第20話 ゆかりの日誌:記録ときもち
この異世界に来てから、保育園が開所してから、数週間がたった。
家庭的保育施設の感覚を持ち込みながら、この園での日々を記録してきました。
ここに通う子どもたちは5人になりました。
【子どもたちのこと】
●トトラ
走る、登る、ぶつかる、謝る。
動きのなかで気持ちを表現する子。
少し粗いけれど、根はやさしく、繋がることに正直な子。
“いっしょにいる”ことが、彼にとっての愛情表現。
●ミィナ
静かな炎のような子。
感情の揺れが熱に変わる。
自己肯定感がまだ不安定だけれど、“好き”を形にして伝えることができる。
小さな笑顔を見せてくれるようになったのは、大きな変化。
●ルウ
空を知っている子。
地上との距離を測りながら、“関わる”ことを学んでいる。
描けないこと、言えないことに戸惑いながら、自分なりの表現方法を探している途中。
●ポルカ
感覚に敏感で、静かな環境を求める子。
無理に関わらせないことで、自然と“近づいてくる”という安心のリズムを覚えてきた。
ミュリエル先生との相性がとてもよい。
●シェム
影のなかにいることを選んでいた子。
言葉は少ないが、観察力と共感力が高く、自分のタイミングで“気持ちのしるし”を出せるようになってきた。
約束をつくる子。
【わたしたち職員のこと】
●サリア先生:
安心を「気配」で伝える保護者のような存在。
正解を探して迷いながらも、子どもたちの“いま”を大切に見ている。
●ミュリエル先生:
声にならない気持ちを拾う力がずば抜けている。
言葉少なに、でも一番深く“寄り添っている”。
●シー(C-03):
記録者として完璧な機能を持ちつつ、“感じる”というエラーを楽しみ始めている。
保育のなかで進化している存在。
【この園のかたち】
「ここにいていい」と、子どもたちが感じられる場所。
それが私たちの保育園の目標です。
教えるよりも、待つ。
関わるよりも、見守る。
正しさよりも、“その子のいま”をたいせつにする。
日々の小さな揺れを、園みんなで抱えている。
それが、“異世界”という言葉を越えて、たしかに育ちをつくっています。
──記録おわり。
また、あした。
これから、あたらしい子たちが増えてくる。
第一章「はじまりの旗」
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
この第一章では、異世界という特別な舞台でありながら、**子どもたちの「ふつうの育ち」**を丁寧に描くことを意識しました。
ゆかりが異世界に召喚され、職員たちと出会い、園が開園するまで。
そして、一人ひとりの園児たちと“共に過ごす時間”が、
やがて「この場所は、自分たちの居場所だ」と思えるようになるまで。
それは派手な冒険ではないけれど、どこかで子どもたちも大人もきっと経験している、
“すこしずつ”つながる日々だったのではないかと思います。
旗を作るというエピソードは、物語の中の象徴であると同時に、
この世界観を支える「共に生きる」姿勢そのものを形にした回でもありました。
上手にできなくても、自分たちの手で作ること。
そこに宿る感情や、育まれる絆を信じて。
第2章からも、どうぞお楽しみに。
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