第44話 リュカのひみつ
ユレ村の暮らしにも、すこしずつ慣れてきた頃。
リュカは、時々ふっと遠くを見つめることがあった。
畑にいても、川辺にいても、
みんなと一緒にいても──
どこか、ひとりだけ、少しだけ離れている。
夕方。
村のはずれにある、小さな丘で。
トトラとシェムが、リュカを見つけた。
「なにしてんの?」
トトラが、草をかき分けながら近づく。
リュカは、ポケットに手を突っこんだまま、
ちらりとふたりを見た。
「べつに」
「べつに、って、なにかある顔だぞー」
トトラはずんずんと隣に座り、
シェムも静かに、少し離れて腰をおろした。
しばらく、風の音だけが流れたあと──
リュカは、ぽつりと話しはじめた。
「……おれ、ほんとはこの村の子じゃない」
「え?」
「小さいころ、森でひとりでいたのを、ここの人たちに拾われたんだ。
だから、ここで育ったけど……
どこにも、ほんとの“家”って感じがしない」
トトラは、すぐには言葉を返さなかった。
代わりに、シェムがゆっくりと口をひらいた。
「……ぼくたちも、ちょっと似てるかも」
「え?」
「ぼくたち、園に来たとき、
“ここがほんとの場所かな”って、
ちょっとだけ思ったことあるよ」
トトラも、頷いた。
「最初はおれも、“ここにいていいのかな”って思った!
でも今は──“ここにいたい!”って思ってる!」
リュカは目を丸くした。
それから、ふっと笑った。
ほんとうに、ほんの少しだけ。
「……へんなやつら」
「おまえもな!」
トトラがにやっと笑い返した。
*
その夜、子どもたちは村の小さな広場に集まり、
夜空を見上げた。
無数の星たちが、川の流れのようにきらめいていた。
「リュカ、あの星、なにに見える?」
ポルカがたずねた。
リュカは少し考えて、ぽつりと答えた。
「……道。どこにでもつながってる道」
「そっか」
ポルカは笑った。
「じゃあ、どこにいても、つながってるんだね!」
リュカは、うなずいた。
心のなかに、
すこしだけあたたかい灯がともったような気がした。
*
その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。
「居場所」は与えられるものじゃない。
そこにいたい、
そこにいていい、
そう思える瞬間の積み重ねで、生まれるものだ。




