いつもの日常と失踪と
とーしろうの見切り発車不定期更新作品。
生暖かい目で見守っていただけたら幸いです。
月曜日、それは昨日までの休日が終わり、新たな平日の始まりを告げる、恐らく一週間の中で最も忌み嫌われる忌々しい日。周りを見回すと、大勢の人がこれからの一週間を思ってか、朝だというのに沈んだ顔をしている。
そしてそれは俺、暁 風鈴も例外では無い。最も俺の場合、月曜日だからと言う理由では無いのだが。
「はぁ、どうしてこんな事に……」
既に二桁に到達しそうな回数の溜息を吐きながら登校していると
「お〜い風鈴。おっはよ〜〜!!!」
振り返ってみると、栗色の髪の少女が俺に飛びついてくる。とっさにそれをかわすと、飛び付く対象がなくなった少女は二、三度ケンケンした後に偶々俺の後ろにあった電柱に顔面から盛大に激突した。
「グエッ・・・・・・痛いじゃない風鈴!なんで避けるのよ!!!」
この女性があげてはいけない類の声を出した少女の名前は春原恋華、小学校の頃からの幼馴染だ。
「なんで避けるかって・・・そりゃあ振り返った瞬間に目の前に得体の知れない物体が飛び込んできたら避けるだろうよ」
「得体の知れないって、酷いよ!こんなに可愛い幼馴染が胸に飛び込んでくるのよ?そこは優しく抱きとめるのが普通じゃない?」
確かに十人いれば十人が認めるであろう美少女ではある。事実、今までにかなりの数告白されているみたいだし。だが、それとこれとは話がちがう。
「そんな気力はないし、そんな面倒な普通はこの世には存在しねぇよ・・ったく、自分で自分を可愛いとか言うなよ」
「え〜別にいいじゃん 本当の事なんだから」
「ハイハイソウデスネ」
そんなこんなで軽口を叩き合いながら高校へと向かう。
もうすぐ到着するとなった頃、ふと気になっていたことを聞いてみる。
「そういえば恋華。今日は朝から随分とテンションが高いな。何かあったのか?」
彼女はいつもこんな感じではあるのだが、それにしてもテンションが高過ぎる気がする。
一見いつもと変わらない感じもするが、そこはまぁ幼馴染だ。多分間違ってないだろう。
……と思ったのだが、彼女は心外だとでも言わんばかりに表情を歪ませた。
「それはこっちのセリフだよ」
「え?」
「風鈴の様子が変だからちょっと明るめにしてたのに」
驚いた。確かに気落ちはしてたが、そんなに分かりやすい態度は取ってなかったのに気付かれてしまっていたらしい。
「……よく分かるな。別にいつもと態度を変えてたわけじゃ無いのに」
「うーん、雰囲気?まぁ、伊達に幼馴染やってないからね!」
自分と同じ様なことを考えていた事に思わず笑みを浮かべる。
「で、どうなの。失恋でもした?」
うーん、あまり人に言うようなことではないが、まぁ恋華ならいいか。協力者もほしいし。
「人には言うなよ」
「人の悩みを言いふらかしたりしないよ」
俺が真剣な表情をしたからか、つられて恋華の顔も固くなる。
「じいちゃんが……」
「じいちゃんが?」
「失踪した」
「……え?」
「じいちゃんが失踪した」
「…………えぇぇぇぇええええ!!!!!????」
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