プロローグ
頑張って書いていきます!
「お、おい!どういうことだよ!!」
月夜に照らされた、薄闇漂う神秘的な雰囲気を放つ神殿内に、不釣り合いとしか言いようのない大声がこだまする。それはトンネルのような響き方ではなく、この広い空間に溶けていくような響き方をした。
この空間に似合わないノイズの発生主は、俺と同じ高校に通い、同じ異世界に飛ばされてしまったクラスメイトの杉原啓介だ。俺に向けられる杉原の顔は怒っているとも、驚いているとも受け取れる何とも言えない顔をしていた。とは言ってもそれは杉原だけではない。多少の憤怒をたたえているのは杉原だけであるが、少なくともみな一様に驚いてはいるのが見て取れる。
「どういうことって…。聞いての通りなんだけど」
苦笑交じりに俺はそう答える。聞きたいことはそのようなことではないのはわかっている。しかし、説明する義理がこいつにはないからまともには答えるつもりがない。ただ、俺が答えたことも別に間違っているわけではないため、ついつい苦笑交じりになってしまったのは仕方ないことだろう。
だが、杉原には馬鹿にしたように見えたらしく、驚愕の比率を超えて怒りをたたえて再度怒鳴ってきた。
「だからっ!なんでお前はそいつらと一緒に行こうとしてんだって聞いてんだよっ!!」
「いや、なんでって…。俺は何回も言ってただろ?俺はお前らとは立場が違うんだって。何をしようと勝手だろうに…」
これ以上の問答には苦笑すら出ず、ただただ呆れてしまう。何をそんなに気にしているのかが俺にはわからない。元々俺のことなんて気にしていなかったくせに、こういう時だけ気に掛けるというのは虫が良すぎる話だ。俺が誰とどこに行こうが、杉原達には一切合切関係のないことなのだから。
そう思い、これ以上の話は無駄だといわんばかりに杉原達に背を向ける。これ以上の会話は不要だろう。しかし、杉原はまだ終わっていなかったらしく、「まだ説明が終わってねぇ!」とわめき散らかしているのが背中越しでも聞いて取れる。時間はたいして気にしていないが、まぁこいつと話すくらいならそろそろ行くかと思い、隣にいる女性に目配せをして出立を伝えた。
彼女はうなずき、俺の目配せの意思を正確に感じ取ったとわかるようにほかの者へも帰還の命令を下す。その後、俺だけに聞こえるような声で「先にあちらでお待ちしております」と告げると、彼女自身も姿をかき消し、そこは元から何もなかったかのような静けさを取り戻した。
「じゃあ、次会う時までには勝てるようになっとけよ。まぁ、たぶんそんな暇は与えないだろうけど」
そう言って俺も姿を消す。
残された俺の級友たちは、いまだ状況を把握できていないらしく、口を開けたまま無言を貫いている。ただ――杉原だけは俺がいた場所をずっと見続けていた。
月光が照らすものの、暗夜が圧倒的に支配するル・エレノール神殿の雰囲気は、まるで光の勇者たちの生末を現しているようだった――。
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