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第10話 いっしょって、なんだろう

 ある晴れた朝。


 子どもたちは、園庭のあちこちでそれぞれの時間を過ごしていた。


 トトラは木をのぼり、

 ミィナは石を並べ、

 ルウは風にのって空をまわり、

 ポルカは砂場の端で静かに形をつくり、

 シェムは木陰に腰をおろし、葉を一枚ずつ透かして見ていた。


 にぎやかではないけれど、どこか満ちた空気。




「みんな、それぞれに“いい時間”をもってるね」


 ゆかりがぽつりとつぶやいた。


 その言葉に、サリアがそっと応じる。


「“いっしょに遊ぶ”って、実はすごく高度なことなのかもしれませんね」




 *


 昼前、室内で活動が始まった。


 今日は「つくってみよう」の日。

 布や糸、木の実や紙切れ、小さなパーツを自由に使って“好きなもの”をつくる。


 ルウは透明な葉を拾って、風を入れられる小袋をつくった。

 ポルカはキラキラした糸をからだに巻いて、光を反射する“しっぽ”をつくった。

 トトラは木の枝をたくさん使って、角と背中をつくった。

 ミィナは色の変わる布を熱であたためて、赤から白へ色を変える羽をつけた。


 ただ、シェムだけが何もしていなかった。


 ゆかりがそっと声をかける。


「シェムくんは、なにをつくる?」


「……ぼく、“誰かと同じ”になれないから」


「“同じ”って、むずかしい言葉だよね。みんな、“ちがう”ところから始まってる。でも、“いっしょ”にいることは、できると思うんだ」


「いっしょに、いる……?」


「うん。なにか同じものを作るだけが“いっしょ”じゃない。“見ている景色が重なった”って感じる瞬間があれば、それはもう“いっしょ”だよ」




 シェムはゆっくり立ち上がって、

 ポルカの作った“しっぽ”の光をじっと見た。


「……それ、きれい」


「うん。ポルカちゃんのきらきら、すてきだよね」


「……うん」


 それだけだったけれど、ポルカはほんの少し、身体をふるわせてうれしそうに光を返した。




 *


 その日、ゆかりは記録にこう記した。


 子どもたちは、自分の“好き”を大切にしながら、

 そっと相手を受け入れるすべを身につけていく。

「いっしょ」って、かたちじゃなくて、気持ちの場所にあるのかもしれない。




 みんなちがって、でも──どこかでつながる。

 そんな、やさしい日だった。

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