卒業のお礼は卒業で
殺人免許最終試験終了翌日、ジュンは若干憂鬱な気持ちを引きずったまま仕事に励んでいた。
シスターのその後が気になってはいたが特に何が出来る訳でもなく淡々と業務をこなすしかなかった。
そこへ事情を知らない陽気なシオリが姿を見せた。
「やほやほ!ジュンさん!お疲れー!」
「やぁ。お疲れ」
「何~やずいぶん大変やったみたいやなぁ?暴漢入ったんやて?ジュンさんが退治したってホンマなん?」
「いやぁ、退治って程じゃないけど」
「随分顔色悪いやん。疲れてんの?」
ジュンは最高機密事項である殺人免許の最終試験内容を話す訳にもいかず、それとなく話をはぐらかした。
「いや、何でないよ。それより今日はどうしたの?面接の練習?」
シオリは急に満面の笑みを見せると、ジュンに対しある書類を見せた。
「じゃじゃーーん!見て見て見て!これ見てんかぁ~!」
「え?…おぉ!!」
シオリが見せたのはとある企業から送られてきた就職内定書類だった。
「やったやった!ジュンさんやったで!ついに内定貰てん!私、いよいよ社会に出て働きだすんやで!ホンマ嘘みたいや!」
「やったじゃないか!ついに報われたな!」
まるで小学生の様に無邪気な歓喜を見せるシオリ。
申し込み当初から何かと世話をしていたジュンもまた親心に近い感情から素直に嬉しさを感じていた。
「ホンマにお世話になりました。これで私もニート卒業ですわぁ~」
「あぁ。充実した社会人生活になるといいな」
「そうや!お礼にジュンさんの童貞は私が卒業させたろか?」
「なっ!!何を馬鹿なこと言ってんだ!余計なお世話だ!ったくどいつもこいつも!」
「にひひひひひ」
悪戯な笑顔でジュンをからかうシオリ。
ジュンは顔を赤らめ照れた表情ではあったが、この日の2人の会話には綺麗な花が咲くのだった。




