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『異世界ほいくえん』~この世界に、こどもがいるかぎり~  作者: 4MB!T
第2章「みつかる こたえ、ひらく こころ」
27/51

第27話 おとなりさんが、やってきた

保育園の東側、ちょっとした雑木林をはさんだ先に──

小さな、古びた一軒家があった。


そこに住んでいるのは、ハナエさん。

齢を重ねたフクロウの獣人の女性で、かつては薬師として都市の医療局にも関わっていたという人物だ。


だがここ数年は人づきあいを断ち、ひっそりと暮らしていた。

それでも、草木の手入れや空気の流れで、彼女の“気配”は園の周囲にしずかに感じられていた。


 


その朝、門の前に不思議な籠が置かれていた。


中には──手作りの干し果実、山草茶の束、そして白い花が一輪。


「これは……?」


「たぶん、“ごあいさつ”だと思います」


ミュリエルがそっと言った。


 



ゆかりが手紙をしたためて返事を出すと、

翌週の午後、ハナエさんがひょっこりと園を訪れた。


「わしは、ただの隣人じゃ。なにもできはせんが……こどもの声が聞こえるのは、ええもんじゃの」


彼女の声は低くてあたたかく、まるで森の奥の風のようだった。


トトラとミィナは少し警戒した様子で後ろからのぞき見し、

イーリスは目をまるくして「しおのにおい、しない……けど、なんかすき」とささやいた。


 


「よければ、一緒にお茶をどうですか?」


園の裏庭で、ゆかりと子どもたちが茶会をひらいた。


ハナエさんは、ゆっくり腰を下ろしながら、干し果実をひとつ口に入れる。


「ふむ……ここは、ずいぶんといい“気”がめぐっておる」


 



その日、ハナエさんは子どもたちに薬草の話をしてくれた。


「この葉っぱは、お腹がいたいときにいい」

「これは火傷に使う、けれど触るとちょいとピリッとする」

「この実はな、ほっぺがにこにこになるんじゃ」


ポルカが熱心にメモを取り、シェムは静かに葉の形をスケッチした。


 


別れ際、ハナエさんはこう言った。


「ここにおる子らは、みな“ちがう”けど、ちがうままに根をはっておる。

わしもそれを見守らせてもらおうかの」


 



その夜、ゆかりは記録にこう書いた。


地域の人とのつながりは、

園が“ひらかれた場所”であることの証。


支援でなくてもいい。見守り、気にかけるだけでも、

子どもたちの“居場所”は、ぐっと強くなる。



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