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雪女のシュプール  作者: Suzugranpa
43/50

第42話 告白

「お、俺さ、将来、山岳ガイドになって、ここら辺の自然を守りたいんだ」


 何を言い出すのかと、ユキもポカンとしている。


「でっ、でも、もひとつ守りたいものがあるんだっ」


 ユキは一応頷く。その時、ゴンドラの機械が動き出した。新は横目でチラっとそれを見て慌てる。


「えっと、お、俺、好きなんだ! やまが たが・・・」


 柄にもなく緊張で尻すぼみになった新の声は、不幸なことに、最後の二文字がゴンドラの軋む音と重なった。


 ユキの瞳がクルっと動き、しかしユキは明るく返す。


「山が好き? 私も山が好きよ。私もそう言う仕事に就きたいなって思ってるから、一緒に頑張ろうね」


 え? 聞こえてねえ? 


新は焦った。ユキの傍らでは車椅子の由芽が何故か新を厳しく睨んでいる。


 ちょ、ちょっと待って。なんで高岸が怒ってんの? 一歩下がった新に由芽が言い放った。


「あんた、なにいい気になってんのよ! ユキちゃんは私の彼女なのよ。勝手に手を出さないで!」

「へ?」


 あ? 俺、悪者になってる? ってか、彼女って、何?


 グォーッ


 ゴンドラがゆっくりと入って来た。新は訳が判らない。何がどうなってんだ?


 仕掛け人のるなは横を向いて吹き出していた。ユキ、聞こえたくせに、上手くかわしたな。まあ、そう急がなくてもいいか。まだ中学生だし。


+++


「おーい、ゴンドラに乗るぞー、一旦止めてもらうから、ゆっくりとな」


 剛が大声で叫ぶ。ユキと遠藤先生がまた由芽を支えながらゴンドラへと乗せ、月が慌てて一緒に乗り込んだ。ゴンドラが動き出し、次のゴンドラに大人たちも乗り込んでゆく。乗り込みかけた剛がふと振り返った。


「おい!宗清君も乗るんだぞ!」


 うわ!そうだった。新は慌ててもう一つ次のゴンドラの前に走る。


「はいはい、危ないからゆっくり乗ってよ。完全に振られたわけじゃないから、まだチャンスあるよ」


 新の乗り込みをアテンドしながら、スタッフの人がニヤリとした。


 グォーグォングォン


 新が一人で乗るゴンドラが山を下る。新はスタッフの人の言葉を反芻する。そう、振られたわけじゃない。きっと言葉が足りなかっただけだ。高岸は訳が判らんけど、またやり直せばいい。


 山の上ではあんなに激しく降った雪も、下界の地面には殆ど残っていない。何回も雪が重ならないと真っ白な雪原にはならないんだ。よーし、俺もひと冬かけて、何回もアタックするぞ、雪女に。


 センターハウスの駅にゴンドラが到着する。ドアが自動的に開くと、新は思い切って飛び降りた。



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