相談事
一波乱起きそうです。
荒木は、亘の父親の会社の傘下にある、岸田ソリューションに勤務している。
「で、話って何だい?」
「実は、勤務先のことで・・・・・」
ためらったのち、腹をくくったのか一気に話し出した。
「架空取引があるようなんです」
「?」
話は続く。
北星銀行の発注したシステム開発費を下条エンジニアリングが受注し、業務の一部を岸田ソリューションが請け負っていることになっている。だが実際には業務は執り行われていないということだった。
「なんでそれを君が気づいたんだい?」
「実は、たまたま総務に保管されていた勤怠表を見たら、俺が北星銀行に出向していることになっていたんです。ほかに5人いました」
それで経理に探りを入れてみたところ、下条と岸田の間で金銭の授受があることが判明した。現時点で、経理課と総務課の間では、エンジニア6人の出向の情報は共有されていないらしい。
「このままじゃ、俺が片棒担いだことになりませんか?」
「いや、それはさすがに大丈夫だろう」
いくら何でも本人自ら出向をでっちあげるなんて考える者はいないだろう。
そうは言っても、絶対とは言い切れない。荒木が上長に相談することを
ためらったのもわからないでもない。
「でも、なぜ僕にこの話を?」
「あ、あの他に相談できる人がいなくて」
買いかぶられたものだ、亘には全く権限がない。すべては父を役員としてサポートする双子の弟の茂にゆだねられている。
「ひとまずは、よく話してくれたね。どうするか考えてみよう。下条エンジニアリングにも手引きした人間がいるはずだ。いや、おそらく下条が主犯だろう」
下条エンジニアリングと岸田ソリューションでは、規模は下条の方が各段上だ。
「ありがとうございます。やっぱり岸田さんに相談して正解でした。岸田さんは俺の恩人です。研究会に紹介してくれたときは本当にうれしかったです」
亘には誘った覚えがない。そういえば、父親の会社のイベントで会ったときに、社交辞令でなにか言ったかもしれないが、それさえも記憶になかった。
それにしても気になるのは、下条エンジニアリングのことだ。
亘は、早急に連絡するから、それまで内密にするよう言い聞かせて帰らせた。
嫌な予感がする。
早急に手を打たなくてはいけないのかもしれないと感じた。
どのように問題を解決していくのでしょうか。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。