JKの狂気
射的訓練の終了後、講師のキラーから告げられたのは突然の試験予告だった。
薄々勘付いていたことではあるが、やはり驚きを隠せない面々。
「せんせー。試験って何するんですかー?」
「それは当日お伝えします。皆さんは今日と同じように動きやすい格好で来てもらえれば結構です」
「えー、まだ秘密なのー?」
「そーですよー」
「他に準備するものはないの?」
「しいて言うなら心の準備だけって感じですかね」
意味深なキラーの言葉に顔を見合わせる面々。
「それじゃあお疲れ様でした。解散ー」
射的場を出て行くキラー。
残った4人は少し考え込んでいる様子だった。
その中でも一番深刻な表情を浮かべていたのはジェントル。
いよいよその手で恋人を殺さなければいけない時期が目の前に迫っている、そんな事情を知っている委員長はそれを察してか、ジェントルの肩に手を置き無言で慰めている様だった。
「おー!いよいよかー。人殺しー」
JKの声からは何か暗いものを背負っている様子は感じ取れなかった。
気になった委員長が声を掛ける。
「随分と軽い雰囲気ね。まぁ貴女はいつものことだけど」
「えー?軽いってー?」
「試験が間近ってことは、いよいよ人を殺す日が近付いてるってことよ?あなたは確か、お母さんの敵討ちだったわね?」
「そーだよー」
「いくら敵とはいえ、人の命を奪うことに抵抗はないの?」
「えー、別にー。てか楽しみなんだけどー」
JKのひと言に場内の空気が止まった。
「た、楽しみって?敵を討てるのが?」
「んー、いやー。てかママ殺されたのあんまり記憶ないしー。今は討ちとかぶっちゃげどうでもいいんだよねー」
「え!?」
「なんかさー、人殺すのってやっぱいけないことじゃん?けど免許取ったらそれを出来るのって超ヤバくない?なんかカッコいいんだけど。テンション上がる~!」
「か、かっこいいって…」
「ワクワクしない?どんな感じなのかなーとか」
「し、しないわよ。貴女、自分が何言ってるのか分かってるの?」
「うん。どしてー?」
「…」
JKの狂気ともいえる無邪気さに言葉を失う一同。
「ねねねー。そいえばみんなは誰殺すのー?シスターさんと委員長さんはまだ聞いてないよねー?そろそろ教えてよー」
「…ごめんなさいね。言う気にはなれないわ」
「えー。じゃあシスターさんはー?」
「私も、ちょっと…」
「えー、けちぃ~。ジェントルさんは恋人殺すんでしょー?どしてー?喧嘩したのー?」
「止めなさい!語りたくない相手に無理に聞くのはよくないわよ」
ジェントルをかばう委員長。
つまらないといった表情を浮かべ黙り込むJK。
会話が無くなった空間、自然とそれぞれは場内を後にして行くのだった。




