サボりの片棒と解読と
しばらくは1000文字程度をちまちま上げると思います
「はぁ……あのゲンちゃんがねぇ」
校門をくぐり、教室へと向かいながら彼女は独り言のようにつぶやく。
「ゲンちゃんって……人のじいちゃんをニックネームで呼ぶとか恋華くらいだぞ」
「そんなことはどうでもいいの!だってあのゲンちゃんだよ?つい最近までピンピンしてたよね」
「つい最近というか、昨日までピンピンしてたよ」
「何かおかしなところとかなかったの?」
「考え事はしてたみたいだけど、よく分からん」
ゲンちゃん、もとい暁 源次郎は俺の祖父だ。家の近くに道場を構えていて、週に一回子供向けに武道を教えているためご近所さんの間では結構な有名人である。もうすぐ90になろうかという年だがはちゃめちゃに強く、いまだに勝負に勝ったことがない。いやまあ、そんな年齢の相手に勝負を挑むのもどうなんだって話なんだが。
閑話休題
とまぁそんなじいちゃんが徘徊老人みたく唐突に意味もなくどこかへ行ってしまうとは考えづらい。
恋華もそれが分かっているからさっきあんなに驚いていたんだろう。
「というわけで恋華。お前には一つ頼みたいことがあるんだ」
「なにが「というわけで」なのかはよく分からないけど、捜索の手伝いなら任せてよ!」
一も二もなくそう言ってくれるのはありがたいが違う。
「いや、そうじゃない。というか手がかりもなく探して見つかるわけがないだろ?」
「それはそうだけど……じゃあ、どうするの?」
「決まってるだろ?手がかりを見つけるんだよ」
そう言って俺は鞄からある物を取り出す。それは、長年使い込まれてかなり色が褪せた手帳だった。
「これは?」
「じいちゃんの手記」
「ゲンちゃんって意外とマメだったんだね」
意外って……恋華はうちのじいちゃんをどう思ってるんだろうか。
「ちょっとこれを解読したいから、授業のノートを俺の代わりに取って欲しいなって」
「解読?そんなに字が汚いの?」
「いや、そうじゃない」
そう言って手帳の中身を見せる。そこに記されていたのは日本語でも英語でもない正体不明の文字列。
「……なにこの文字」
「さぁ?兎に角、今日はこれを読み解くのに時間を使いたいから代わりに授業を受けて欲しいって話」
そう言うと、恋華は快く承諾してくれた。ありがたい。
そう思いながら教室へ入った俺たちは、各自各々の席へと着くのだった。
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