JKの異変
「あ!いたいた!やほー!キラー先生ー」
JKはセンターの屋上へ来ていた。
そこで1人景色を眺めるキラーに声を掛けるJK。
「やぁ。どうしたの?」
「キラー先生!ほらほら、これー!」
JKは取得した殺人免許証をキラーに見せた。
「おー!おめでとう。よかったね」
「へへへー。キラー先生のお陰だよぉ~」
「ははは。で、早速敵討ちに行くのかい?」
「いやー。いつにするかはまだ考えてないけど、今日はちょっと別件でー」
「?」
キラーが少し首をかしげた。
「あのぉ~、キラー先生って~、彼女さんとかいるんですかー?」
突拍子もない質問に少し目を丸くするキラー。
「どうして?」
「もぉ~、鈍いなぁ~。てかどうせ教えてくれないんでしょー?授業の間も色々聞いたけど結局何も教えてくれなかったしぃ~」
「それは仕方ないでしょ。講師と生徒で余計な繋がりはNGだし、僕は商売柄秘密も敵も多いし」
「そんなところがミステリアスゥ~」
「…」
「ねねね、とにかく今度デートしましょうよー。映画とかがいいなぁ~。何が好きですかぁ~?」
「あぁ~、折角のお誘いだけど遠慮しとくよ」
「えー、どうしてー?」
「もう少し普通の男にした方がいいよ。僕と付き合っても辛いだけだよ」
「え~、私はキラー先生が好きなのにぃ~」
唇を尖らせ不満げなJK。
不意にキラーがJKと目を合わせる。
「そういえば、少し気になってたことがあったんだけど」
「えー?なになにー?わたしのことー?」
「最終試験の日、何かあったの?」
「え…?」
JKの中で時間が止まった。
今ここにあるはずの何かが過去に飛んだ。
「部屋から出てきた君、少し様子が違ったね。部屋の中で何かあったの?」
「…」
JKが言葉を詰まらせた。
それはとても珍しい光景だった。
「うぅん、別に…」
固まった表情のまま答えるJK、その言葉にはほんの少しの生気も宿っていなかった。
「そう、それならいいけど」
一度JKが視線を足元に落とし、数秒してまた顔を上げる。
そこにはいつもの生気を宿したJKの表情があった。
「あーあー、フられたー。今日はお菓子やけ食いだーー!」
両腕で後頭部を抱えキラーに背を向けたJKは屋上を後にした。
キラーはその姿を最後まで目で追った後、何かを考えている様子だった。
キラーの視線から消えたJKは屋上入口の階段の途中で壁によりかかり、じっと足元を見ていた。
しかしJKの脳裏に反映されているのは視界から伝達される自分の足元の景色ではなく、自分の心の深いところから湧き上がってくる正体不明の何かだった。




