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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第3章「なつ、そとのせかいへ」
44/51

第44話 リュカのひみつ

 ユレ村の暮らしにも、すこしずつ慣れてきた頃。

 リュカは、時々ふっと遠くを見つめることがあった。


 畑にいても、川辺にいても、

 みんなと一緒にいても──

 どこか、ひとりだけ、少しだけ離れている。




 夕方。

 村のはずれにある、小さな丘で。

 トトラとシェムが、リュカを見つけた。


「なにしてんの?」


 トトラが、草をかき分けながら近づく。


 リュカは、ポケットに手を突っこんだまま、

 ちらりとふたりを見た。


「べつに」


「べつに、って、なにかある顔だぞー」


 トトラはずんずんと隣に座り、

 シェムも静かに、少し離れて腰をおろした。




 しばらく、風の音だけが流れたあと──


 リュカは、ぽつりと話しはじめた。




「……おれ、ほんとはこの村の子じゃない」


「え?」


「小さいころ、森でひとりでいたのを、ここの人たちに拾われたんだ。

 だから、ここで育ったけど……

 どこにも、ほんとの“家”って感じがしない」




 トトラは、すぐには言葉を返さなかった。


 代わりに、シェムがゆっくりと口をひらいた。


「……ぼくたちも、ちょっと似てるかも」


「え?」


「ぼくたち、園に来たとき、

 “ここがほんとの場所かな”って、

 ちょっとだけ思ったことあるよ」


 トトラも、頷いた。


「最初はおれも、“ここにいていいのかな”って思った!

 でも今は──“ここにいたい!”って思ってる!」




 リュカは目を丸くした。

 それから、ふっと笑った。


 ほんとうに、ほんの少しだけ。




「……へんなやつら」


「おまえもな!」

 トトラがにやっと笑い返した。




 *


 その夜、子どもたちは村の小さな広場に集まり、

 夜空を見上げた。


 無数の星たちが、川の流れのようにきらめいていた。




「リュカ、あの星、なにに見える?」


 ポルカがたずねた。


 リュカは少し考えて、ぽつりと答えた。


「……道。どこにでもつながってる道」


「そっか」


 ポルカは笑った。


「じゃあ、どこにいても、つながってるんだね!」




 リュカは、うなずいた。


 心のなかに、

 すこしだけあたたかい灯がともったような気がした。




 *


 その夜、ゆかりの記録帳にはこう記された。


「居場所」は与えられるものじゃない。


 そこにいたい、

 そこにいていい、

 そう思える瞬間の積み重ねで、生まれるものだ。



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