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ライセンスワールド  作者: レイジー
テスト2
10/54

【おめでとうございます。殺人免許書類審査通過のお知らせ】

 それから2週間後。いつも通りの日々を過ごしていたジュンの前に意外な人物が現れた。


「次の方…あ!」

「どうも」


 次の来訪者を呼び込んだジュンの目の前に現れたのは2週間前にセンターにおいて殺人免許の申請に訪れた若いシスターの姿だった。


「ど、どうも。こんにちは。どうぞお座り下さい」

「失礼します」


 ゆっくりと椅子に腰を下ろすシスター。

ジュンはいささか緊張した面持ちでシスターに問い掛けた。


「えと、本日はいかがなさいましたか?」

「審査通過のお知らせを頂きましたので、これからのことを教えていただこうかと」

「え!?」


 シスターはポケットから自身の携帯端末を取り出しセンターから到着したメールの内容をジュンに見せた。

するとそこには間違いなくセンターから届いたメール、そして文面には”審査通過のお知らせ”の文字があった。


(つ、通過!?殺人免許の?ほ、本当に…?)


 一瞬頭が真っ白になったジュンだったが、すぐに冷静さを取り戻し必要な対応を取り始める。


「わ、分かりました。それではお手数ですが場所を移動していただききます。こちらへどうぞ」


 ジュンはシスターを先導しながらセンターフロア奥にある個室へと案内した。


「ここで少々お待ち下さい」


 ジュンは部屋を出ると駆け足で受付フロアへと戻って行った。

ジュンが向かったのは先程まで自分が座っていた窓口の席ではなく、そのずっと奥にある上席のデスクだった。

そこに座る職員の男に声を掛けるジュン。


「ジ、ジムラさん。今ちょっと宜しいでしょうか?」

「ん?どうしたんだい?」


 ジュンが声を掛けたのはセンター創設メンバーの1人でもあると言われるジムラという男だった。


「実は、2週間程前に殺人免許の申請にいらしたシスターさんなんですが、本日お越しになられてて」

「あぁ、いらしたかい?うん、聞いてるよ。申請が通ったみたいだね」

「え、えぇ。今、1-8でお待ちいただいてます」

「分かった。それじゃ行こうか」


 ジムラという男は席から立ち上がりジュンと共にシスターが待つ1-8へと向かって行った。

部屋の前に到着しドアを開けると、中ではシスターが膝に手を置き黙って待っていた。

声を掛けるジムラ。


「お待たせ致しました。当センターの総合受付責任者のジムラという者です」


 ジムラはシスターの向かいの席に腰を下ろし持っていたファイルを机に置いた。

ジュンはその後ろに立ち様子を眺めている。


「おめでとうございます、と言うべきではないかもしれませんが、当センターの厳正な審査の元、今回貴女様の殺人免許申請においては書類審査を通過と判断させていただきました。これから当センターが制定するカリキュラムを受講いただき最終試験に合格していただければはれて免許発行となります」

「はい」

「本日の15時より地下1階にてオリエンテーションが開催されます。詳しい事はその際に講師の者に説明させますので遅れない様にご移動下さい。地下に行かれる際はこのセキュリティカードが必須となります。無くされない様厳重な管理を宜しくお願い致します」

「はい」


 ジムラは長方形のセキュリティバッジとその他の資料をシスターに差し出す。


「最後になりますが、今回の殺人免許の事柄に関しては原則全てにおいて極秘事項となります。秘密厳守をお約束いただきこちらの誓約書にサインをお願い致します」

「はい」


 シスターはジムラから渡された書類に抵抗無くサインを記しジムラに返す。

内容を確認したジムラはその誓約書を自身のフォルダに納めた。


「ありがとうございます。説明は以上ですが、何かご不明点等はございませんか?」

「…特には」

「それでは失礼します」


 淡々とことを終えたジムラはそのまま部屋を後にした。

ジムラの後を付いて行く様にジュンも部屋を後にする。

受付フロアへの帰り際ジムラがジュンへ意外な事を伝えた。


「ジュン君。実は今回の殺人免許講習、君も同席してもらう事になったんだ」

「えぇ!?ど、同席?自分がですか?」

「あぁ。殺人免許の講習が開かれる事は滅多に無いからその内容や実情を実地で研修出来るチャンスは少ない。けどいざという時にちゃんと内情を熟知した上で対応出来る職員は増やしておかないといけないからね。そこで君に白羽の矢が当たったんだ。上の決定だよ」

「あっ、そ、そうなんですか?あ、ありがとうございます。こ、光栄です!」

「基本は今まで通り受付業務に従事してもらうけど、殺人免許関連の講習が行われる時だけ席を外してもらって構わない。ジュン君もセキュリティカードが無いと地下には行けないからデイリーカードの発行を手続きしてもらうね。けど発行には時間が掛かるから、それまではシスターさんについて行くといいよ」

「わ、分かりました」

「それじゃ、宜しくね」


 会話が終わったタイミングで2人は受付フロアに到着しており、それぞれの自席へと向かい別れた。

そして時間は経過し、時計の針は殺人免許オリエンテーションが行われる15時を指すのだった。

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