第42話 リュカとの 出会い
実地研修の日。
朝早く、園の前に小さな馬車が到着した。
「いってらっしゃい!」
サリアやミュリエルが手を振り、子どもたちはわくわくと馬車に乗りこんだ。
行き先は、森と川に囲まれたユレ村。
この地域でも、冒険者や旅人たちの休息地として知られる、自然ゆたかな小さな村だ。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で、トトラが元気よく叫ぶ。
「よーし、ドラゴンさがすぞー!」
「まだ村にもついてないよ」
シェムがあきれながらも笑った。
ポルカは膝の上でぎゅっと手をにぎり、
ルウは窓からそっと風の流れを読んでいた。
ミィナは静かに、木々の隙間からのぞく空を見上げていた。
*
村に到着すると、そこには見慣れない子どもたちの姿があった。
野良着をまとい、
日焼けした顔でこちらを見ている。
と、その中のひとり。
少しだけ離れた場所に立つ少年が、じっとこちらを見ていた。
ぼさぼさの栗色の髪。
膝には泥のあと。
目は鋭いようで、どこかさみしげだった。
少年の名は──リュカ。
「こんにちは!」
シェムが先に声をかけた。
リュカは、ちらりと目をそらしながらも、
小さな声で「……よう」と返した。
ポルカが一歩前に出る。
「ぼくたち、園からきたんだよ。いっしょにあそぶ?」
リュカは眉をひそめた。
でも、完全に拒絶するわけでもなかった。
「……べつに。ひまだから、いいけど」
それが、リュカと異世界保育園の子どもたちの、はじめての出会いだった。
*
午前中は、村の畑を見学した。
案内してくれた村のおじいさんは、笑いながら言った。
「このへんじゃ、子どもたちも働き手じゃからなあ」
トトラは鍬を持って大はしゃぎし、
イーリスは水路の水の動きに目をきらきらさせた。
リュカは少し離れた場所で、黙々と土をいじっていた。
「……なんか、ひとりだね」
ポルカがぽつりと言う。
「でも、さみしくはないのかも」
ミィナが静かに続けた。
その日の午後、
リュカは、トトラたちがつくった小さな泥だんごに、そっと手を添えた。
「ここ、もっとかためると、ちゃんところがる」
そう言った声は、思ったよりずっとやさしかった。
*
夜、ゆかりは記録帳にこう記した。
初めての出会いは、
うまくいかなくても、
ちいさな“興味”と“そばにいる”ことから始まる。
子どもたちはいま、新しい誰かと世界をつなごうとしている。




