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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第3章「なつ、そとのせかいへ」
42/51

第42話 リュカとの 出会い

 実地研修の日。

 朝早く、園の前に小さな馬車が到着した。


「いってらっしゃい!」

 サリアやミュリエルが手を振り、子どもたちはわくわくと馬車に乗りこんだ。


 行き先は、森と川に囲まれたユレ村。

 この地域でも、冒険者や旅人たちの休息地として知られる、自然ゆたかな小さな村だ。




 ゴトゴトと揺れる馬車の中で、トトラが元気よく叫ぶ。


「よーし、ドラゴンさがすぞー!」


「まだ村にもついてないよ」

 シェムがあきれながらも笑った。


 ポルカは膝の上でぎゅっと手をにぎり、

 ルウは窓からそっと風の流れを読んでいた。


 ミィナは静かに、木々の隙間からのぞく空を見上げていた。




 *


 村に到着すると、そこには見慣れない子どもたちの姿があった。


 野良着をまとい、

 日焼けした顔でこちらを見ている。


 と、その中のひとり。

 少しだけ離れた場所に立つ少年が、じっとこちらを見ていた。




 ぼさぼさの栗色の髪。

 膝には泥のあと。

 目は鋭いようで、どこかさみしげだった。


 少年の名は──リュカ。




「こんにちは!」

 シェムが先に声をかけた。


 リュカは、ちらりと目をそらしながらも、

 小さな声で「……よう」と返した。




 ポルカが一歩前に出る。


「ぼくたち、園からきたんだよ。いっしょにあそぶ?」


 リュカは眉をひそめた。

 でも、完全に拒絶するわけでもなかった。


「……べつに。ひまだから、いいけど」




 それが、リュカと異世界保育園の子どもたちの、はじめての出会いだった。




 *


 午前中は、村の畑を見学した。


 案内してくれた村のおじいさんは、笑いながら言った。


「このへんじゃ、子どもたちも働き手じゃからなあ」


 トトラは鍬を持って大はしゃぎし、

 イーリスは水路の水の動きに目をきらきらさせた。


 リュカは少し離れた場所で、黙々と土をいじっていた。




「……なんか、ひとりだね」


 ポルカがぽつりと言う。


「でも、さみしくはないのかも」

 ミィナが静かに続けた。




 その日の午後、

 リュカは、トトラたちがつくった小さな泥だんごに、そっと手を添えた。


「ここ、もっとかためると、ちゃんところがる」


 そう言った声は、思ったよりずっとやさしかった。




 *


 夜、ゆかりは記録帳にこう記した。


 初めての出会いは、

 うまくいかなくても、

 ちいさな“興味”と“そばにいる”ことから始まる。


 子どもたちはいま、新しい誰かと世界をつなごうとしている。

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