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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
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第37話 ミィナの ふゆのうた

 冬の園庭は、風が音を連れてくる。


 かさかさ、さらさら──

 木々のあいだから吹き抜ける空気が、地面をなでていく。




 その日、ミィナはいつになく静かだった。

 もともとおしゃべりな子ではないが、今日は特別に、言葉が遠いようだった。


「さむいの、すきじゃないの」


 ぽつりとつぶやいた声は、炎のように揺れていた。




 *


「じゃあ、ミィナちゃんは“どんなときがすき”?」


 ゆかりがそう聞くと、ミィナは少し考えて──


「……あったかくて、くらくて、ひとりのとき」


「くらいの、すきなんだね」


「うん。ひかりが、よく見えるから」




 その午後、室内では“音であそぶ”活動が始まった。


 風のベル、水のひびき、木の音、石のふれあい。


 子どもたちが自由に音をならすなかで、ミィナはひとつだけ、小さな金属のうつわを選んだ。


 中に入っていたのは──火打石のセット。


「……これ、ならしてもいい?」


「もちろん」




 ミィナは、慎重に石と石をこすった。


 かちっ──


 ぱっ、と一瞬だけ光る火花。

 それは音というより、“ことばにならない想い”のようだった。




 何度も、何度も。


 石を鳴らしながら、ミィナは目を閉じた。


 そして、ふいに、ことばをつむぐ。


「わたしのうたは、ほのおのしずく。

 あついけど、さわると けむって、すぐに きえちゃう。

 だけど、こころのなかでは、ずっともえてる」




 誰も、声を出さなかった。

 ただ、そのことばのリズムに、園が耳をすませていた。


 風も止まり、空気が澄んだ。




「……ミィナ、それ、すてきな“うた”だね」


 ゆかりがそう言うと、ミィナはちょっとだけはにかんで、

 両手で火打石をそっと包んだ。




 *


 その夜の記録にはこう書かれた。


 子どもが自分の気持ちに形を与えた瞬間、

 それはもう、“表現”として立ち上がる。


 音、火花、ことば。

 ミィナは今日、自分だけの「うた」を見つけた。

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