第25話 確かめる
それからしばらくして、放課後、帰宅しようとした月は、昇降口で紗香とばったり出くわした。
「月ちゃん、よね?」
あ、
「はい、こんにちは」
「今帰り? 雪酷いし送って行くよ」
外はせっせと雪が降っている。そう言えば、ユキはお母さんが来るからって言って先に教室を出たんだった。
「あの、ユキは?」
「ああ、あの子、人質に置いて来ちゃった」
「人質?」
「そう、卒業式の飾り物を作るからって招集が掛かったんだけどさ、私よりユキの方が上手だから任せて来ちゃったのよ。卒業生の数だけ作るから結構大変なんだけどね」
あっけらかんと紗香は言う。ユキもなかなか大変だ…。
「有難うございます。じゃ、お言葉に甘えます」
「あはは、やっぱしっかりしてるね、月ちゃんは」
「ええ?」
丁度いい機会だ。車内で月は、新から聞いた話をこっそり紗香に聞いてみた。
「クラスの宗清君が、ユキは山へお花を探しに行って、それでお母さんが助けに行ったとか言ってるんですけど、本当ですか?」
水色のXVのステアリングを握りながら、紗香は照れた。
「あー、バレバレなのね、あの子の行動も、私の行動も」
「いえ、宗清君だけです、そんなこと言ってるの」
「そうなの?」
「はい。あたしが思うに、彼はユキのことが好きなんです」
「あらあら」
赤信号で慎重に停止し、紗香は言った。
「ま、その通りなんだけどね、でもあんまり騒がないであげて欲しいのよ。あの子、秘密にしておきたいみたいだから。いろいろ訳ありでね」
紗香は月に微笑んだ。
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紗香に送って貰った月は紗香との会話を反芻した。新にはこっそり伝えておこう。推理は当たってるって。
それにしても、なんでユキはお花なんかを探しているんだろう。どんな訳ありなんだろう。これってあたしが先に探してあげたら超サプライズだよね。バックカントリーなんて行ったことないけど、春休みにちょっと行ってみようかな。月は密かに決意した。
一方の紗香も考えていた。大騒ぎになる前に決着つけたほうが良さげだ。以前、ユキに話した通り、3月になったら一緒にまた探しに行こう。