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勇者召喚1

面白くできるかな…。不安です。

湿った臭いが鼻腔を過ぎ去る。土と水が入り混じった臭いだ。梅雨ならばいやというほど嗅ぎ慣れるはずのこの臭いも、本来今の季節ならありえないはずだった。


「ど、どこだここ…」


誰が発したか定かではないが、誰しもが同じ疑問が頭の中を支配していることだろう。観たことのない石畳。しかしそれだけではない。壁も天井もすべて石造りで、その石はまるではるか昔の建造物のように不揃いの大きさをしていた。


今日における技術の進歩では均一の石を作り出すことなど造作もないはずだ。しかし、ここにある石は丸みを帯びており、人の手で削ったことが見て取れる非効率的な出来栄えだった。


石にはところどころ苔が生えており、作られてからだいぶ長い時間がたっていることが見て取れる。苔が生えるほどの潤沢な水分がこの部屋では漂っているのだろう。それは空気が湿っているはずだ。


ただし、ここにいる人間はだれ一人としてそんなことは気にしていない。というより、気にしている余裕がない、というのが正しいかもしれない。しかしそれは一方的なものではなく、“両者”ともにというほうが尚正しいだろうが…。


「ここはリオ・ア・ガスティリアという世界にある、ロンネフェラウド王国でございます」


そう声を発したのは齢にして凡そ17,8歳くらいだろうか、いや、顔立ちは大人っぽく見えるもののよく見れば体は未成熟であるため14,5歳くらいかもしれない女性だ。顔立ちは大きな双眸にスッと細く伸びた高い鼻立ち、人中は短めで唇は小ぶりで引き締まったいるものの情欲を誘われる整った形をしている。


シミのない肌はまるでバージンスノーのごとく汚れなく、毛穴など存在していないのではと思わせるほどにきめ細かい。ナチュラルメイク以上にすっぴんに近いだろう。しかし、逆に化粧をしてしまうことは、きれいな真っ白いキャンバスを汚してしまうことと同列とみなしても遜色ない。


頭蓋からはシルクのようなダメージという言葉とは無縁と思えるブロンドヘアーが肩甲骨あたりまで伸びており、前髪はきれいに切りそろえられ分け目に逆らわずに分けてある。


初見の人は男女問わず見惚れてしまうであろう外見の持ち主は、点は二物を与えてしまったのか、発した声音でさえも聞き心地のよい高さと柔らかさをしていた。


「ぇ…」


思わず声とも吐息とも取れない音がポツポツと聞こえるが、正直致し方ないことだと思えるから不思議だ。この状況は確実に非常事態。にもかかわらず、そのことすら忘れさせてしまうほどの美貌とはこれ以下に――。


「えっと……その、誰ですか?」


そう声を発したのは三限目の授業の準備をしていた二年一組の生徒の一人、杉原啓介だ。杉原自身も見惚れてないわけではないだろうが、声を発せたのは、もはやそれを通り越して喋りたいという欲求が前に出てきた結果だろう。


しかし杉原は純粋な疑問をぶつけただけなのだが、きれいな女性の周りにいた白いローブを着た陰気臭そうな年寄りや、コミケかと突っ込みたくなるような豪華な鎧を着て、精悍な顔つきをした口周りにひげを蓄えている騎士風の男、その他諸々には嫌な顔をされた。


杉原やほかの面々からしたら当然の疑問であるため嫌な顔をされて困惑するが、あちら側の理由としてはただ単に“言葉遣い”である。ただ日本の高校生に、咄嗟に正しい敬語を使いなさいと言っても無理な話だろう。せめて〇〇っすかというのが現代の高校生の精一杯のに対し、杉原は頑張ったほうであるとはいえる。


しかし向こう側、ロンネフェラウド王国の人たちはそんなこと知らない。ゆえに態度の悪さに怪訝な顔をする。かと言ってもそれは二年一組の面々にも言えることではあるのだ。初めましてで相手のすべてを見通せる人間なんていない。


「申し訳ございません、申し遅れました。私はロンネフェラウド王国第二王女、コーネリア・フォン・リ・ロンニーネでございます。以後お見知りおきを、勇者様」


そう鈴が鳴るような音が響く。だが、二年一組の面々の反応は薄い。それもそのはず、日本人に王女だのなんのと言っても実感がわかないのだから。


日本にも誰しもがご存知であろう象徴はいる。天皇だ。だからと言って天皇が権力を持っているかと言われたらそんなことはない。天皇は日本の象徴なだけであって、第二次世界大戦後あたりからは政治などを司ることが出来なくなった。


だからこそ日本では王子だの王女だの、皇太子だの王だのと言われても正直な話どうでもいいとしか言いようがない。自己紹介をしてもポカンとしている二年一組を見て更に怪訝そうな顔を浮かべるロンネフェラウド側の人間たちには理解できないだろうが、日本人たちも理解が出来ないのだからこればかりはお相子だろう。


しかし、二年一組の生徒たちがポカンとしているのにはこれのほかに理由がある。王女と名乗った人物の最後の文言だ。


「ゆ、勇者?」

「何の話?」

「なにこれ、映画の撮影かなんか?」

「いやドッキリじゃね?一般人に向けてのみたいな」


まるで朝礼で校長が変な一言を放ったあとのようなざわめきが起こる。何を言っているのかは分かったが、理解まではできていないようだ。隣同士でのささやき声は徐々にヒートアップし、もはや大波のような喧噪へと変わっていく。


しかし―――。





カツンッ!!!




突如響き渡る金属音。ローブを着た翁が自身で持っていた杖を床に強く打ち付けた。


「静粛にお願いいたします。皆様どうやら混乱されているようですが、王女殿下がこれからご説明なさいます故、暫し傾聴していただきたく存じます」


そう言って老人が王女と名乗った女性へ目配せをした。そのアイコンタクトをもらった女性は瞼を一度閉じ目でお礼を伝えると、二年一組のほうへと向き直る。


「それでは―――――」


ご読了いただきありがとうございます!


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