最終試験開始「死刑囚を殺して下さい」
ジュンはシスターと共に地下に到着していた。
集合場所は初日にオリエンテーションが行われた教室。
2人が教室入り口に到着した時には既に他3人の受講生達は教室内の席に着いていた。
普段から会話の少ない空間ではあったが、今日という日はいつも以上に沈黙の質が高かった。
最終試験の内容を知らされていない受講生達はそれぞれの想いを巡らせていた。
そしてジュンもまた教室の扉を目の前にし自身の複雑な思いと向き合っていた。
後ろの扉からガラガラとドアを開け教室に入るジュンとシスター。
3人の受講生達は全員振り返りジュン達の方向を見たが、口を開く者はいなかった。
今日ばかりはJKもジュンに声を掛けない。
2人が着席しそのまま暫くの沈黙が流れた。
やがてカツカツとひとつの足音が廊下から聞こえてくる。
それぞれが微細な反応を示す中、予想通り教室前のドアから講師のキラーが入って来た。
教壇の前に立ったキラーは何食わぬ顔で口を開く。
「はいー、皆さんお待たせしましたー。今日はいよいよ最終試験ですね。頑張って下さい」
今の教室内の空気ににつかわしくないあっさりとした挨拶だった。
「それではみなさん、早速移動しましょう」
「!」
試験内容を知らされていない受講生達は言われるがままに席を立ち始める。
「それではついて来て下さい。ジュン君も来るんだよね?」
「はい、宜しくお願いします」
廊下を歩くキラーの後ろをゾロゾロとついていく受講生達と最後尾のジュン。
薄暗い中を歩き続け、いつも使っているエレベーターを通り過ぎるキラー。
更に奥へと歩いて行くと、そこには扉らしきものがあった。
とても厳重な扉で横にはセキュリティカードのかざし口と暗証番号の入力機の様な物が設置されている。
キラーはそのかざし口にカードをかざすと、”ピ”と音が鳴り暗証番号入力機のガラスケースが開いた。
キラーが数ケタの番号を入力すると、再び”ピ”と音が鳴り鈍い音を立てながら扉が開いた。
キラーの背後からそこを覗くと、そこには下りの階段が見える。
「え!?キ、キラーさん。この建物っては地下1階までじゃ…?」
ジュンがキラーに問い掛ける。
「勿論普段は使われない場所だよ。他の皆さんも地下2階の存在は極秘でお願いしますね」
キラーは先導して階段を降りて行く。
地下廊下よりさらに薄暗い階段、やがて先頭を行っていたキラーが階段を降り終えると部屋の明かりを点けた。
「!」
一同の視界に広がったのはバスケットコート程の広さのある何もない四角い空間。
ただしその壁には一定間隔をあけていくつものドアが並んでいた。
それぞれのドア上部には1から11の番号が記載してある。
「はい。それでは早速最終試験を開始します」
一斉にキラーに注目が集まる。
そしてキラーの口から常軌を逸した試験内容が告げられた。
「あちこちにドアが見えると思います。1から4の部屋にはそれぞれ1人ずつ死刑囚が入っています。皆さんはそれぞれの部屋に入って中の死刑囚を殺して来て下さい」
「!!!?」




