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雪女のシュプール  作者: Suzugranpa
31/50

第30話 そっくりさん

 フォグの向こうから声がした。


るな?」


 え? この声って


「ユキ?」

「うん、そう。ママと一緒だけど」

「よく判ったねー」

「月の匂いがした」


「追いつかれちゃったなー」


 月の背後で新が言った。ユキも驚く。


「宗清君もいるの?」

「まあね」

「な、なんで?」


「ユキを手伝おうかと思ってね」


 月がペロッと舌を出す。


 口をポカンと開けるユキを見て、圭介がゴーグルを外しながら月に言った。


「これで充分サプライズじゃない?」


 しかしユキはその圭介を見て更に絶句した。え? パパ… いやいやそんな筈はない。誰?


 圭介はユキの顔を面白そうに見る。以前、スマホで月との2ショットを見ているから、圭介にはユキがすぐに判った。


「この二人が何だか企んでてさ、サプライズにするからって手伝わされてんだけど、ユキちゃんのその顔でもう充分って気がするよ。あ、ごめんね、僕は月の父親の遠藤圭介です。初めまして」


 隣の紗香も慌ててゴーグルを外してお辞儀をする。


「月ちゃんのお父さん? すみません、ユキの母です。いつもユキがお世話になります」


 遅れてユキも頭を下げるが、内心はそれどころじゃない。私からするとあなたがサプライズだよ。だけどそんなこと言えやしない…。いや、ちょっと待て。今はそこじゃない。そもそも…


「な、何を手伝うって?」

「ユキってさ、夏休みの宿題で描いた、あのお花を探してるんじゃない? 咲いている場所を」


 月が一歩近づき、新が肯く。止む無くユキも小さく肯いた。


「なんで判ったの?」

「そりゃ、宗清の熱い想いよ」

「おいおい、今はいいから、それ」


 新が慌てる。圭介が紗香に向かって言った。


「なんだか事情は判らんのですけど、ここら辺は中学生だけじゃ危ないんで、文字通りの保護者で僕も手伝ってるって訳です」

「それは仰る通りですね。ゲレンデを外れると本当に危険ですもんね」


 紗香はビンディングを外し、板を雪面に突き刺す。ユキはまたポカンとした。パパと一緒に植えたお花を、みんなが探してるって? どうなってるの? ユキは心臓バクバクが止まらない。紗香に倣ってビンディングを外しながら、ユキは圭介の言葉の続きを聞いた。


「この辺りで、草花が生息するなら、ここじゃないかって思って、僕たちもさっき来たところなんですよ。フォグが晴れたら一緒にお探ししますよ」


 パパが決めた場所をパパのそっくりさんが探すなんて、何の罰ゲームよ。ユキはもう訳が判らなくなっていた。



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