#1
しかし、嵐のような人だった。朝っぱらからどっと疲れを感じる。
はあ、と溜め息を吐いて自席に座ると、隣の席の男子が声をかけてきた。無論、友達などではない。ただのクラスメイトだ。
「よっ、朝から幸せそうだな!」
何をもって「幸せそう」と言っているのだろうか。こちとら不愉快極まりない状況下にいるというのに。僕が無視していると、彼は僕の背中をバシッとたたいた。痛い。
「なんだよ!告られたんだろ、あの子に」
彼が指さした先にいるのは、独りで読書をしている彼女だった。
「そうだけど」
「変なの、面白いなあ」
彼はケラケラと笑うけど、何が面白いのか、僕にはわからない。
「あの子、ちょっと変わってるよな」
それは共感できる。他の女子とは明らかに違うのは確かだ。
「それが、どうかしたのか」
僕がそう問うと、彼はううん、と少し考える素振りをして答えた。
「なんか…死にたがり、らしいぜ」
死にたがり?どういう意味だ。今日はなんだか、不思議な事ばかり耳に入るな。不吉だ。
僕が眉をひそめると、彼はわははっと豪快に笑った。
「噂だけどな!お幸せに!」
そして再び僕の背中を、今度は二度も叩いて席に着いた。
なんだか、嫌な予感しかしない。
このクラスで、僕はやっていけるのだろうか。
僕はこの日、溜め息を四度吐くことになった。