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主人公の居ない集団異世界転移  作者: 十二月敬太
モブから見た集団異世界転移
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島49.知念大輝の視点

知念大輝ちねんだいき、24歳、会社員。

身長169。普通体型。垂れ目が特徴的。

知念大輝ちねんだいきの視点



 狩りによる食料調達の仕事を手伝いに行ったら何故か地下迷宮で怪物達とバトルすることになったんだけど、意外と楽しい。

 岩田班の清水雅也さんが地下迷宮を一度経験しているから上手くアドバイスしてくれて順調に戦えてるのに加えて、清水さんの補助魔法の影響も強い。

 岩田班の大盾の人こと奥井理仁さんから補助魔法、特に精神系の補助魔法の重要性を聞いた清水さんは一流の補助魔法の使い手である星さんに頼み込んで教えて貰ったそうだ。

 その補助魔法で俺達は敵に臆することなく戦うことができている。


「褒めて貰って嬉しいんだけどさ。凄いのは朽木君の同級生達だと思うよ」


 俺が連れの藤間蒼汰とうまそうたと一緒に清水さんのことを褒めていると、当の清水さんからやんわりと否定された。

 うん、確かに朽木君の同級生である沼田志桜里さん、合歓木正敏君、野村真由美さんの三人も凄い。

 狩りによる食料調達の仕事を手伝おうとしていた時に蒼汰が野村さんを誘ったのが切欠で沼田さん達と行動を共にすることになったんだけど、結果的に運が良かったと言える。

 最初は蒼汰の気軽さに閉口したんだけど、今となってはよくやったと密かに思っているくらいだ。


 沼田さんは防御魔法が得意なんだけど、スキルの関係なのか魔法だけではなく物理も防御することができる。

 一階で狼もどきが四方から突撃してきたんだけど、見えない壁に激突することになっていた。

 大きな熊もどきの強力な一撃もダブルヘッドの強烈な弓矢の攻撃も全て跳ね返していたし、本当に凄い。

 蛇足だが蒼汰の口説きというセクシャルな攻撃にも鉄壁の防御を誇っている。

 沼田さんは大人っぽくて綺麗な子だから気持ちは分かるが、相手は十八歳なんだから蒼汰は自重すべきだよ。


 合歓木君は姿を消せるのが強みだ。

 彼は「僕は透明人間より存在感が在りませんから」などと言うから、俺も昔はそうだったなとシンパシーを感じて好感度が高い。

 ただ、合歓木君がそう言うのは彼の生い立ちだけではなく能力も関係していて、姿が見えないのは存在そのものが消えているそうだ。

 それはつまり、透明人間の様に姿が見えないだけであれば触ることはできるが、合歓木君の場合は存在が消えているので触ることすらできないということだ。

 ダブルヘッドと呼ばれるトロールの進化個体との戦いでは気付かれることなく近付き、致命傷を与えた。


 野村さんは癒し効果とやる気促進剤になってくれている。

 平凡な自分達でも頑張ればやれるという自信に繋げてくれるのは野村さんが必死に頑張っているからだ。

 つい最近まで彼女はやる気がなかったらしいんだが、切欠が有ってスイッチが入ったそうだ。

 そして自分にできる精一杯を全力でやっていて、それを見ていると自分も頑張ろうと思える。


「いやあ、照れますなあ」

「知念さん……」

「褒め上手な人か……悪くない」


 沼田さんが手で自分の顔を扇ぎ、合歓木君が嬉しそうに俺を見ている。

 野村さんは俺を値踏みするかのように見ながら呟いた。

 清水さんと蒼汰がそれぞれ俺の肩に手を置き何とも言えない表情をしている。


「大輝、また思っていることを口に出してたぞ」

「それ、わざとじゃないなら病気だよ?」


 清水さんと沼田さん達の活躍で俺達は難なく朽木君の言ったノルマである地下三階の突破は達成した。

 だけど何回か繰り返した方が良いだろう。

 少なくともトロールのいる地下三階は繰り返すべきだ。

 俺達も朽木君達と一緒にトロールと戦う。

 これはもう決めたことだからトロールとの戦いに慣れておかないと。


「なんかもう違うこと考えているんですが」

「彼は病気だね」


 蒼汰と清水さんが何か言ってるが気にしたら負けだ。

 その後、何回かトロールと戦い、休憩がてら迷宮を出て上に戻ると、そこには岩田さんと女性が三人居て何やら話している。

 挨拶をし、それとなく話を聞いてみると、田島さん、遠坂さん、日野さんの女性三人だけでダブルヘッドを倒せなくて悔しい思いをしていると教えてくれた。


 俺はそれを聞いて愕然とした。

 トロールと戦えている気になっていたけど、清水さんの補助魔法や沼田さんの防御魔法、存在を消せる合歓木君や野村さんの頑張り等の助けがなければ、あれほど簡単にダブルヘッドに勝てなかった。

 俺と蒼汰が二人ずつ、あと四人居たって、もしかしたらダブルヘッドに勝てないかもしれない。

 俺と蒼汰は実力不足なんじゃないかと不安が襲ってくる。


 それを伝えると岩田さんが、女性三人と一緒に迷宮に行くことを提案してきた。

 確かにそうすれば彼女達の戦闘能力を見ることで自分達がどれだけ戦えるかを測る目安になるかもしれない。

 逆に彼女達に俺達がどれくらいの強さを持っているか見て貰うこともできる。

 ただ、強者が同行しないことで怖じ気付きこそしないが、緊張は強いられる。


「もちろん私も同行しよう」

「いえ、岩田さんが居ると頼ってしまうので私達だけで行きたいです」


 緊張する俺と蒼汰を安心させるために岩田さんが言ってくれた言葉を三人の女性の内の一人、田島さんが否定する。

 しかも女性三人は三人とも三人だけでも行くつもりだと言う。

 そんな彼女達を見て俺と蒼汰が何も思わない訳がない。

 二人して意を決し、自分達も行きますと強い意志を持って言った。


「死ぬ可能性もあるよ?」


 岩田さんの言葉で、それを意識せずにはいられなくなる。

 だけど、それを聞いても意思を曲げるつもりは無い。

 蒼汰も女性三人もそうみたいだ。



 地下一階も二階も危なげなく俺達五人はクリアした。

 戦いの前に自分達の実力を見定めて欲しいと頼み、女性三人からも頼まれた。

 結果として俺と蒼汰は足手まといになることはなかったと言われたし、彼女たちの実力も不服のあるものじゃなかった。


 次いで三階のトロールも雑魚は問題なく倒すことができた。

 田島さん達も俺達二人が居ることでかえって楽な位だと言ってくれた。

 沼田さん達に力を借りながらだけど何回か三階を繰り返しクリアしていたから慣れもあったのかもしれないけど、もしかしたら少しは強くなっているのかもしれないと自信も湧いてきた。

 これはダブルヘッド相手でもいけるんじゃないか? そんな楽観ムードすらあった。


「ごめんなさい。貴方達二人の実力は確かだと思う。だけどダブルヘッドは私達三人で倒したいの。だからその……」

「分かりました。最初は見てます。だけど、危ないと思ったら手伝いますよ?」

「分かったわ。ありがとう」


 お礼を言って笑う田島さんに見惚れてしまう。

 横から蒼汰が肘で俺を突いた。

 我に返り気合を入れなおす。


「じゃあ行きましょう」


 扉を開け中に入り、扉が閉まると炎の柱が出現し、それが消えるとダブルヘッドのご登場だ。

 見ているだけとは言ったが、俺と蒼汰はダブルヘッドに近付きこそしないが左右にダッシュで展開した。

 田島さん達は三方向に分かれながら全速力で前進しダブルヘッドへと距離を詰める。


 的が五方向に散らばったせいで、ダブルヘッドの矢を射る速度がいつもより少しだけ遅い。

 だが直ぐに一番自分に近い的を射れば良いと結論付けたのか、ダブルヘッドは真正面の田島さん目掛けて矢を放つ。

 田島さんはそう来ると予測していたのだろう。

 走るコースを瞬時に変えた。


 素早く次の矢を番えようとするダブルヘッドだが、もう遅い。

 女性三人が距離を詰め、近接攻撃ができる位置まで到達寸前だ。

 ダブルヘッドが矢を放つのをやめて弓で薙ぎ払う。


 トロールは頭が悪いと言われているが敵ながら良い判断だと思った。

 頭が二つあるから普通のトロールよりは賢いのかもしれない。

 三人は跳躍したり屈んだりしてギリギリで弓での攻撃を躱す。


「良し!!」


 俺と蒼汰が同時に声を上げる。

 近接戦闘できる距離まで無傷で近付いた。

 第一関門突破だ。


 俺達も何か有った時に直ぐに助けられるように距離を詰める。

 ダブルヘッドは片方の頭が俺達を目視するも、女性三人の攻撃が苛烈でそちらに対処するのに手いっぱいの様だ。


 弓を女性達めがけて投げ捨て、そのすきに両手に棍棒を持ったダブルヘッド。

 もしかしたら、その二つの頭で並列思考ができるのかもしれない。

 あるいは四つの目で敵を的確に把握できるからだろうか。

 右手と左手であらぬ方向に攻撃しているのだが、的確に三人に攻撃している。

 また、女性三人の三方向からの攻撃で深い傷を負っても再生能力があるので致命傷にまではならない。


「目だ!! 目を攻撃するんだ!!」


 蒼汰がアドバイスを送る。

 確かにダブルヘッドの目を一時的にでも見えなくすることができれば大きな戦力ダウンになるだろう。

 その声が届いたのか女性三人が一斉に目を狙う。

 そしてそれは功を奏し、ダブルヘッドの片方の頭の両眼が一時的に見えなくなった様子だ。

 目は再生するのに時間がかかる。


「いけ!! 頑張れ!!」


 ダブルヘッドの動きは精彩を欠き、次いで鈍くなっていく。

 負う傷は更に深くなっていき、再生能力は追い付かない。

 そしてやがて致命傷の一撃を受ける。

 それでもダブルヘッドは戦う意思を曲げない。

 雄叫びを上げて渾身の一撃を繰り出す。

 薙ぎ払われた巨大な棍棒が油断していたこちらに迫ってきていた。


 不味い。

 動け!!

 棍棒が近付いてくる速度はスローモーションに見えるが、俺の動きはそれ以下だ。

 身体を無理やり動かす。

 紙一重。

 ほんとうにギリギリのところでしゃがみ込み、俺は事なきを得た。


「え?」


 蒼汰の素っ頓狂な声が聞こえ振り返る。

 瞬間、蒼汰に棍棒が当たるのが見えた。

 ぶっ倒されて床を転がる蒼汰。

 止まる。

 ピクリともしない。

 急いで立ち上がり、駆け寄る。

 見るも無残な姿だ。

 叫ぶ。

 ダブルヘッドを見る。

 奴は力尽きて煙になって消えた。

 蒼汰は煙になっていない。

 生きているのか!?

 振り返る。

 蒼汰も煙となって消えた。


 急いで上に戻らないと。

 三人の女性を置いて上に戻る。

 緊張しながら石棺に近付く。

 石棺の蓋を開けて蒼汰が起き上がった。


「良かった。本当に良かった」

「いや、嬉しいのは分かるけど恥ずかしい」

「おお、すまん」


 俺は嬉しさの余り蒼汰を抱きしめていた。

 いや別にBLとかじゃないから。

 マジで死んだと思ったんだ。

 だから良かった。

 本当に良かった。


 岩田さんが俺の肩を優しく叩く。

 岩田班でも死んで蘇った人が居る。

 だから俺の気持ちが分かるんだろう。


 その後、俺達は再度ダブルヘッドに挑んだ。

 今度は俺と蒼汰だけで最初は挑んだんだけど、やっぱりちょっと無理だった。

 ただ、何回か繰り返していたら自分の中の何かが変化してきて、あと少しと思えるようになってきていた。


 だけど時間的に夜が近くなってきたのでゴブリンの洞窟に戻ることになった。

 岩田さん達と一緒に洞窟に戻ると、入り口に朽木君の名付けたゴブリンのセンスイが立っていて、円形闘技場に似た皆が集まる集会場みたいな扱いの場所に集合して欲しいと言われる。

 集合場所に着くと、そこには生存者の全てが集まっているんじゃないかっていうぐらいの人数が居た。

 それぞれが名付けたゴブリンやコボルトやアパケ、それにレギットやフロウは居ないので席には余裕がある。

 真ん中にある闘技場であれば闘う場所に朽木君が立っている。

 これから何が始まるのか予想は付く。

 おそらくトロール領域への侵攻の件を話すんだろう。 

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