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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
34/51

第34話 ふゆの けはい

 その朝、園庭の草に白い霜が降りていた。


「しゃりしゃりする!」

「これ、たべられる?」

「ちがうよ、こおりのこなだよ!」


 子どもたちは興奮気味にしゃがみこみ、指先でそっと霜をさわった。

 ルウの翼がひんやりとふるえ、イーリスの水膜は霜と触れてきらきらと結晶を浮かべた。


「さむい……けど、きれい」




 サリアが、あたたかいお茶を用意する。


「今日は“季節のはじまり”だからね。体のなかから、ぬくもりを入れましょう」




 *


 その日、室内では「ふゆじたく」の話になった。


「ふゆって、なんのためにあるの?」


 ポルカの問いに、ミュリエルは答える。


「木も、虫も、どうぶつも……おやすみしたり、体を守ったりするために、冬があるのよ。

 ゆっくりになる時期が、自然には必要なの」


「こどもにも?」


「もちろん。子どもも、大人も。

 にんげんも、りゅうも、うみのこも、フクロウも。ね?」


 と、隅にいたハナエさんが笑った。


「ふゆはのう、見えぬところで、根がふかくなる季節じゃ」




 *


 午後は“ふゆの色”を探すおさんぽ。


 シェムは、葉を落とした木の枝に影を見つけた。


 トトラは、草の間に咲いた白い花を見つけて「これ、こおりのはな?」と聞いた。


 ミィナは、手をポケットに入れて「かぜのこえが、ちょっとちがう」と言った。


 イーリスは、冷たい空気に耳をすましていた。


 ルウは「そらのいろ、すこし かるくなった」とつぶやく。


 寒さは確かにあって、それでも、どこか清々しい。

 変わっていく世界を、子どもたちは五感で受け止めていた。




 *


 園に戻ってきた子どもたちは、

 手のひらで温めた石や、しずくの形の落ち葉を机にならべていた。


「これは“さむいけどだいじ”の色だよ」

 ポルカが言った。




 *


 その夜、園の記録にはこう綴られた。


 子どもたちは、季節の変化をからだで受け止め、

 ことばにできない形で、自分の世界を深めていく。


 寒さのなかで、感覚が研ぎすまされ、心がやわらかくなる冬。


 今、園に“ととのう”時間が流れはじめている。



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