なぜ女性向け官能小説レーベルは短命に終わるのか。
また女性向け官能小説レーベルが誕生したようだ。
女性向けは忘れたころに現れてまたうたかたの泡のように消えていく。
なぜそんなことを気にするのかって?
俺も書いてたからだよ、電子で女性向け官能小説を。
なので気にはなるのだ。
官能、いやエロ小説レーベルと言えばまず思い浮かぶのはフランス書院だろう、あの黒い背表紙の。
男向けだけ息の長い、いま調べたらフランス書院は1975年創業だから40年以上続いてるのか。
なのに女性向けエロ小説となると数年で消えていく。
(ラノベ系女性向けエロ、BL含むは除く)
なんでなのか?
女性がエロ小説を読まない訳じゃない。
知り合いの女性書店員はフランス書院の棚を自分の領土にしていたし、ある小説書きの女性と話していたら結城彩雨の名前が出てきたこともあるし。
書き手だって女性がいるし、松原志織とか花房観音とか、藍川京は女性だっけか?
書く方も読む方も女性がいるのにレーベルとなると短命。
まずは女性向けとしたことで男性読者を切り捨てていること。
俺みたいに女性向けエロ小説も読んでみるってのは少ないだろうから。俺だって自分で書いてなきゃ読まないし。
幻冬舎でフランス書院やマドンナメイトから出たエロ小説をタイトルと表紙を大人しいものに変えて出しているが、戦略としてはあれが正解。
主力は男性読者だが、確実に片目で女性読者も見ている。
次に女性相手にエロを売ろうと思うなら、中身はどうあれロマンスを表に立てなきゃならない。
エロの割合がどんなに多かろうが、エロはロマンスの結果ですという体をとらなきゃならない。
ハーレクインみたいにさ。
エロではなくロマンスのレーベルになると途端に息の長いレーベルになる。
似たような中身なのに。
結城彩雨の名前を出した女性小説書きのようのフランス書院だろうとなんだろうと、読みたいものは読むので、女性向けとすることでかえってそういう読者を逃がしている可能性もある。
もあるが、それだけはないだろう。
うーんと悩んでいるとフェミの人たちが使う性的搾取という言葉から読みとけるかも知れないので、考えていってみよう。
性的に搾取されるってことはなにかしら搾取される資源があるってことだ。
ではその性的資源は平等だろうか?
いいや、ほぼ無限の資源をもっている人とほぼゼロの人がいる。
昔知ってる専業主婦でエロ活動に奔放な女性がいた。
子供を幼稚園に預けてラブホ巡りしたり、エロい自撮りを気前よくネットに上げたりしていた。
当然、男どもが群がる、つまり性的に搾取されているとも言える状況なのだけど、それで彼女の魅力は枯渇したのか?
いいやいいや、ますます艶やかに魅力を増していった。
性的資源は金や原油のような埋蔵資源ではないので、搾取されたからって枯渇はしないのだ。
相手次第で無限に湧いてくると言ってもいい。
つまり彼女は性的に言えばアラブの石油王をも越える富裕層とも言える。
そんな富裕層がいれば、性的貧困層もまた存在する。
保有する性的資源がほぼゼロで搾取されたら死んでしまうような人が。
性的富裕層の彼女と話していて同じ専業主婦の人でやたら突っかかってくる人がいると。
なんでだろう? と二人で話して出た結果は嫉妬だろう、と。
そら自分がやりたくもやれないことを好き放題にやってる人がいたら、嫉妬もするし攻撃もするだろう。
その時はやりたいなら自分もやればいいじゃんなあ、嫉妬するよりその方が早いじゃん、世の中変な人がいるなあ、で終わったけど、今なら分かる。
やりたいけどやれないのだ。
性的な資源がないから。
無限に性的資源が湧いてくる人と同じことはやろうとしてもできない。
かつ事が事だけに相手なしでは、自分一人ではどうにもできないことに辛さがある。
アラブの石油王とコンビニのフリーターなら格差も分かりやすいが、性的資源は金銭のように明確に表せるものではないので、嫉妬する方もされる方も格差を明確に意識してないことがまた残酷だ。
俺と彼女はしたいならすればいいのにとか、アラブの石油王がコンビニフリーターにプライベートジェットで旅行? ホテルのスイート貸しきり? やりたいならやれば? なんでやらないの?
というより残酷なことを無自覚にやってた訳だ。
知らないってことは罪だねえ。
で、話をエロ小説に戻すとエロ小説は例外なく性的富裕層の話なのだ。
性的に搾取されればされるほど性的資源を増していく種類の人たちの話なのよ。
だって搾取されて枯渇したら話が続かないだろ?
ここら辺がバッティングするんではないかと。
性的貧困層に差し出される性的富裕層の話。
どんな嫌みだって話だよな。
だからロマンスじゃなきゃならない。
ロマンスであればどんなにエロが詰め込まれていても性的な富裕層の話ではなくなるから。
女性向けエロを書いていた時にどれレディコミはどんなもんかなと読んだら、どれもこれも棚ぼたで男に強引に求められるって話ばっかでヒロインに主体性がない、とイライラしたけどあれも当然のことだったのだな。
主体的にエロ活動したら読者に嫉妬され攻撃されるから、あくまで自分の意思じゃないことでエロが発生しないといけないんだ。
なんでこんなクオリティの低い雑誌が廃刊にならないんだろうと思ったけど、俺のように高純度のエロを接種しても平気な人ばかりじゃない、芳醇なエロに耐えられない人もいるから、低いクオリティもまた必要なのだ。
便所の落書きのようなエロでも時と場合によっては人を救うってことで。
最後に新しくでた女性向けエロ小説レーベルの感想で締めるかね。
くっそ、つまんねえ!
エロとしても小説としてもひどい。
なんなんこれ? 短編を文庫で出すためにでかい活字でぱらぱらと組んである河出文庫じゃないんだからさあ。
しかも薄いし。
こんな薄い文庫は河出文庫とか詩集とかでしか見たことないぞ。
質がどうこう以前にすげえ手抜きを感じる。
俺は二度と読まないけど、これを必要とする人もいるだかろうから、これを読む人を趣味悪いとか言うのはやめておこう。