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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
29/51

第29話 まもる、こわれる、なおす

 昼下がりの保育室。

 窓辺に並べられた“たからもの棚”には、子どもたちが持ち寄った思い出の品が並んでいる。


 その中に、ミィナの赤い石があった。

 ほんのりと熱を帯び、光をうけて淡く輝く石。

 彼女が園に来た当初から、ずっと大切にしているもの。




 その日、事件はふいに起きた。


 ルウが近くで羽ばたいた拍子に、風の流れが強くなり──

 ぽとん、と石が床に落ちた。


「……っ!」


 ぱりん。

 小さな音とともに、石の表面がひび割れた。


 ミィナの目が見開かれ、肩が震えた。


「──なんで……っ」


 ルウはその場に固まったまま、動けなくなった。


「……ご、ごめん……わざとじゃ……」


 ミィナは何も言わず、石を抱きしめて、走っていった。




 *


 その日の午後、保育室には重い空気が流れていた。


 ミュリエルはそっとルウの隣に座り、何も言わずに背を撫でた。


 ゆかりはミィナのもとに行き、ただ静かに座った。

 しばらくして、ミィナがぽつりと口を開いた。


「……まもってたのに。だいじにしてたのに。こわれた」


「うん。だいじにしてても、こわれることってあるんだよね」


「……なおらないなら、もう、いらない」


「ほんとうに?」


 ミィナは黙りこむ。

 ゆかりは、静かに言った。


「こわれたあとに、“それでもだいじ”って思えたら、それはもう“もっとたいせつ”なんだと思うよ」




 *


 夕方。

 ルウがそっとミィナに近づいた。


「……これ、ぼくがすきな羽。まもれなかったけど、もし……よかったら、いっしょに、なおしてみたい」


 手渡されたのは、風色の細い羽根だった。


 ミィナは、赤い石を両手で包み込みながら、少しだけうなずいた。


「……なおしてみる。ひび、ぜんぶは消えないかもだけど……」


「うん、それでもいい」




 シーが、小さな修復キットをそっと差し出した。


「“なおす”行為は、過去をなかったことにするのではなく、“新しい意味”を与える処理です」




 *


 その夜、ゆかりの記録にはこう綴られた。


 こわれることは、失敗ではない。

 守れなかった悲しみの中に、“まもりたいという気持ち”が確かに育っている。


 子どもたちは、“なおす”ことでまたひとつ、強くやさしくなっていく。

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