表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第3章「なつ、そとのせかいへ」
45/51

第45話 なみだのわけ

 ユレ村での暮らしにも、慣れてきたように見えた頃。


 それでも、小さなすれ違いは、ふいに顔を出した。




 その日、川辺での掃除作業中だった。


 リュカが拾った流木を、力いっぱい投げた拍子に──

 それがトトラたちの作った小さな水車にぶつかり、壊してしまった。


「なにすんだよ!」

 トトラが怒鳴った。


「わざとじゃねえよ!」


 リュカも怒ったように叫び返す。




 すぐにゆかりたちが駆け寄り、間に入った。


 だけど、そのあとも、

 リュカはどこか、ふてくされたまま、口をきこうとしなかった。




 *


 午後、村の裏手の林。

 リュカは、ひとりで地面に小石を投げていた。


 ポルカがそっと近づいて、となりに座る。


「……かなしいの?」


 リュカは、返事をしなかった。


 でも、手に持っていた石が、

 ぽろりと膝の上に落ちた。




「おこったのは、ほんとだけど。

 でも、ほんとは──」


 リュカは、かすれた声でつぶやいた。


「おれ、こわかったんだ。

 また、ここでも、ひとりになるんじゃないかって」




 ポルカは、そっとリュカの手を取った。


「だいじょうぶだよ。

 わたしたち、もう“なかま”だもん」




 トトラも、あとから遅れてやってきた。


 バツが悪そうに、頭をかきながら。


「……わりぃ。

 怒ったけど、ほんとは、すげーびっくりしただけなんだ」




 リュカは顔をあげた。


 トトラの手も、ポルカの手も、

 すぐそこにあった。




 すこしだけ、リュカの目が赤くなった。


 でも、それを指摘する子はいなかった。


 ただ、

 そっと、そばにいるだけだった。




 *


 夜。

 星空の下。


 リュカは、子どもたちの輪の中に座っていた。


 特別な言葉はなかった。

 でも、火を囲んでいるだけで、

 ぽかぽかとした温かさが、胸に広がった。




「ここに、いていいんだ」


 リュカは、心の中でそっと思った。


 誰にも聞こえない声で。




 *


 その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。


 怒りの裏側には、

 さびしさや、不安が隠れている。


 それに気づいて、

 そっとそばにいられる大人でありたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ