118.次なる試練?
久々のこの感じだ。
僕たちは長らく滞在したコルト村を後にし、今は馬車に揺られて街道を進んでいる。
途中、人とすれ違うこともあり、コルト村に来る前の街道よりこちらに向かう街道の方が断然、人通りが多いみたいだ。
どうやらこっち方面は街に続いているようなので、その違いだろうね。
しばらく走るとどこからか羊や牛、鶏の鳴き声が聞こえてくる。
そしてさらに進むと、視界が開け遂に街が!!
と思ったのだけれど、どうやら街はまだまだ先なようで、代わりに現れたのは牧場のようだ。
ようだというか、見るからに牧場そのものだね。
でも規模が凄い。
例えるならば前の世界の御殿場や北海道のように、視界一面が放牧地帯となっている。
懐かしいなぁ、そう思いながら街道を進んでいく。
すると、ドドドドドドドドッ! という音と、
「う、うわぁ~!!」という叫び声が聞こえてきた。
な、なんだなんだ!?
そう思いながら後ろを振り返ると・・・。
「は、はぁあああああ!? なんだ!?」
そこには、羊の群れに追われながら必死に走っている牧場の人と思わしき男性が見えた。
しかも、その姿は段々と大きくなっているではないか。
まさにこちらに向かってきている訳だ。
よりによって何でこっちに向かってくるんだよ・・・。
そう思いながらもただ眺めていては僕たちも同じ目に遭ってしまう。
すぐに2人に教える。
「は、は、は、ハシュードさん、カイト!! 逃げないと!! あれ見てあれ!!」
「ん? どうし・・・、・・・、・・・、はぁぁぁぁぁぁぁああ!? 何だありゃ、何でこっち来てるの!? 」
「なんだよハルト。 いまね・・・、・・・、バカバカバカ!? なんだよあれ!?」
「お、おい2人とも、ちゃんと掴まっていろよ。 すまんがあの人助けるぞ。」
「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」
2人して驚く。
「しょうがないだろ。 あの人と羊にはまだ少しだけ距離があるように見える。 どっちにしろここの人と取引して、商品を仕入れていくつもりだったんだよ。 あのおっさん・・・ああもうしょうがない!」
た、たしかにそういうことなら助けないとね、恩も売れるし。
でもさ、どうするつもりなのかな?
まさか連れてくるわけにもいかないだろう。
すると、ある程度の距離になりハシュードさんが叫んだ。
「お~い!! 羊飼いのおじさ~ん!! 早く来るんだ!!」
そして僕たちの方を振り向いて告げる。
「おいカイトにハルトくん。 飛び込んで来たらあのおじさんのこと掴んで引っ張り上げてやれ! ギリのところで走り出すから!!」
「わ、分かりました!」
「分かったぜ兄さん!」
その間にも、ダダダダダダダダッ! という音と共に、その姿も大きくなってきている。
それにしても、あのおじさんは一体何をどうしてあんなにも、執拗に羊たちに追われているんだろうか?
助けたら聞いてみよう。
でもこんな作戦、上手くいくのかな??
僕たちまで羊たちにいじめられちゃうのはごめんだよ・・・。
そう思いながらいつでも引き上げられる態勢で待機する。
でも、羊ってこんなに乱暴な動物だっけ??
僕の中ではいつでもゆったりのんびりしていて、穏やかにメーメー鳴いている癒し系の動物だと思っていたのに・・・。
今日のこの一瞬で僕の中のイメージが逆転しちゃったよ・・・。
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