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ライセンスワールド  作者: レイジー
テスト章
9/54

恐喝免許、暴力免許、そして殺人免許

 それから数時間が経過しセンター内に正午のチャイムが鳴り響く。

先に食堂に到着していたシオリはやって来たジュンと合流し共に昼食を摂り始める。

口に物を頬張りながらもシオリはいち早く先ほどの件を問いただす。


「そんで?一体どういうことなん?殺人免許てホンマに人殺す免許なん?」

「あぁ、そうだよ」

「嘘やろ?何でそんな免許があんねん」

「それこそ平和と秩序のためさ」

「はぁ?どゆこっちゃ?」


 ジュンは神妙な面持ちでゆっくりとシオリに説明をし始める。


「確かに殺人免許は人を殺す事が許可される免許だ。でも勿論誰でも殺していいって訳じゃない。それ相応の理由があると認められた上で一定の条件をクリアした暁に発行される。殺害出来るのは申請時に指定した人物のみ。もちろん殺害を試行出来るのは申請者のみ。センターが殺人を認める制度があれば”人から恨まれるようなことはしないでおこう”って心理が働くのが狙いさ」

「いや…理屈は分からんこと無いけど、いくらなんでも乱暴ちゃうの?」

「かもね。けど世の中には人の数だけ事情があるもんなんだよ。司法取引で無かった事にされた殺人、法の網目を掻い潜る輩、証拠の出ない裁判、圧力によりもみ消される真実。だから法律から切り離し制度としてのセカンドオピニオンを敷くことで全体的な治安の向上を図ってるんだ」

「いやでも、それって相手にとっては事実上死刑宣告なんやな?そんなん誰が判断すんねん?」

「センターの最高意思決定機関、通称”十戒”だよ」

「”じっかい”?」

「センターの5階に常駐する10人の首脳さ。センター職員の僕等でも詳しい正体は分からない。殆どの職員は正職員でも5階へは原則入れないことになってる」

「5階におるのになの”ジュッカイ”なん?」

「あのねぇ…。十戒をコケにすると君も殺人の対象にされるぞ?」

「冗談ですがな~、怖いなぁ~。しっかしたまげたわ。センターにある免許っててっきり”大人免許”と”家族免許”、あとは”聖人免許”やったっけ?それだけやと思ってたわ」

「このセンターには地下があるんだ。そこでは殺人免許、暴力免許、あとは恐喝免許ってのが発行される」

「そんなモンまであるん?」

「ま、発行理由はどれも似た様なもんだけどね。それらの発行判断は全て十戒が行う。法律を超えた最後の審判、それが十戒さ」

「ふ~ん。申請て何書くん?」

「えぇっと、確か大人免許の発行番号、殺したい相手、殺害動機と経緯詳細、希望手段、実行希望日、もしあれば証拠なんかかな」

「へー。意外とそのままやねんな」

「まぁ、この免許はある意味表向きな役割だけどね。取り合えずこういう制度をしいておけばさっき言ったみたいに抑止力になるから。それが本当の目的って聞いてる」

「今まで合格した人とかおるん?」

「いや、殺人免許は俺も知らないなぁ」

「そか。もし私が大人免許取れたら次は暴力免許取ったろかな。あのクソ男どついたるねん!」

「あぁ、例のお姉さんの上司?多分無理だと思うよ。地下免許は滅多に認可が下りないみたいだし。そもそも事情からして大きな違法性も無いし、いくらでも曖昧に出来る事柄だからね」

「ほな免許の意味ないやん。何とかしてーや!」

「無茶言うなよ」


 すると突然、2人の目の前に1人の男が現れた。


「ジュン君、ちょっといいかな?」

「え?あぁ!!ジ、ジムラさん!!」


 ジュンが声のする方向を振り向くと、そこには以前シオリとの初対面悶着時に現れたジムラと呼ばれる40代程の男が立っていた。その姿を確認したジュンは慌てて立ち上がる。


「お、お疲れ様です!何かご用ですか?」

「いや、突然ごめんね。デート中だったかい?」

「い、いえいえいえいえ!決してそんなんではありません!」

「そうかい?お嬢さん、少しだけお時間宜しいですか?」

「構へんよー」

「どうも。ジュン君、午前中に殺人免許の申請者が来たと思うけど、対応したのはジュン君かい?」

「あ、はい!自分です!若いシスターの方でした」

「そうか。何か変わった様子は無かったかい?」

「え?あー、いえ。特には。どうしてですか?」

「いや、ちょっとね。特に何もないならいいんだ。ありがとう。失礼するよ」

「あ、はい!お疲れ様です!」


 そうしてジムラという男は食堂から去って行った。

一気に肩を撫で下ろすジュン。


「ふひぃ~」

「あれ、最初に来た時におったオッちゃんやんな?何やジュンさんえらいビビッとるやないの。そんな怖い人なん?」

「いや、そういう訳じゃないけど」

「偉い人なん?」

「重鎮も重鎮だよ。数少ないセンターの創設メンバーの1人だからね。俺の恩人でもあるんだ」

「へ~。ま、興味無いけど」

「あっそ」


 そして2人は昼食を食べ終わり食堂を後にする。

午後非番であったジュンは2階自習室で終日シオリの勉強へと付き合うのだった。

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