表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪女のシュプール  作者: Suzugranpa
18/50

第17話 探索

「ただーいまー」


 紗香が玄関ドアを開けた。


 あれ? 静かだな。晴樹もユキもいないの? どこ行ったのかな。靴を脱いで紗香は2階に呼びかける。


「ゆきー」


 階段を昇りユキの部屋のドアを開ける。あれ、いない。


 その時、表で車の音がして、間もなく玄関を開けて晴樹が入って来た。紗香は1階に降りる。


「晴樹、どこ行ってたの?」

「ショッピングモールだよ」

「ふうん。ユキも一緒?」

「いや。ユキはまだだよ」

「え? でも靴があるでしょ、スニーカー」

「あ、ホントだ」

「いないんだけど、どこ行ったのかな。メモもLINEもないし」


 すると玄関の晴樹が叫んだ。


「ユキのスキーがないからさぁ、滑りに行ったんじゃない?」


 確かにユキはそんな事を言っていた。るなちゃんと滑りに行くって。いや待て。紗香は少し胸騒ぎがした。

だって、月ちゃん、さっき学校に居たじゃない。お母さんと一緒に。


 紗香はもう一度玄関に行き、クロゼットを開けてみる。あ… プローブもない。どう言うこと? 紗香は考え込んだ。プローブはバックカントリースキーの必需品だ。雪崩等に埋もれた人を探すのに使うものだが、ユキってそんなこと、知ってたっけ? 少なくとも私は教えたことがない。もしかしてあの子、どこかで調べて、良く判らないまま持って行った…とか。と言うことはバックカントリーを滑ろうとしているのか? それはひょっとして、あの探し物のために? ヤバい。


「晴樹!車出して!」


 紗香は叫んだ。急ぎ身支度をする。スキーウェアに着替え、バックカントリー用装備をバックパックに詰め込む。救急セット、ビーコン、レスキュー用具、シール、折畳シャベル etc。


 晴樹が紗香を覗きに来た。


「え? 紗香も行くの? あれ、どこ滑る気? スキー場だよね、ユキ」

「うん。一応非常用。晴樹はさ、センターハウスでスタンバイしててくれる? あの子、バックカントリーに行った気がするの。そしたらまた迷子になってるかも知れないから」

「え? マジ?」

「うん。スマホ持って、待っててね」


 こう言うことは紗香の方がずっと上手うわてだ。晴樹は文句言わずXVを出した。唐沼高原スキー場まで15分。助手席で紗香はポツリと言った。


「連休に林で迷子になった場所らへんに、ユキはいると思う」

「なんで?」

「それが判らないの。あの子、何かを探してる」


+++


 ゴンドラ頂上駅で降りた紗香は、ユキの後を追うように斜面を登る。シールを付けているので、スキーを履いたままトレッキングコースへと歩く。少し登ってみたが山側に人影はなく、足跡もない。紗香は新雪の中をキックターンし、横手の林を目指す。上手くシュプールを見つけられたらいいんだけど。左右を見渡しながら、紗香は横方向へゆっくりと滑った。


 木々の間を通り抜けると緩斜面の雪原に出た。ここだったかな、ユキが迷子になった所って。はっきり判らないけどおおよそこの近くだった筈。紗香は方位を確かめ、緩やかに斜面を滑り降り始めた。左右を確かめながら、シュプール跡はないか目を凝らしながら。


 スキーが奏でる音の他は無音で真っ白な世界。紗香はユキの心の中に迷い込んだような錯覚を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ