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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
33/51

第33話 とどいた手紙、ひらく気持ち

 ある朝、門のそばに淡い桜色の封筒が届いていた。

 送り主は、時庭ゆかり。


「ゆかりせんせいから!」

「ほんとに?」「なにが書いてあるの?」


 ポルカが封筒を両手で抱え、

 ミィナがそっと開封を手伝う。


 中には、手書きの手紙と、一枚の絵が入っていた。




「じゃあ、読みますね」


 ミュリエルが声に出して読み上げた。




 みんな、げんきにしてますか?


 わたしはいま、“むかしいたところ”で、山と川のそばにある小さなおうちに来ています。 朝はことりが鳴いて、夕方はかえるの声がします。


 あなたたちのことを思いながら、ここで過ごしています。 ごはんはおいしい? おそとであそんでる?


 この前、ちいさな保育園だったころの写真を見つけました。 そこでも、子どもたちは毎日けんかしたり、わらったりしていました。


 どこの世界でも、子どもは“いま”を生きてるんだなぁって、思いました。


 はやく、あの旗の下に帰りたいです。


 それまで、先生たちの話をよくきいて、いっぱい遊んで、まっててね。


 だいすきな、みんなへ。


 時庭ゆかり


 読み終えたあと、誰もすぐには口を開かなかった。

 しばらくして──


「……せんせい、ほんとに帰ってくるんだね」

 ポルカが、そっと言った。


「うん」「よかった……」

「かえるばしょ、ちゃんとおぼえてる」




 子どもたちは、返事を書きたいと言い出した。


 シェムは、ていねいな字で「まってます」と書いた。


 トトラは大きな字で「おれ、つよくなった!」と。


 ルウは小さな風の絵を描いて、「はやくかえってこれるように」


 イーリスは水色のしずくをぽとりぽとりと。


 ポルカは、白い手のマークの下に「またいっしょにたべようね」と書いた。


 ミィナは、「ひのうた、またきいて」とそっと綴った。




 それぞれの気持ちがこもった紙は、サリアの竜翼に包まれ、

 キールの手で、魔導局へと託された。




 *


 ゆかりの記録帳の最後の空白ページに、そっとこう書かれた。


 待つという行為は、心を育てる。

 “会いたい”という気持ちが、未来のつながりを強くする。


 子どもたちは今、“再会の準備”をしている。

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