第27話 再捜索
一方、山形家では晴樹がお風呂に入っている間に、紗香はユキに告げた。
「ユキ、春休みにまた行くよ、あそこのバックカントリー」
「え」
「春休みなら、積雪量も減ってるから前よりは探しやすいと思うよ。人も多いし、こっそりバックカントリーに入っちゃおう」
「うん。ハルキは?」
「お留守番かな。お家の修理をお願いしないと駄目なところがあるから丁度いい」
「なんかちょっと可哀想」
「パパが転んで怪我でもしちゃったら、それどころじゃなくなるでしょ?」
「それはそうだけど…」
少々引け目を感じるユキだったが、晴樹を巻き込むと効率が落ちることも理解できた。
「じゃあね、春休みになって初めての日曜日にしようか。午前中から」
「判った」
「装備の使い方も教えるからさ、ユキのシールも買っとくよ」
「ありがとう」
こうして山形家での再捜索は奇しくも月と新が示し合わせた日と重なった。
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そして、春休み最初の日曜日、
「うわー、車、たっくさん!」
月が助手席で叫んだ。
「春休みで日曜だからな、こうなるよ」
何とか空きスペースを見つけて車を入れた遠藤圭介と月親子は板を担いでセンターハウスへと向かう。
「バックカントリーなんて久しぶりだな」
「お父さんは滑ったことあるんでしょ」
「あるさ。スキー場まで行くのが面倒な時もあったしな。裏山みたいなところだけど、登るのが結構大変だから、リフトの有難味が判るよ」
「ふうん。それも新潟?」
「そうそう。長野に近いところだけどね」
センターハウスの入口には新が待っていた。
「宗清君、こっちがウチのお父さん」
新は緊張気味だ。
「は、初めまして、宗清ですっ」
「初めまして。月の父です。イケメンだねえー、月がお世話になります」
「こっ、こちらこそ」
圭介は月を突っついてニヤリとする。
「お前もやるな」
「ちっ、違うよ! そんなんじゃないの! そもそも彼はユキが好きなの!」
新は慌てて手を振り回す。
「こ、声、デカいよ!」
「大丈夫よ。何の話か誰にも判んないんだから」
そう言って振り返った月は、駐車場に入って来た1台の車に気がついた。
「あれ。あれってユキんちの車だ。水色の車。あたし、乗せてもらったんだよねー、ちょっと前に」
圭介も新もそちらを見る。新が焦って言った。
「も、もしかして山形も行くんじゃない? バックカントリー」
「なーるほど。それはそうかも」
圭介がのんびりと言った。
「じゃあ一緒に滑ろうか?」
「お父さん、それだめ!サプライズじゃなくなっちゃう!」
「サプライズ?」
「うん。またあとで話すから、さっさと行こう」
遠藤親子と新は、センターハウスを抜けると板を履いて、そそくさとゴンドラ乗場へ向かった。