「間に合わなかったよ…」
死刑囚殺害という殺人免許最終試験を終えた面々は地下1階、射的場横の女子更衣室へと集まっていた。
中ではショック状態となっていたシスターを元医者である委員長が快方している最中だった。
するとそこにセンター内から毛布とホットココアを持ったジュンが戻って来た。
更衣室出入り口から中に呼び掛けるジュン。
「シスターさん!委員長さん!大丈夫ですか?あの、毛布と飲み物持って来ました!」
声を聞きつけ中から出て来たのは委員長1人だった。
ジュンから毛布と飲み物を受け取り再び中に戻って行く。
ジュンはシスターが心配でたまらない様子だった。
「…シスターさん、大丈夫かな?」
「一種のパニック状態だろうね。素人が始めての殺め事をした後なんだし、どちらかというとアレが正常な反応だよ」
「…こんな試験が行われるなんて。信じられません」
「まぁ、免許の内容が内容だしね」
それから20分程すると更衣室の中からシスターが委員長の手を借りゆっくりと出て来た。
詰め寄り声を掛けるジュン。
「シ、シスターさん!大丈夫ですか?」
「は、はい。すみません、ご心配をお掛けしました」
「もう大丈夫よ。脈も落ち着いた。けど数日間はゆっくりと体を休めてね」
シスターは徐ろに口を開き部屋の中で起きた真相を語り始めた。
「わ、私、部屋に入ってもどうしていいか分からなくて。相手の方に真相をお話したら急に襲いかかられて…。それで咄嗟に銃を取ったんですが、抵抗している最中に、つい引き金が…」
シスターは情景を鮮明に思い出していた。
やがて再び体が酷く震え出すとその場に膝から崩れてしまった。
「もういいわ。それ以上喋らないで。無理に記憶に抵抗しないで、PDSTになるかもしれないから。とにかく今はゆっくりと呼吸して」
「私、私っ…」
「私はこのままシスターさんを自宅まで送るわ。キラーさんいいかしら?」
「そうですね。今後の説明はまた後日にしましょうか。今日はここで一旦解散にします」
「そうだわ!スエン」
「ん?」
委員長は自身の胸ポケットから小さな用紙を取り出しジェントルへと渡した。
「明日連絡を頂戴」
「あ、あぁ」
そして委員長はシスターを抱き抱えゆっくりとエレベーターの方へと連れて行った。
続けてキラーと共にJKも去り、後味の悪い余韻を残したジュンとジェントルもまた地下を後にするのだった。
最終試験終了直後、講師のキラーは1人夕日の沈む屋上へと来ていた。
何気無く街の景色を眺めているとやがてもう1人の男が姿を現す。
「お疲れ様」
そこに現れたのはジュンの上司でもあるジムラだった。
「シスターさん、結局間に合わなかったよ」
「そうだね。随分と辛い思いをさせてしまったかな。力不足、申し訳無い気持ちだよ」
「それで?そっちはどうなの?」
「あぁ。正体と居場所は突き止めたよ。後は裏取りだけだね」
「やれやれ。試験が終了した直後のタイミングだっていうのに。もうひと仕事か」
「宜しく頼むよ」
2人の会話が終わる頃、丁度日は沈み切りそれぞれは姿を闇に支配されたまま音も無くその場を後にして行くのだった。




