2人目の合格者
それは突然の出来事だった。
死刑囚の男がが喋り終わるかどうかの瀬戸際でJKは突如発砲した。
弾は死刑囚の左胸に命中し一瞬の出来事に男は断末魔を上げる間もなく絶命していった。
発砲をした直後のJKは無表情のままで放心状態だった。
男の命乞いに何かを感じた様子ではあったが、その表情と佇まいはいつもの陽気なJKとは一線を画している。
”自分でも今何が起こったのか、どうしてとっさに発砲したのか分からない”そんな表情を浮かべているJK。ふと我に返ったJKはゆっくりと死刑囚の元へ近付いて行く。
「うわー、こんなに血が出るんだー」
死刑囚の男は大量の血を流しながらその目線はあさっての方向を向いていた。
「うーん。思ったより楽しくないや」
JKは手に持っていた銃を元かけてあったところに戻し部屋を出た。
部屋から出てきたJKに3人の視線が集中する。
「やほやほー!せんせー、終わったよ~」
いつもと変わらないJKだった。
(え!?本当に?)
”これが本当に人を殺してきた後の高校生の女の子だろうか?”と、ジュンは信じ難い様子だった。
キラーはJKが入って行った1番の部屋の中を確認する。
入口付近で大量の血を流している死刑囚の姿を確認し首に指を当て脈を確かめた。
「うん、死んでるね」
部屋のドアを閉め戻って来たキラーはJKに合格である旨を伝えた。
「いぇーい!」
歓喜に浸るJK。
不思議そうに見つめるジュンとジェントル。
「お、お疲れ様。どうだったの?」
「んー、ふつー?思ったより楽しくなかったー」
「そ、そう…」
ジュンはそう答えるJKにそれ以上の質問を思い付かなかった。
そんな折、キラーが腕時計で時間を確認する。
「あと30分」
残り時間を告げたキラー。
まだ部屋に残っているのは委員長とシスターの2人。
部屋の中からは目立った音は聞こえてこない。
誰もが結末を気にする中、ジェントルは委員長のドア、ジュンはシスターのドアをより特別な気持ちで見守っていた。
(彼女、一体どういうつもりだったんだ?どうして俺にあんなことを…?)
(シスターさん、一体どうなってるんだろう?本当に、本当に殺すのかな?まさか、逆に中で襲われてるなんてことは!?)
それから少しの時間が経ち、誰もが沈黙を守る中、委員長が入った2番のドアから物音がした。
静かにドアが開くと、そこには委員長の姿があった。
「!」
特に変わった様子も無く、無言のままキラーの元へと歩みを進める。
「…終わったわよ」
委員長に目立った外傷や争った痕跡もない。
ただひと言キラーにそう告げた。
キラーは2番の部屋に入り中を確認する。
中には部屋の中央で横たわる男が一人。
近付くと男の顔は激しくもがき苦しんだ形跡があり、その表情はとても青ざめていた。
まるで首から上の血液が全て無くなっているかの様な状態だった。
(…毒殺だね、うん)
死刑囚の首に指を当てるとやはり男に脈は無かった。
キラーは立ち上がり部屋を出た。委員長の元に戻り合格を告げるも、委員長は無言で受け止めるだけだった。
ジェントルが横に寄り添い声を掛ける。
「お、おい。大丈夫か?」
「えぇ、ありがとう」
冷静な態度だった。
大きな深呼吸を繰り返しながら自分を制御出来ている様子が伺える。
「今こんなこと聞くべきじゃないのは分かってるが、部屋に入る前の事…」
「ごめんなさい、後できちんと話すわ。けど今は止めてもらえる?」
「あ、あぁ、だよな。すまない」
委員長の視線の先には何も無かったが、その目線は頑としてぶれることはなかった。
そんな様子を横で観察していたジュンだったが、再び4番のドアに視線を戻す。
残るはシスター1人。
「あと5分」
キラーが再び残り時間を告げる。
ジュン程でなくとも他のメンバーもシスターの行く末は気になっていた。
職者である彼女が本当に人を殺すのかどうか、結末を見守っている。
勿論シスター本人は誰かを殺すためにこの試験を受けている事は分かっているものの、修道女という肩書と彼女の大人しい人柄からにわかには信じ難かった。
「残り1分」
まだシスターは出て来ない。
無情にも時は過ぎ去っていく。
「終ー了!」
キラーから終了の合図が告げられる。
制限時間内に4番のドアが開くことはなかった。
キラーは4番のドアへと歩いて行く。
様子が気になる他の受講生とジュンもキラーの後をついて行く。
キラーがドアを開けると、そこには惨憺たる光景が広がっていた。




