第49話 いっしょにね
昼下がりの保育室は、うっすらとした光に包まれていた。
外ではセミの声がにぎやかに鳴き、
その音が、まるで子守唄のように耳に響く。
「……ねむい」
ポルカが、ごろんとマットに寝転がった。
ミィナも、隣に静かに腰を下ろす。
「……ねむいね」
夏のあつさで、たっぷり遊んだ子どもたちは、
自然とみんな、同じ場所に集まっていた。
ルウは、うとうとしながら翼をたたみ、
イーリスは水の膜を薄く広げて、体をひんやり包んでいた。
シェムは、自分で作った小さな枕を抱え、
トトラはぐるぐる巻きになったタオルにくるまっている。
「いっしょにねたら、こわいゆめ、こないかな?」
ポルカがぼそりと言った。
ミィナは、そっとポルカの手をとった。
「いっしょにいれば、だいじょうぶだよ」
その言葉に、誰かが小さく笑った。
誰が最初だったかは、もう分からない。
でも、ひとり、またひとりと、
子どもたちはそっと、手をのばした。
手と手がつながって、
輪のようになって、
気がつけば、みんながひとつのかたまりになっていた。
ぽかぽかとしたぬくもり。
肌と肌のやわらかさ。
聞こえてくるのは、風の音と、
小さな寝息だけ。
ゆかりはそっと、その輪を見守った。
なにも声をかけずに、
ただ、そこに流れる時間を大切にするように。
*
目を閉じながら、ポルカは思った。
(ここにいると、だいじょうぶって、思える)
言葉にしなくても、
手がつながっているだけで、伝わる気がした。
ミィナも、小さな声でつぶやいた。
「おなじ時間、すごしてるんだね」
誰も聞いていないようで、
でもきっと、みんなの心に届いていた。
*
その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。
言葉にしなくても伝わるものがある。
そばにいる。
いっしょにいる。
その確かさが、子どもたちの心に、静かに根を張っていく。




