第34話 ふゆの けはい
その朝、園庭の草に白い霜が降りていた。
「しゃりしゃりする!」
「これ、たべられる?」
「ちがうよ、こおりのこなだよ!」
子どもたちは興奮気味にしゃがみこみ、指先でそっと霜をさわった。
ルウの翼がひんやりとふるえ、イーリスの水膜は霜と触れてきらきらと結晶を浮かべた。
「さむい……けど、きれい」
サリアが、あたたかいお茶を用意する。
「今日は“季節のはじまり”だからね。体のなかから、ぬくもりを入れましょう」
*
その日、室内では「ふゆじたく」の話になった。
「ふゆって、なんのためにあるの?」
ポルカの問いに、ミュリエルは答える。
「木も、虫も、どうぶつも……おやすみしたり、体を守ったりするために、冬があるのよ。
ゆっくりになる時期が、自然には必要なの」
「こどもにも?」
「もちろん。子どもも、大人も。
にんげんも、りゅうも、うみのこも、フクロウも。ね?」
と、隅にいたハナエさんが笑った。
「ふゆはのう、見えぬところで、根がふかくなる季節じゃ」
*
午後は“ふゆの色”を探すおさんぽ。
シェムは、葉を落とした木の枝に影を見つけた。
トトラは、草の間に咲いた白い花を見つけて「これ、こおりのはな?」と聞いた。
ミィナは、手をポケットに入れて「かぜのこえが、ちょっとちがう」と言った。
イーリスは、冷たい空気に耳をすましていた。
ルウは「そらのいろ、すこし かるくなった」とつぶやく。
寒さは確かにあって、それでも、どこか清々しい。
変わっていく世界を、子どもたちは五感で受け止めていた。
*
園に戻ってきた子どもたちは、
手のひらで温めた石や、しずくの形の落ち葉を机にならべていた。
「これは“さむいけどだいじ”の色だよ」
ポルカが言った。
*
その夜、園の記録にはこう綴られた。
子どもたちは、季節の変化をからだで受け止め、
ことばにできない形で、自分の世界を深めていく。
寒さのなかで、感覚が研ぎすまされ、心がやわらかくなる冬。
今、園に“ととのう”時間が流れはじめている。




