料理人が腕を振るったカレーと魚の煮付け。


 CYPhARサイファーとAstationチームが同じ卓を囲むのは、これが初めてだった。


 誰からともなく話が始まり、少しずつ笑いが増える。アンナのチームもほぼ同世代、しかもみな素は普通の女の子なのだ。


 ランがスプーンを回しながら言った。


「食べてる時間って、ほんっと大事だよね!」


 その一言で、テーブルの空気が和らぎ、アンナのチームからも共感の声が漏れる。


 アンナが席を移って来た事を機に両チームが入り交じっていく。


 カノンがさっきの続きと言わんばかりに、サチハの元に来て、高校時代に付き合った男の子の話を始め、アツがサチハの顔をチラ見しながらドギマギする。


 サキは一戦目の戦術介入が気になったのか、エナとノアの所に訪れる。Spectraにどう対抗していくか? サキの戦術家としてのプロ意識だろう。通信干渉と予測支援に付いての見識を伺う。両チームに自然と交流の輪が拡がっていった。


 キズナ・マナセ・ランが固まっていた所に、アンナが声を掛ける、

「みんな、お疲れさまー!」


「いや~アンナさん、さすがですね」


「アンナさん、最近食べ歩きしてる~?」


 と、マナセ・ランがそれぞれ声をかける。3人の関係ではアンナが先輩だが、同じ星野スタジオで切磋琢磨した同士で同い年。直接顔を合わせれば一瞬で距離は縮まった。


「キズニャ。戦闘中に武器を書き換えるのは村田先生の技だよね? 何処かで習ったの?」


 アンナが問いかける。


「習った訳では無いんですが……九州で実際に書き換えてらしたのを見て……」


「目コピであの技を使ったの! 昔、ワタシも見せてもらった事があったけど、とても自分に出来るとは思えなかった! さーすがキズニャ天才だ!」


「……そんな事は、ただ咄嗟に栗原さんに勝つには近接武器に書き換えるしかないと……」


 キズナは話題を変えようと、

「栗原さんサイ*エリ、『魔法少女サイファル*エリカ』では第二の魔法少女が出てきて第4夜から第5夜に物語が移行したんです……よね?……」


 言いかけて、言い澱む。

 予定の休載のアンナ達に比べ、自分達の新連載は……。


 ネットだけ賑わせておいて、もしも創刊号から連載を落としたら? 


 既に予告・広告やPOPの展開はされている。文潮社の編集部は大騒ぎ。まだ今の所はフクハラが押さえてくれているだろうが、そうなった時には漫画家としての信頼に致命的な傷が付くだろう。


 そんなキズナ達の事情を知らぬであろうアンナはこう答える、

「そうそう、第二の魔法少女“白のユディナ”を出したんだよね! いつもテンドー君っていう男の子がファンレターくれるんだけど、ユディナのモチーフになっているバタフライ・エフェクトに気付いたり、感心してるんだ!」


 キズナも自分宛に文潮社から転送されてきた、ファンレターを思い起こした、

「『眼鏡の女の子 ―Save your peace!―』また逢えると信じていました!! 連載再開本当に楽しみにしています!!! 『PN 沙羅@夢で会う』」


 信じて待ってくれているファンがいる……


「——この線が、明日もその先も続きますように」

 

 キズナはそう呟いた。


 その言葉に、アンナも誰も返さなかった。が、しばらくして、全員が同じように頷いた。


 夜、湖畔の空にはいくつもの星が浮かんでいた。


 その中の一つが、不自然に揺らめく。


 眼鏡越しに見たキズナの視界の端で、わずかに走る“歪み”。


 それは、次の戦いの予兆のように——

 静かに、空を染めて消えた。






東富士演習場での6対6模擬戦。市街地訓練区画と総火演で使われる広大なフィールドの二戦を通じて残ったものは、勝敗ではなく、描く意志。

抑圧下に置かれても意思があれば線は引ける事、そして通信の“隙間”から届くかすかな希望を描きました。

アンナたちとの交流と、空に残る描線。


次章では「夜間行軍」が行われ、それぞれの夜が訪れます。どうぞお楽しみください。

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