第47話 ひとつのてがみ
園に戻った最初の朝。
空は、夏の名残を引きずるような、明るい白さに染まっていた。
「みんな、ひさしぶりの朝だね」
ゆかりが微笑んで言うと、
子どもたちはなんだか、くすぐったそうな顔をした。
トトラは、背伸びをしながら叫んだ。
「やっぱここ、落ち着くなー!」
ポルカは、旗を見上げた。
「うん。“かえるばしょ”だ」
園庭の真ん中に、あの白い旗がふわりと揺れていた。
*
そんな中、サリアが小さな封筒を抱えてやってきた。
「きみたちに、お届けものですよ」
封筒には、不格好な文字でこう書かれていた。
──リュカより
子どもたちは、わっと集まり、
封を開ける手を、そっとそろえた。
中から出てきたのは、たった一枚の紙。
そこには、短いけれど、まっすぐな言葉が並んでいた。
ちゃんと、おれも行く。
すぐじゃないかもしれないけど、
「ただいま」って言えるように、がんばる。
だから、待っててくれ。
静かな時間が流れた。
「……まってるよ」
ポルカが、やさしくつぶやいた。
シェムも、ミィナも、ルウも、イーリスも、
誰も声を出さなかったけれど、
その顔には、それぞれ小さな、でも確かな笑顔が浮かんでいた。
*
その午後、子どもたちは“リュカへの返事”をつくった。
トトラは、大きな字で「ぜったいあそぼう!」と書いた。
ミィナは、赤と金の色で小さな火の絵を描いた。
シェムは、ちいさなパズルを作って添えた。
ルウは、さわるとひんやりする風の魔石をひとつ。
イーリスは、水の波紋を模した模様を刺しゅうした。
そしてポルカは、
「おかえりのうた」を短い詞にして、そっとそえた。
みんなの気持ちがぎゅっとつまった、
ひとつの手紙と贈りもの。
「これで、ちゃんと伝わるね」
「うん。つながってるから」
子どもたちは信じていた。
言葉も、想いも、
遠く離れていても、ちゃんと届くことを。
*
その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。
手紙は、“いま、ここにいない誰か”と心をつなぐ。
顔が見えなくても、
声が聞こえなくても、
気持ちは、道を探して、ちゃんと届く。




