第26話 共謀
月は慎重に新を呼び出した。ユキに知られないように、そして他の女子からも怪しまれないように。しかし、そんな配慮などどこ吹く風の態度で新はやって来た。
「判った? 判ったんだろ?」
月はちょっと嫌そうな顔をする。ったく、のほほんとしやがって。情報って高く売れるんだぞ。スパイは大変なのよ。
「あんたの推理通りよ。多分、ユキは何かのお花を探してる。もしかしたら、ユキの好きなあのお花かも知れないけど、はっきり判らない。訳ありらしいからあんまり根掘り葉掘り聞かない方がいいよ。マジでユキに嫌われるよ」
新は真剣にビビる。その顔を可笑しそうに眺めながら月は言う。
「ね、それで提案なんだけど、あんたの希望通り、あたしたちも探しに行かない?」
「え?」
「だから、あのユキの好きなお花よ、その線が濃いから。あたしが見つけてもあんたが見つけたことにしてあげるからさ、告るチャンスでもあるのよ」
新は一瞬フリーズした。そして激しく瞬きしたかと思うと、真剣な表情で肯いた。告るチャンスだなんて、そこまでは考えたことなかった。さすが女子は考えが違う。だが…
「二人でってか?」
「ご不満?」
「いや、そうじゃないけど、バレた時にやべぇかなって」
月も考える。確かに一理ある。あたしは原住民女子から総スカンを食らうし、そもそも新はユキのことが好きなんだから、告れるチャンスとか言っていながら、浮気に見えちゃう。ん-、どうしよう。
「じゃぁさ遠藤、おまえ保護者付きで来いよ」
「ホゴシャ?」
「そう。親とか兄弟とか、足を引っ張らない範囲で。俺は案内役になる」
なるほど。それなら言い訳も立つかな。宗清はガイドとして来ただけ。しかし保護者って、お父さんしかいないか。スキーもそこそこ上手だ。何しろ新潟生まれの新潟育ちだから、子どもの頃から山を滑っている。
「ん、判った。お父さんに頼んでみる。で、いつ行く?」
「そうだな、春休みに入って…、えーと、お父さんが来るなら日曜がいいよね。じゃ、春休みの最初の日曜日。朝10時にセンターハウス集合で」
月も大きく肯いた。
「オッケイ。春休みの最初の日曜日の朝10時ね」
見つけたら、スマホで写真撮ってユキに送ってあげよう。マジ、サプライズだ。何の目処もないくせに、月はニンマリした。