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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
30/51

第30話 このてで、つくる

「ねえ、ゆかりせんせい。この園の“しるし”って、あるの?」


ポルカのぽつりとした問いかけに、ゆかりは少し首をかしげた。


「しるし?」


「うん。まちの人とか、おみせとか、なんか目じるしみたいな……旗とかマークとかあるでしょ。

ここにも、そういう“じぶんたちの”が、あったらいいなって」


 


そのひとことが、子どもたちのなかで火をともした。


「つくろう!」「旗! おれ、ながいやつがいい!」

「まるいのがいいな」「うみの色、いれてもいい?」


「じゃあ、みんなで“園の旗”を作ってみようか」


ゆかりの声に、子どもたちの「わぁっ!」が重なる。


 



旗の材料を出すと、あとは自由。


線は曲がっても、色がはみ出しても、気にしない。

それぞれが思いつくままに、手を動かした。


トトラは赤いクレヨンをぐるぐるぐるっと勢いよく走らせて、「これ、ひのまる!」と笑ったが、

すぐに「じゃなくて、ドラゴンのしっぽかも!」と塗り直した。


ミィナは赤いしずくをいくつも描き、

イーリスは青の曲線を並べて「これは うみのうえのことば」と教えてくれた。


ルウは黄色を空に向かってのばすように描き、

シェムは緑の線をまっすぐ引いたかと思うと、ゆっくり指でこすってにじませていた。


 


途中、絵の具をこぼしたり、紙をやぶいたりしながらも、

そのすべてが“園のいま”をかたちにしていった。


そして──最後に、誰からともなく、

「まんなかに、てのマークつけよう」と言い出した。


「わたしたちの て で つくったから」


誰かの手を型にして、クレヨンでなぞった。

ちょっとゆがんだ、小さな“て”のしるしが、中央にのこった。


 



できあがった旗は、

白い紙のなかに、赤・青・金・緑の線がぐるぐる、ちぐはぐ、でもまるくまとまっていて、

その真ん中には、へにゃっと曲がったちいさな“手”のかたち。


きれいに整ってはいない。

でも──そこには、子どもたちの全部が詰まっていた。


 


ゆかりはそっと言った。


「この旗、とってもいいね。“うまく描く”じゃなくて、“みんなの気持ちで描く”って、こういうことだと思うよ」


 


ミュリエルが、描いた旗をラミネートして園庭に貼り出した。


風にふかれて、ちいさな絵がふわりと揺れる。


「……これ、うちの旗だ」


ポルカがぽつりと言った。

誰もがうなずいた。


 



その夜、ゆかりの記録にはこう記された。


じょうずじゃなくていい。きれいじゃなくていい。

子どもたちの“て”がうごいて、心がこもっていれば、それはもう“しるし”になる。


この園は、わたしたちみんなで“つくっている”。

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