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ライセンスワールド  作者: レイジー
テスト2
25/54

免許制度の課題

「なんで君がついてくるんだよ!!」

「まだお昼食べてへんもーん」


 ジュンは自身の外出予定を堂々と告げるも、とうとうシオリを振り払うことが出来ず否応なしに車に同乗させてしまっていた。


「ったく毎回毎回。言っとくけど少し遅くなるからね」


 ジュンはぶつくさ言いながらもそのまま警察署へと車を走らせた。

約30分程して到着すると車を降りたジュンをある警察官が出迎える。


「これはこれは、ジュンさん。ようこそおいで下さいました」


 ジュンを出迎えたのは警察の制服にいくつものバッジを胸に携えた上層部の人間と思しき60代程の男だった。


「そ、総監。そんな、やめて下さいよ」


 男の丁寧な出迎えに恐縮するジュン。

シオリはその横から口を挟んできた。


「なーんや?おっちゃん”ソウカン”ってことは偉いさんかいな?ジュンさんえらいもてなされとるやないの。センターでは受付の下っ端のクセに~」

「お、おい!コラ!」

「ジュンさん。こちらの方は?」

「あっ、あぁいや、何でもありません。失礼しました。車の中で大人しくさせておきますので。…けど総監、そんな敬語なんて使わないで下さいよ。恐縮しちゃってやり辛いです」

「ははは。一応私も媚を売っておこうとね。元気そうだな、ジュン君」

「ご無沙汰してます、総監」


 旧知の仲である様子の2人。

蚊帳の外といった様子のシオリはそれとなく様子を伺う。


「2人知り合いなん?」

「あぁ。まぁね」

「おっちゃん警察官なんねやろ?媚び売る言うてたけど、なーんや悪巧みかいな?映画とかでありそうな展開やで」

「ははは。そんなんではないよ。いや何、センターの正職員といえばこの免許国家においては正義と権力の象徴だからね。ちょっと贔屓にしてもらおうと思ってね」

「総監、そろそろ行きましょうか」

「あぁ、そうだね」

「ここで待ってろよ」

「私も行ったアカン?」

「駄目に決まってるだろ」

「ちぇ~」


 こうしてジュンと総監と呼ばれた男はシオリを残し警察署内へと入って行った。

目的の部屋に向かう途中ジュンは廊下で通りすがる警官達から敬礼を受けながら進んで行く。

総監の男はジュンに何気無い世間話を語り始めた。


「先程のご婦人は恋仲なのかい?」

「い、いえいえいえ!まさかそんな!違いますよ」

「ははは、そうだろうね。しかし随分気に入られてるみたいじゃないか。相変わらずご婦人には優しいんだな、ジュン君は」

「は、ははは。いい様に使われてるだけです。全く自分が情けないです」

「その優しさと正義感が災いして一時は大変な思いもしたね。まぁ結果的オーライではあったかな」

「…そうですね。本当ご迷惑お掛け致しました」

「構わないよ」


 やがて総監室に辿り着いた2人は部屋に入るとテーブルを挟んでソファに腰を下ろした。

ジュンはテーブルに用意されていた資料を手に取り真剣な眼差しで閲覧し始めた。


「…ここへきても、実際の囚人数は減ってないんですね」

「あぁ。犯罪の件数自体は減ったんだが、厳罰化に伴い違反者程度でも収監になるケースが多く、しかも長期化しがちでね。トータルでは増加傾向でどこの刑務所もパンパンな状態だよ」

「なるほど…」

「それに減っているのはいずれも軽犯罪ばかりだ。その程度の悪さで人生を失いたくないという心理は強く働いているんだろうが、重犯罪を犯す様な連中はいずれもふっきれた様な奴が多いからな。この免許国家に制裁なんて恐れてはないのさ」

「今後の課題ですね」


 1時間程度の密談を交わしたジュンは見送りを申し出た総監の男と共に部屋を出た。

駐車場へ向かうべく廊下を歩いていると、突然騒がしい声が聞こえてきた。


「離せぇぇ!!離せちくしょぉぉ!!」

「!」


 2人は声のする方向を振り向くと、そこでは1人のガラの悪い男が複数の警官に取り押さえられている現場があった。


「離せちくしょぉ!ふざけんなぁ!冗談じゃねぇよ!!駐車違反しただけでぶち込まれるなんて、そんな馬鹿な話あるかよぉおぉ!!!」


 ジュンはその姿を見て何も言うことなく再び歩き出したのだった。


 警察署訪問を終えたジュンは再び運転席に乗り車を走らせていた。

後部座席では長く待たされたシオリがブーブーと文句を垂れている。


「お腹空いたぁ~!おっそいわジュンさん。何しててん!」

「大事な話があったんだよ。それに勝手について来たの君の方だろうが」

「もうステーキやのうてもええから何か食べさせてぇな!」

「ったくもう…」


 ジュンは仕方無く近くにあった天ぷら屋の駐車場へと車を止めるた。

遅めの昼食を注文した2人は早速出来てたの天ぷらに舌鼓を打つ。


「ん~~~~!うっま!やっぱり頑張った後のご飯は最高やでぇ~!」

「よく言うよ。どうせタダ飯だからだろうが。…うん、でも本当美味しいなこれ」


 やがて食事も終盤に差し掛かると不意にシオリが疑問に思った事を口にし出した。


「そういやさ、ジュンさんみたいなセンターで働いとる人も免許の更新とかあるん?」

「ん?そりゃ勿論あるよ。他の人と同じで年いちの更新審査がある」

「でも試験の内容とか知ってんねやろ?それなのに更新とかするん?」

「いや、俺達職員は全員”聖職免許”の更新になるんだ」

「え!?”セイショクメンキョ”って、あのいっちゃんスゴイやつやろ?」

「凄いっていうか、まぁ」

「なんかいろーんなこと見られんねやろ?んで認められた人だけにいきなり送られるっていう免許やんなぁ?」

「日頃の行いとか社会貢献度なんかが評価の対象らしいね。全貌までは明らかにされてないけど。起業したり物件のオーナーになるにはこれが必要だよ」

「それ持っとったらこのご時勢天下無敵やん。色んなメリットあるって聞いたで!すごいやないの!」

「んー。まぁセンターで働く人間にとってはあんまり意味無いメリットが多いけどね」

「でもそれ誰が審査するんよ?」

「十戒の皆さんだよ」

「ちょい待ち!アレって確か大人免許と家族免許両方持ってることが条件やんな?え?てことは何?ジュンさん家族持ち?童貞ちゃうんかいな?」

「い、いちいち童貞童貞ぶり返すなっての!!」


 ジュンはコーヒーをひと口飲み呼吸を落ち着けると再び説明を始める。


「俺は独身だよ。確かにその2つを持ってる事が前提条件とされてるけど、例外もあるんだ」

「例外て何なん?」

「教えない。てか俺もよく知らない」

「何やねん、それ」

「当然だろ。聖人免許の発行条件はセンターでも高度機密なんだ。十戒の判断基準なんて知る訳ないだろ」

「他に独身で職員の人っておるん?」

「んー、俺が知る限りではジムラさん…あ、そういえばキラーさんも独身だって言ってたな」

「キラーさん?誰それ?」

「殺人免許の講師の人だよ」

「へー。何かやばそうな人やなぁ。そういえばどうなってんの?あのシスターさんとか」

「…まぁ、日々淡々と講習が行われてるって感じかな」


 やがてジュンは自身の腕時計が15時を指している事に気付く。


「おっと。そろそろ戻らないと。行くぞ」

「デザートは?」

「調子乗るな」


 こうして2人は天ぷら屋を後にするのだった。

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