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1 生意気な天使

朝食を終えた私は、自室で本を読んでいた。

初めは私の知っている文字とは全く違って苦労したけど、喋る言葉は一緒だったので1文字1文字丁寧に覚えていったら案外すぐに理解出来るようになった。

この世界についてもっと知っておかないと、もし、死ぬことを間逃れたとしても流刑とか国外追放とかになったら生きていけない、そのためにも知識を沢山蓄えなければ!

そして、この世界で1番知っておかないといけないこと、それが魔法だ。

前世ではアニメや漫画の世界だけの話だったけどこっちではそれがごく当たり前にある。

全員が全員持っている訳では無いけど、貴族の大半は魔法を使える。魔法を使えるだけで貴族になったものをいるとか。珍しいものではないけれど貴重なものらしい。

ゲームの中のシルビアは相当の大きさの魔法を持っていたらしいけど、全然使えこなせていなかった、私は使えるように努力しなければ!魔法さえ使えれば一人で生きていけるはず!!!それに、私は悪役令嬢だが、とても見た目がいい。もしかしたらヒロインより可愛いんじゃないかと言うくらいだ。

雪のように真っ白の肌、絹のように透き通って見える純黒の髪、ルビーのように輝く暗めの赤い瞳。大人しくしていれば儚い、それはそれは可愛らしい少女だ、この見た目で結構どうにかなるのでは!!!あはは、なんてね………そんな上手くいかないかなぁ

私がそんなことを考えながら本を読んでいる時、扉をノックする音が聞こえた。

「お嬢様、旦那様がお呼びですので、今よろしいでしょうか。」

外に仕えていた私付きの侍女、メアリだった。

「うん、わかった」

なんの用だろ………?


ヴェスターニャ領主であり、この国の宰相でもあるヴェスターニャ侯爵の私の父は、なぜだか仕事部屋でとても深刻そうな顔をしていた。

「お父様、どうなされたのでしょうか」

「あぁ、シルビア、私は頑張ったんだがな、やはり王族からの申し出を断るわけには…………」

ブツブツと言っているお父様

ん???王族????それが私となんの関係が……………ま、まさか…………

シルビアとこの国の第1王子である、ロベルト王子は婚約者だったはず…………それが結ばれたのは……………6歳…………!?

私の嫌な予感は的中し、王太子殿下の婚約者候補に選ばれたと、父に告げられた。

国の中で王族の次に権力を持っているこのヴェスターニャ家の長女である私が婚約者候補に選ばれるのは決まりきったこと。

あぁ、早すぎやしませんかい??関わりたくないよ、攻略対象………

とりあえず彼についてもう一度整理しよう。


ロベルト・ディレスト第1王子

金髪碧目で、ヒロイン、シルビアの1個下のいかにも王子様!!という見た目。

いつもは可愛らしいけど、たまにかっこいい表情を見せて上から目線でくるのがとても好評。

でも腹の中ではドロドロの執着心を持っていて、自分のものをほかに取られたりするなんて許せないタイプ。

6歳の時にシルビアと婚約をするが王子はシルビアに全く興味がなく、婚約自体も何かあればすぐに破棄してしまおうと考えていたた。だが、シルビアは王子のことが大好き。興味を持たれていないことにも全く気づいておらず、どちらかというと好かれていると勘違い。

そんな王子とのあいだを邪魔してきたヒロインにブチ切れ。

そしてお決まりの犯罪まがいの嫌がらせをして、それを見たロベルトはシルビアを牢獄へ、そしてすぐに処刑した。


ん?よく考えてみれば私が王子を好きにならず、婚約を結んだとしても、すぐ破棄してもらえばいいのでは?

私の身分的に彼と関わらないのは無理があるとしても、興味を持たれないならばそのまま放置でいいじゃないか!!!!

うん!とりあえず、怒らせるようなことはしないようにしよう。


お父様に婚約者候補の話をされてから1週間後、ロベルト王子に会いにいく日になった。

朝早くからメアリと一緒に髪型はどうするやらドレスはどうするやらとバタバタしている。

「お嬢様の綺麗な黒髪はそのまま下ろされたままの方が可愛らしいですわね!」

「そう??メアリにお任せするね!」

「では、ドレスはどれに致しましょうか……………あ!これなんていかがでしょうか」

そういったメアリが見せてきたのは、上が白でスカートの部分が薄いピンクのプリーツ、ノースリーブの袖はフリルになっている。ウエストは上とおなじ生地の白い太めのリボンが後ろについていた。

「かわいい!!!それにする!!!」

うん、かわいい!おばさんが着ると考えなければね…………

ドレスを着て、鏡の前に立つとお人形さんのように可愛らしい少女がいた。見た目だけは本当にいい。そんなことを笑顔の裏で考えていた。

支度を終えたあと私はお父様とメアリと護衛2人の計5人で王城へと向かった。



馬車に揺られること40分くらい。

ディレスト王国の中心部、大きくそびえ立つ白と青を基調とした城が見えた。

あれは…………まさしくシ○デレラ城。お城はゲームのパッケージの背景でしか見たことないけど、ほぼあの夢の国のお城だよ。

そんなことを考えているとはつゆ知らず、お父様やメアリは窓の外を眺める私を微笑ましく見つめていた。

お城につくや否や、すぐに応接室に迎え入れられた。

そこには口ひげを生やした茶髪のダンディーな王様と金髪に紫の瞳が光り輝く上品な女王様がいた。

女王様の後ろに小さくいるのが…………ロベルト王子だ。

まだ小さいのに顔立ちはハッキリしていて、ゲームの中のロベルトの面影を濃く見せた。小さく口角を上げるその微笑みは、

「まるで天使…………」

私は口に出しているその言葉に気づいていなかった。

心の底から溢れ出たその言葉は本心そのままだったからだ。

それを聞いた私の父や王様、女王様はクスクスと笑っている。

ロベルトは一瞬ムスッとしたように見えたけど、天使の微笑みにすぐに戻っていた。

「ほら、シルビアご挨拶を」

「………ハッ!…………これは失礼しました。私はシルビア・ヴェスターニャと申します、お初にお目にかかれて光栄で御座います。」

家で何百回とやったスカートの先を両手で軽く持つ、優雅な淑女の礼は我ながらうまくできた。

私が挨拶をすると、ロベルトは少し前に出てきて、丁寧に頭を下げた。

「ヴェスターニャ侯爵、シルビア嬢今日は来ていただきありがとうございます。僕もお逢い出来て光栄に思います。」

挨拶を終えると王様はニコニコとしながら、「私たちは話があるから二人で遊んでいなさい」と言って、別の部屋に二人っきりにされた。

父は少し嫌そうな顔をしていた。私も嫌だよお父様!死亡フラグと同じ部屋に二人っきりにしないでーーー!

なんて言えるわけもなく、心の奥では叫びながら別の部屋へと向かった。

部屋に入った瞬間、ロベルトは全く喋らなくなった。

喋らないどころか真顔になり、こちらを見向きもしなくなってしまった。

「ロベルト様………??」

私はつい、声をかけてしまった。

突然雰囲気が変わってしまったその5歳児に。

さっきまでの天使のような微笑みはそこにはなく、不貞腐れたような可愛くない顔をしているロベルトがいた。

こちらをちらっと見てまたそっぽを向いて返答はなかった。

「も、申し訳ありません、いきなりお名前でお呼びするなんて………」

「本当にそうだよ!まぁ俺はそんなことで怒ったりしないけどね!それで?用でもあるの?」

うっ、可愛くない……………なんて偉そうな態度………さっき王様や女王様がいた時はあんなに礼儀正しくて可愛らしかったのに。

話しかけたから怒ってるの?は?何様のつもり………

「いえ、用はございませんでした。お呼びして申し訳ありません、私はこれで失礼します。」

ムカついた私は失礼と分かりながらも部屋を出ようとした。

「………え」

その言葉を聞いたロベルトはとても不思議そうな顔をした。

「………変な人………顔赤くならないの?俺と話したくないの?」

本当にわからないという顔をしていた。

……………なるほど、わかったぞ、この態度のわけ。今までの令嬢は顔を赤らめて王子にべったりだった、だから私の素っ気ない態度が変だと。なんて思い上がりの酷いおガキ様。いや、でもしょうがないのかな、態度はともかく見た目は本当に天使のように可愛い。これをほっておく方がおかしいのかな。

「私は別にお話することはありませんし…………」

私がそう言うと、なぜだかロベルトは今までの作った微笑みではなく、いたずらっ子のような5歳児らしい笑顔をこちらに向けた。

「あはははは!すっげー変な子!俺にそんな態度とったの君が初めて!!!」

私は呆気に取られてしまった、可愛いらしい天使が、小さな悪魔のような笑顔をするものだから。

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