第48話 なつのあつさ
園に夏がもどってきた。
それは、空の色でも、風のにおいでもなく──
肌にまとわりつくような、重たい暑さが知らせてくれた。
「はあー……あっつい……」
トトラが園庭の木陰に倒れこみ、手足をぱたぱたさせる。
「ぼく、もうとけそう……」
ポルカも芝生にぺたりと座りこみ、へとへとの顔。
ミィナは、少し離れた場所で、汗をぬぐいながら空を見上げた。
「……なつって、こういうもの?」
ルウが、そよそよと風を送りながら言った。
「でも、なつしかできないことも、あるよ」
イーリスは、小さなバケツを持ってきて、
ぬるんとした水をすくい、静かにかけ声をかけた。
「──水あそび、しよう」
*
その日の午前は、急きょ“水あそびタイム”になった。
大きなたらいにためた水。
小さな水鉄砲。
葉っぱで作った舟。
シェムが舟を浮かべ、
トトラが全力で水を飛ばし、
ミィナはそっと、水面にさわる。
ポルカは、水たまりの上でくるりと回り、
ルウは風と水をまぜて、光のカーテンを作った。
「きもちいい!」
「なつ、ばんざい!」
子どもたちの声が、園庭いっぱいにひろがった。
ゆかりとサリアは、木陰で冷たい麦茶を用意して待っていた。
「無理せず、ほどほどにねー!」
ミュリエルも大きな帽子をかぶって見守る。
園庭には、光と水と笑い声が、きらきらと弾けていた。
*
午後。
水遊びでたっぷり汗をかいた子どもたちは、
涼しい室内で、ごろごろと横になっていた。
「……あつかったけど、たのしかった」
ポルカがぽつりとつぶやく。
「なつ、すごいな」
トトラが目をつむりながら言った。
ミィナは、ちいさな声で付け加えた。
「なつって、たいへんだけど、うれしいことも、ある」
イーリスも、うんとうなずいた。
「たのしいことって、あついなかにあるのかも」
*
その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。
夏の暑さは、体にも心にも負担をかける。
でも、その暑さのなかでしか出会えないよろこびがある。
子どもたちはいま、
すこしずつ“たくましく育つ”夏を歩いている。




