第33話 とどいた手紙、ひらく気持ち
ある朝、門のそばに淡い桜色の封筒が届いていた。
送り主は、時庭ゆかり。
「ゆかりせんせいから!」
「ほんとに?」「なにが書いてあるの?」
ポルカが封筒を両手で抱え、
ミィナがそっと開封を手伝う。
中には、手書きの手紙と、一枚の絵が入っていた。
「じゃあ、読みますね」
ミュリエルが声に出して読み上げた。
みんな、げんきにしてますか?
わたしはいま、“むかしいたところ”で、山と川のそばにある小さなおうちに来ています。 朝はことりが鳴いて、夕方はかえるの声がします。
あなたたちのことを思いながら、ここで過ごしています。 ごはんはおいしい? おそとであそんでる?
この前、ちいさな保育園だったころの写真を見つけました。 そこでも、子どもたちは毎日けんかしたり、わらったりしていました。
どこの世界でも、子どもは“いま”を生きてるんだなぁって、思いました。
はやく、あの旗の下に帰りたいです。
それまで、先生たちの話をよくきいて、いっぱい遊んで、まっててね。
だいすきな、みんなへ。
時庭ゆかり
読み終えたあと、誰もすぐには口を開かなかった。
しばらくして──
「……せんせい、ほんとに帰ってくるんだね」
ポルカが、そっと言った。
「うん」「よかった……」
「かえるばしょ、ちゃんとおぼえてる」
子どもたちは、返事を書きたいと言い出した。
シェムは、ていねいな字で「まってます」と書いた。
トトラは大きな字で「おれ、つよくなった!」と。
ルウは小さな風の絵を描いて、「はやくかえってこれるように」
イーリスは水色のしずくをぽとりぽとりと。
ポルカは、白い手のマークの下に「またいっしょにたべようね」と書いた。
ミィナは、「ひのうた、またきいて」とそっと綴った。
それぞれの気持ちがこもった紙は、サリアの竜翼に包まれ、
キールの手で、魔導局へと託された。
*
ゆかりの記録帳の最後の空白ページに、そっとこう書かれた。
待つという行為は、心を育てる。
“会いたい”という気持ちが、未来のつながりを強くする。
子どもたちは今、“再会の準備”をしている。




