第28話 トトラ、うそをつく
ある日の午後。
工作の時間、トトラがみんなに見せたのは、光る小さなかけら。
「これ、ドラゴンのうろこ! このまえのまちあるきで、見つけたんだ!」
子どもたちは一斉に目を輝かせた。
「ほんと!?」「さわっていい?」「すごい……」
ミィナも思わず前のめりになり、ポルカはおそるおそる手を伸ばす。
でも──それは、見覚えのある装飾素材だった。
イーリスがぽつりと言う。
「それ……園の引き出しに入ってた、キラのかけらじゃない?」
空気がぴたりと止まる。
トトラは目を泳がせながら、声を荒げた。
「ちがうよ! おれのなんだ、ほんとにまちで拾ったんだ!」
ミィナの手の先がすっと止まった。
ポルカが一歩引き、シェムが目を伏せた。
その日の夕方、トトラは園のすみで一人、しゃがんでいた。
しっぽはぐったりと垂れ、爪先が泥に沈んでいた。
その背後に──ぽそぽそ、と静かな足音。
「……うそをついた子を、すぐに叱るべきかのう」
フクロウ獣人のハナエさんが、木陰から現れた。
「こどもは、うそをつく。だがそれは、“本当であってほしい”という願いのこともある」
ゆかりはそっと、隣に座って答えた。
「……たぶん、今日のトトラは、“すごいって言われたかった”んだと思います」
「ふふ……見えぬ未来を想像することは、子の特権。
だがそれを、うそでなく“夢”として、叶えられるよう手伝ってやるのが、おとなの役目じゃよ」
トトラの夢がなんなのか、良く叶えるためにはどうしたら良いのか、ゆかりはトトラと話し合った。
*
翌朝。
トトラは、自分で紙を折って作った“あたらしいうろこ”を持ってきた。
ゆかりから話をされたトトラの、新しい選択だった。
「これは、おれがつくった“うそじゃないドラゴンのうろこ”。
……こんなのがあったらいいなって、ほんとに思って、作った」
ポルカがそのうろこを受け取り、にこっと笑った。
「こっちのほうが、すごい」
ミィナもうなずいた。
「うそじゃなくて、“そうだったらいい”って思ったんだね」
シェムが、そっと“すき”のしるしの葉っぱを添えた。
*
ゆかりは記録にこう記した。
子どもの“うそ”の奥には、
認められたい、つながりたい、という気持ちがある。
大人は、うそを否定するより先に、
その“願い”に気づくことができるかどうかが、問われている。




