めでたしめでたし
この日もジュンはセンターの受付窓口で来訪者の対応をしていた。
やがて聞きなれた声が耳に届く。
「やほー!ジュンさん!」
「ん?シオリさん。お疲れ様。どうしたの?」
「そろそろお昼やで~」
「…ったく。いつまでたかりに来るつもりだよ?」
「なーに言うてんねん!もうあの時の私やないでぇ~!初めての給料貰てん!今日は私が奢たろう言うてんねやんかぁ~」
「へぇー!こりゃまた意外な展開だなぁ。まさかこんな日がくるなんて、もう親心で泣きそうだよ」
ジュンが成長したシオリを見て感慨深い気持ちになっていると、突然その背後にもう1人の人影が現れた。
それを見たジュンは驚愕に表情を歪める。
「え…?じぇ、JK君?」
そこに現れたのは間違いなく殺人免許取得者のJKだった。
しかしその姿はジュン知っているいつものJKとは大きく違い過ぎるものだった。
表情は暗く凝り固まった上に目の下にはつよくクマが刻まれている。
そして何よりも目を引くのは艶々としていた健康的な黒髪から一変、余すところなく白髪で覆われた彼女の頭部だった。
「じぇ、JK君、だよね?あの、何があったの?」
シオリも現れたJKの姿には驚いている様子だった。
ジュンが恐る恐る声を掛けると、JKは何も答えることなくジュンが座る受付の上にある物を置いた。
「…これは」
そこに置かれたのはJKが今回取得した殺人免許の免許証だった。
JKはカードを置くと何も言わずにその場を去って行った。
「…免許返納、ということかな」
「ジ、ジムラさん!」
いつの間にかジュンの後ろにはジムラの姿があった。
ジムラは静かにその免許証を拾い上げると再びセンターの奥へと消えて行った。
「…あれ、脱色やないやんな?何があってんやろ?」
「さぁ、さぁ…」
ジュンとシオリがJKの身に何が起こったかを気にしていると、そこにまた別の人物が姿を現す。
「あ!シスターさん!」
シオリの後ろに立っていたのは同じく殺人免許取得者のシスターだった。
「どうも。突然すみません。今少し宜しいでしょうか?」
「はいはい。勿論ですよ。いかがされました?」
「…ジュンさん。私が来た時と随分リアクション違うんちゃうの?」
ジュンはシオリの小言をさらっと受け流しシスターに対し身を乗り出した。
するとシスターもまた自身が取得した殺人免許を机に差し出した。
「あ!ですよね。もう必要無いですもんね」
「はい。本当にお世話になりました」
「いえいえいえいえ!とんでもないです!センター職員として当然の事をしたまでです!」
「何よ?何があったんよ?2人」
シオリが2人の内情を気にする最中、次々と来訪者が現れる。
「よぉ、ジュン君」
「どうも。相変わらず忙しそうね」
「委員長さん!ジェントルさん!お揃いで。どうされたんですか?」
すると委員長が胸ポケットから取り出しジュンに渡したのはJK、そしてシスター同様取得した殺人免許証だった。
「え?あの…返納ですか?ってことは、その、もう、誰かを…?」
「えぇ?あぁそういえばジュン君は知らないのね。私の免許申請内容」
「え?どういう事ですか?」
「ふふふ。ね、ジェントルさん」
「あぁ、そうだな」
意味深にアイコンタクトを交わす2人。ジュンは勿論の事、シオリは更に状況を理解出来ない状況に置かれていた。
するとそこに丁度正午を知らせるチャイムがセンター内に鳴り響く。
それを聞いたシオリは拍手を打ちひとつの提案を申し出た。
「あーもう何やよう分からん。取り合えず皆で食堂行きましょうや。積もる話はそこで食べながらってことで」
「そうですね。是非」
「そうだな」
「いいわね。丁度お腹も空いたわ」
「よし、それじゃ皆さんで行きましょう~」




