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1.待っていました、婚約破棄が叶う日を 1

 「婚約を破棄、ということでよろしいでしょうか?」


 屋敷からの使いが来て、ソフィアに婚約破棄に関する書状が渡された。ソフィアは顔色を変えることなく、その書簡を手に取ると、さらさらと署名をした。もうソフィアの親とも、婚約破棄をすることは決めてあった。だからためらいなどない。


 「男爵家のソフィアさま。おつらい状況にあることは、存じております。ですが、気を落とされずに」


 ソフィアが署名を書き終えると、使者は署名を確認して書簡をしまった。これで名実ともに、婚約は解消された。使者は、申し訳程度にソフィアに慰めの言葉をかける。王都では、ソフィアたちの噂があることないこと囁かれているのは分っているようだ。


 味方でも敵でもなさそうな使者ではありそうだが、余計なことを言って噂の種をまくのもいいことではない。


「お優しいお言葉に感謝いたします。ですが、幸いなことに家族が支えてくれています。どうか、奥様に旦那様。それに……オスカーさまにもお元気でとお伝えください」


 長年婚約関係を結んでいた婚約者・オスカー。オスカーから直接婚約について言われたことがない。だから、ソフィアは今回の婚約破棄についても特に何も思うこともなかった。


 オスカーの母親は美人だ。とても綺麗な金髪をお持ちで、気品があり社交界の栄華とも言われている美貌。その容姿を受継いだオスカー。見た目はかっこいいのだが、なんせ地味。凡人のオーラしか感じない。

 だが、それなりに優秀で、それなりに優しい。可も不可もない。だから彼のことはよくわからない。小さい頃から決まっていた婚約。


だが両家の事情もあり、今日でこの取り決めもなくなる。


「では、わたくしは失礼いたします」


 使者を玄関まで送るソフィア。大きな邸宅である屋敷は、人がいなかった。かつて大勢のメイドがいた。だが、使用人ももういない。もうすぐこの屋敷は誰かの手に渡るのだから。 

 使者が見えなくなるまで見送ったソフィア。無表情でいたソフィアの顔は緩んでいた。


「終わった!やったー!婚約とか面倒なものも解消できたし!これから忙しくなるわ!引っ越しの準備で忙しいし。夕方にはお父様が引っ越し用の荷台を借りてくるって言っていたし……」


 ソフィアの表情は明るいものだった。決まり切った貴族の規則、伝統などすべてから解き放たれた。もうすぐソフィアは男爵の位さえなくなるのだ。

そう、男爵家の地位を売ってしまうのだから。お金と引換えに、ソフィアたち家族は平民になるのだ。



 

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