ネコチャンVS大相撲
本日の大一番。
『黒龍王』対『根子千楊』の取り組みが始まろうとしていた。
地響きの様な四股を踏む黒龍王と二本足で立つマワシ姿のネコチャン。ネコチャンの四股はペタシペタシととても弱々しい音だ。肉球だから仕方がない。
『体格差は歴然ですね』
『そうですね。大人と子供どころではない体格差です』
豪快に塩を撒く黒龍王。粉ミルクを地面にサーってするネコチャン。
土俵の中央にゆっくり近づく黒龍王。深く腰を沈めてネコチャンを睨み付けて戦いに備える。
ネコチャンは自然体で観客を見渡しながら鼻をふんふんとさせている。
『見合って見合って……ハッキョイ!』
パアアアアン!
肉と猫が激しくぶつかり合う音がした。黒龍王は顔を真っ赤にしてネコチャンを押し込むがビクともしない。
ならばと張り手を連続で繰り出す。……が、ネコチャンは肉きゅうで華麗にそれをいなす。
『黒龍王が止まらない!大相撲になりました!』
『あー。ネコチャンが少しずつ押されてますよー。土俵際一杯!』
「今だ!……しまった!」
欲を出してしまった黒龍王。大振りになった張り手をネコチャンが見逃すハズもなく、ねこだましをして黒龍王の後ろに回り込んだ。黒龍王は自分の張り手の勢いに負けて土俵外に転がり落ちた。
『ネコーチャーン~』
『やりました!軍配が上がったのはネコチャン!ネコチャンです!』
『素晴らしい取り組みでした!』
『ここで放送時間終了の時間がやって来てしまいました。実況解説は私エルフと』
『オークがお伝えしました』
泣きながら翼を広げ土俵から飛び去る黒龍王とスンスンしながら鰹節一年分を受けとるネコチャン。土俵は残酷な場所だ。全てを得る勝者とみじめな敗者。実力絶対の世界。それは猫だろうとドラゴンだろうと変わらない。
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異世界新聞。
一面。『大関黒龍王。横綱にまた届かず』
大関黒龍王(18000才。クリスタ王国闇の山出身。以下黒)が横綱根子千楊(1才半。日本から転移。以下猫)に挑んだが敗北。全勝同士の戦いの軍配は猫に上がった。
取り組み後のインタビュー……黒『体格差を活かせなかった。ドラゴンとしては二万年ぶりの横綱になりたい。まだ優勝は諦めていない』
猫『ニャー』
大関、横綱共に優勝への意欲が伺えた。
今日は大関黒龍王(一敗)はワイバーンの爪鍵丸(三敗)と。猫はゾンビキングの死肉炎(四敗)に胸を貸す。猫が飽きて帰らなければ猫の全勝はまだ続きそうだ!