108.ロードさんの失態
美味しい昼食を食べ終えた僕たちはいよいよクォーツ村へ向かうこととなった。
結構ボリューミーだったから、お腹一杯で正直お昼寝したい気分なんだけどね。
「よし、みんな揃ったな。 なるべく早く帰って来たいだろうから、移動は飛ばすからな。 ちゃんと遅れずに着いてくるように!」
怖い、ロードさんの足の速さってどんなだろう?
僕たちはちゃんと着いていけるだろうか?
そんな不安を抱えながらも、クォーツ村への旅はスタートしたのだった。
テクテクテク・・・
あれ? さっきまでどれだけのスピードで走るのかと思ったらそんな速くなかったし、ましてや今もう歩いちゃってるんだけど・・・。
僕たちのことを思ってペースを保ってくれているのだろうか?
きっとそうだよね、と思った僕はロードさんにこのことを伝えようとしたんだ。
でもロードさんに辿り着く前に、他の門番のお兄さんに止められちゃったんだ。
「おいハルトくん! ロードに何か用かい?」
「え? うん、そうですが・・・。」
なんでそんな止めろっていう目で見てくるの?
「いや、まさかとは思うがあいつに遅いって言うんじゃないだろうな?」
「いやー、遅いってわけじゃないんですが、僕たちならまだペース上げれるから合わせてもらわなくても大丈夫ですよって・・・。」
「なっ! ゴホンゴホン。 失礼。 そ、それは止めておくべきだろうなぁ。」
「え、なんでですか?」
「なんでって言われてもなぁ・・・。 先日の戦いの後ふらふらになりながら帰ったろ。 あのあとロードのやつ、酒に酔って突然外で狂ったように走り出してさ・・・。」
「は、はぁ・・・?」
「ハッハハハ、そうだよなぁ、意味が分からねぇよなぁ。」
「突然走り出すって聞いたことないですよ、ハハハ。」
「でな、そんときにあいつ、足を攣ってよぉ。 バカだよなぁ、あんなへとへとになってた状態で走るってよぉ。 ダハハハハ!」
「え、そうなんですか!? ハハハハハ!」
失礼かもしれないけれど、確かにバカだよね。
すると、聞こえちゃっていたみたいだ。
「おーい、聞こえてるぞー!!」
その瞬間背中がゾクッとしたよね。
「誰がバカだってー!?」
「す、すいません!!」
「すまんすまん、わりぃわりぃって。」
「てかま、まあ俺も、後から聞いてバカじゃないかこいつ!?って思ったんだけどな。 ガハハハハ!」
怒られないみたいだ、よかったよかった。
ロードさん、怒ると怖そうだし。
そんな会話をしながら、のっそりとではないけれど、走るわけでもないような早歩きペースで、僕たちはモンスターのいない森の中を進んでいった。
「それにしても、ほんとにモンスターがいないんだね。」
「そうですね、っていうか、今更ながらですがハシュードさんが戦えたことに僕、ビックリしちゃいましたよ。」
「そうかい? まあ、確かに商人ではあるけどさ。 そうだ、ハルトくんこれ見て。」
そう言ってハシュードさんが僕に、冒険者カードを見せてきた。
それがどうしたというんだろうか?
「・・・? ってあれ!? 冒険者カード!? それ、ハシュードさんの!?」
「ふっふっふー、そのとおりさ! 一応俺も冒険者登録もしてあるんだよ。 というかこっちが先なんだけどね。」
知らなかった、だからハシュードさんまで戦ってたんだね。
収納魔法で荷物や倒したモンスターを収納してくれるために同行してくれているとばかり思っていたから、最初ビックリしちゃったんだよね。
「元々俺は、カイトと一緒に冒険者を目指して登録していたんだけど、収納魔法の能力に気付いてから色々勉強して、商人になったんだよ。 だからこっちも持っているってわけ。 だから俺もちゃんと戦えるんだよ。」
「そうだったんですね。 ビックリしちゃいましたよ。」
ハシュードさんの突然の暴露に、ただただ驚かされる僕だった。
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