表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最初が肝心

作者: こうじ

「リアーナ・ロワード! 私は真実の愛に目覚めた! 君との婚約を破棄し隣にいる真実の相手であるメアリー・クリーズと婚約する!」


 貴族学院の卒業パーティーの場でいきなりそんな事を言われた私リアーナ・ロワードです。


「はぁ、そうですか。 わかりました、それじゃあ婚約は破棄という事でお父様にお話しますね」


 私はそう言ってさっさと会場を去ろうとした。


「ちょ、ちょっと待てっ! 余りにもあっさり過ぎやしないかっ!? 普通は理由とか聞くだろっ!?」


「全く興味がありませんので」


「私を愛しているのでは無いのかっ!?」


「いいえ、殿下を愛した事なんて1度もありませんし好きでも嫌いでもありません、あくまで婚約者としていただけですので」


 私がそう言うとクロード・アンドラー殿下はショックを受けた様な顔をした。


 いや、殿下がそんな顔をしますか? どちらかと言えば被害者は私の方なんですけど。


「リアーナ様! いくらなんでも冷たすぎませんかっ!? 殿下が可哀想です!!」


「可哀想と言われても……、そもそも殿下が拒否された訳ですからね」


「え?」


「殿下、お忘れですか? 初めてお会いした時殿下はこう言いました。『最初に言っておくがお前みたいな奴を婚約者とは認めない。愛する事はない、と思え』と」


「わ、私がそんな事を言ったのか……」


「はい、ちゃんと我が家の執事が記録しておりますし録音もされております」


 そう、殿下と婚約してから私は常に録音水晶を持ち歩き殿下の発言を全て録音、記録していたのだ。


 とにかく私に対する罵詈雑言が激しくて殿下の有責がどんどん溜まっていき私としてはいつこの音声を証拠にして婚約を解消しようか、とワクワクしていたのだ。


 まさか向こうから婚約破棄を言ってくるなんて、こちらとしては好都合だ。


 なんで録音していたのか、と言えばそもそもこの婚約、両親は乗り気ではなかった。


 殿下のパワハラセクハラ発言は貴族内では評判になっていたからだ。


 そんな中で我が家に王命として婚約の話が来たのだ。


 王命だから逆らう事は出来ない、だから殿下がどれだけ酷いのかを国王様に訴える為にお父様が持たせてくれたのが録音水晶だ。


「という訳で国王様に今までの殿下の発言を報告させていただきます」


「ま、待ってくれ! それだけはっ!?」


 殿下の声を無視して私は会場を後にした。


 その後、お父様は国王様に報告し話し合いを行った。


 結果、殿下有責で婚約は解消され慰謝料をもぎ取る事が出来た。


 そして、私は新たな婚約者としてレンゲル・ランセット侯爵令息を迎える事になった。


「殿下、結局王太子としての身分を剥奪されて辺境に1兵士として送り込まれたんだって?」


「えぇ、歪んだ性根を叩き直す為だそうです」


「しかし、初対面で失礼な発言をしてなんで愛されてる、て思うんだろ?」


「それがですね、どうも王妃様が『最初が肝心ですからね』て言われたそうなのよ、多分『丁寧に接しなさい』という意味で言われたんでしょうけど……」


「殿下はそう捉えなかったのか、本当に自己中心的な考えだな」


「そうね、だから私も振り切る事が出来たんだけど」


 そう言って私はニッコリと笑った。


 結局、殿下は王太子に復帰する事はなく辺境で生涯を終える事になり新たな王太子には弟であるクリス王子がなった。


 クリス王子は真面目な方なのできっと良い王太子になれるだろう。


 そういえばメアリーとかいう男爵令嬢はいつの間にかいなくなったけどどうしたのかしら? 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ