Episode. 6 不発 と 音楽 そして 繋がり
―――なんで、みんな知らないんだ?
僕は体育館をでて食堂へと続く道でさっき遭遇した不思議についてつぶやいた
「少なくとも俺は、クラシックとか興味ねぇからなぁ」
お昼のお供その1の村上がその風貌とは似合わぬ小さながま口の財布を片手に言う
「潤はそんな事無いよな?」
僕はお昼のお供その2である潤に問いかける
「俺は少しは知ってるけどとても知っているかと言われたら知らないと答える」
「こうなったらお昼のお供その3の時田.....は知っているわけが無いだろうから聞くほうが無駄だな」
「酷いな!!!」
お供その3は何か言いたげだったが、僕はそんな事言葉を聴く気もさらさら無く、時田が話すのを遮るように、潤に向かって話す
「そういえば潤、今日の放課後部活かい?」
「今日は部活が休みだけど、委員会が少しある」
僕は、今日のお昼前に起きた、奇跡と呼びたくなるような再会についてはなるべく触れずに潤を音楽庫を呼び出そうとする
今ここで、あの事を話すと一緒にいる時田が絶対介入してくる
それを避けるために僕は精一杯の文字通り、精一杯に言葉を考える
「じゃあ、それが終わったら音楽庫に来てくれないか?」
結局ストレートに言ってしまった
「それは、いいが理由は.....聞かないほうが言いか」
さすが潤だ、僕の失態をカバーするかのごとく深くは突っ込んでこない
さて、時田は......
「今日は何食べるかなー....」
時田は村上と一緒に食堂の前のメニュー表に夢中なようでこちらの話を聞いていないようだ
「奏はなんにするんだ?」
村上が聞いてきた
「そいつは、いつもの妹の愛妹弁当だから食堂では食べないよ」
時田が村上に対して言う
「あっ、お前.....そこまでだったのか.....」
「愛妹は否定しないが、今日は自分で弁当を作ったから愛妹弁当ではないよ」
「そっちかよ」
潤と村上と時田が口をそろえて言った
そんなこんなで、今日もいつものとおり平凡な食事をすごして僕たちは教室へ帰った
5時限目は普通に授業で科目は数学だった
前で先生が必死に√2が無理数である事を証明している
正直聞いている生徒はほとんどおらず、僕の視界に入るほぼ全員は寝るか内職をしていた
そんななか、件の転校生女史はなにか、ペンを持ったり置いたりどこか落ち着きが無かった
トイレにでも行きたいのだろうか?
ところで、時折出てくる時田と村上について紹介しておこうと思う
村上、本名は村上久吾去年までは3組であったが今年昇格して2組になった
なんでも、今年から2組に転校生が来ると聞いて無理やり点数を伸ばして2組に食い込んできたとかどうとか
組こそは違ったが、去年何かとこいつと一緒にトラブルに巻き込まれたのでそれなりに顔見知りではある
報道部の2年だ
時田、は紹介するのが面倒ではあるが、一応紹介しておくと
時田智
こいつとは、去年からおなじみである
成績が底辺を行っており今年は降格予定第1号であったが何とか食い込んできた
ちなみに、僕ら4人の成績を表すと
潤>>奏>>村上>>>>>越えられない壁>>>時田
と行ったくらいである
なんと、去年3組だった村上にまで越されている
と言うか、潤に関してはスポーツも出来て頭もよく顔もいいという三点縛りなのでもはや妬む気持ちすら浮かんでこない
まったくうらやまけしからんやつだ
まぁ、そんな時田だが一応写真部で一応腕前がプロ並みらしい
僕も一度撮ってもらった事があるがあまりにもうまく取れすぎていたので音楽庫のどこかの楽譜に挟まっている
ちなみに、おそらく使用頻度が最も低い楽譜にはさんだ事は間違いは無いが、どこに挟んだかは忘れた
そんな事を考えている間に5時限目は終わっていた
「6間目はLHRだっけ?」
僕はさっきまで寝ていた村上に声をかける
「んぁ?あぁあ........っあっあっあ!!!!」
村上は急に僕の頭の辺りを見ながら急に過呼吸になる
「はて、お前は寝起きに話しかけると過呼吸になるなんて持病あったっけ?」
僕はとりあえず、そこで死にそうなくらい目を見開いている村上に声をかけながら近づこうとする
すると村上はこちらに指を指しはじめた
「橘くん」
後ろから普段聞いた事が無いような落ち着いた声が聞こえてきた
僕はびっくりして音の方向を向く
そこには、話題の転校生である島田歌穂が立っていた
「や、やぁ、島田さん何か用件かな?」
僕は全く持って予想だにしていなかった来客に驚きつい、変な言い方をしてしまった
「あっ、おどろかせるつもりは無かったのよ」
島田は申し訳なさそうに謝意を向ける
「いや、ちょっと村上のリアクションが悪かったんだよ」
こういう時は村上に押し付けるに限る
「村上くんもごめんなさいね、ところで橘くんさっきの歓迎会なんだけれども」
やはり、村上はさらりとおしはらわれおそらく本題へ突入したようだ
「あ、あぁ、受けなかったのは重々承知さ.....受けると思ったんだけどな....」
「そんなことなかったわ!とってもすばらしい愛の夢だったわ!!」
「だよね....やっぱり、もっとポピュラーな....え??」
予想の斜めをつくような島田の反応に僕はちょっと驚かざるを得なかった
「とっても色っぽくてつやがある愛が伝わってきた気がして、私これを伝えたくてずっとうずうずしていたの!」
「そ、そうかい、にしてもよく知っていたね」
正直僕は島田のあまりに高い圧力に押しつぶされそうになり、一歩後ろへたじろいだ
「私のおじいちゃんがクラシックが大好きでねよく、レコードを聞かせてくれたのよ」
「なるほど、それで」
そんな、話をしていたらチャイムが鳴ってあさちゃん先生が入ってきた
「もしよかったら音楽庫においでよ、それなりにLPとかCDがあるから」
「ありがとう!じゃあ、後でお邪魔するね!」
そんなこんなでみんなが席に着いた
「奏....俺、音楽部はいる」
「動機が不純すぎる」
さっきまで死にそうになっていた村上が現世にいつの間にか帰ってきていた
さまざまな思いが交錯する放課後まで後3時間
どうもお久しぶりです
最近、リアルでコンクール出たりしてどたばたしていました
これからもこんな事が続くかもしれませんが必ず投稿はしますので気長に見ていただきたいです