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幼馴染4人組と『再会しても仲良しだよ』と約束したのに、再会しても『ざまぁ』と言い放って俺に馴染んでくれないんですが?  作者: 遥風 かずら


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28.さーやの部屋に


 背中のシャツを引っ張った彩朱さーやの呟きが聞こえてきた以上、昼休みになったところで屋上に向かうことにした。彩朱は授業が終わると同時にすぐに移動したようで、後ろの席にはいなかった。


 昼休みに呼び出すということは、何か大事な話でもあるのかも。


「あたるのお昼はいつも学食?」


 屋上に向かおうとすると、街香が声をかけてくる。街香が俺に声をかけてくるなんて、やっぱり姫のことがあったからだよな。


「大体そうかな」

「一緒に行こうか?」

「えっ? あ、いや~……き、今日は学食には行かないっていうかね」

「食べないでどこに行くつもり?」


 どうしたんだ?


 何で彩朱のところに向かおうとしてる時にこんなに聞いてくるんだろうか。


 そうかと思えば、


「なになに~? ナカ兄どっか行くの~?」


 ――と、恋都も加わってきた。


「ふぅん? ナカ兄、か。この言い方に戻ってるってことは失敗したんだね、恋」


 恋都の俺への声かけに、街香は気難しい顔をして恋都を見つめている。すっかり姉の顔をしているみたいだ。


 この隙に移動しておきたいが恋都が俺の動きを見ているし、うかつに動けそうに無い。


「俺はどこも行かないよ? いや、正確に言えばトイレに行くだけで……大したことにはならないよ」

「じゃ、途中までついていくよ~」

「男子トイレだからさすがに……」


 街香だけでも厳しいのに恋都まで何でついて来ようとしてるんだ?


 誰か彼女たちの注意を――


「よっ、遠西! トイレに行くんだろ? オレも行くんだわ。行こうぜ!」


 偶然なのか気づいてくれたのか、近東が通りがかってくれた。こういう時は本当に助かる。


「うん」

「悪ぃな、世羅姉妹! 遠西を借りて行くぜ。恋都はれっきとした女子だからついて来なくて大丈夫だぞ~」

「う、うう~。分かってるっての! 早くアタルと戻ってきてよね!」


 恋都は本気でついて来ようとしてたのか。街香は近東が声をかけても無反応だったけど、やっぱり俺以外の男子とは話をしないみたいだな。


 俺と近東を悔しそうに見つめる恋都を感じながら、廊下を歩きだした。


「助かったよ、近東」

「ま、トイレに行きたかったのはマジだしな。んでも、お前は別の用事があんだろ? あの姉妹でも無ければ黒令嬢でもないってことは、あの子のことだろうし」

「わ、分かるの?」

「分かってないのはお前だけだろ。いつもあの子に睨まれてんのはオレらだし、大体分かる。んで、トイレじゃないところに行きたいんだろ?」


 近東の言い方は意味深だな。俺が編入する前から彩朱の様子を見ていただろうし。


「ごめん、助かったよ!」

「おー。って、やべぇ! もるもるもる……!!」


 近東のトイレ行きは本当だった。


 彼の猛ダッシュを見送った後、俺は屋上に急いだ。


 階段を上がると屋上の扉は開放されていて、何人かの女子が出たり入ったりを繰り返しているのが見える。街香の時は朝だったせいかひと気は無かった。


 実際は週に一度だけは誰でも利用出来るようにしているみたいで、話し声が結構漏れ聞こえている。屋上の外に出ると、広々とした空間があった。


 以前は落ち着いて見られなかったものの、開放的な屋上庭園にはロビーチェアがあるようだ。


 それはともかく彩朱がどこにいるのかと見回そうとすると、目に見えるところには見当たらない。もしかして怒って教室に戻ってしまったのだろうか。


「ナカくん、ウチはこっち! 他の女子ばっかり見てるのってどうなの?」

「んん?」

「後ろにいたのに、どうしてすぐ気付いてくれないのか不思議すぎなんだけど?」


 見回す俺の視界から外れてまさかの背後とか、意外にいたずら好きだな。


「いやぁ、さすがに後ろは気づかないよ」

「ここに来るの遅かったし、何してたの?」


 今は険悪じゃなくなったといっても街香と恋都に捕まりそうになっていたなんて、言わないほうが良さそうだ。


「トイレに行ってた」

「はぁ!? ウチに会うよりもトイレが先とか! きちんと手は洗ってきた?」

「そりゃもちろん」

「……ナカくんってすごい気にしなさそうだから不安すぎるんだけど~」


 部屋の虫騒動があったから余計に神経をとがらせているっぽいな。だからってずっとあのままにしてるわけじゃないんだけど。


 昼休みの残り時間が半分になったことで、屋上にいた女子たちがちらほらと戻り始めている。そのせいか、辺りは急に静まり返ってしまった。


 俺と彩朱は人がいなくなったのを確かめて、ロビーチェアに腰掛けることにした。


「えっと、俺に何か話があるんだよね?」

「ん、うん……あの、あのね」


 何か言いづらそうにしてるな。そうかと思えば、彩朱は左右の指を何度も交差させて言うかどうかを迷っている。その仕草はいつ見ても可愛い。


「彩朱、俺に何か言いたいことがあったりするの?」


 顔を覗き込もうとすると、


「ナカくん!!」

「ご、ごめん!」

「じゃなくて、ナカくんは今日はウチの部屋に来ること! それだけ!!」

「えぇ? 彩朱の部屋に……って――いないし」


 勢いに任せてそう言い放つと、彩朱は立ち上がってとっとと屋上から立ち去ってしまった。


 一緒に帰るでもなく俺が彩朱の家にお邪魔するって意味だよな。家の場所は覚えているとはいえ、いきなりの話すぎて何が何やら。


「言われた通りに行くしか無いか……」


 彩朱の部屋どころか家に行くこと自体が幼い頃以来なんだけど、大丈夫なんだろうか。

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